ピンク・フロイド(Pink Floyd)の1975年の北米ツアーは,1975年4月8日カナダはブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのパシフィック・ナショナル・イクシビション・コロシアム公演から,4月27日米国はカリフォルニア州ロサンゼルスのサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナ公演までの 1st レグ.
1ヶ月強のオフを挟んで,1975年6月7日米国はジョージア州アトランタのアトランタスタジアム公演から,6月28日カナダはオンタリオ州ハミルトンのイボール・ワイン・スタジアム公演までの 2nd レグ.と 2回に分けて行われています.
本CDは,2nd レグ中盤に当たる 6月17日ニューヨーク州ロング・アイランドはユニオンデールのナッソウ・ヴェテランズ・メモリアル・コロシアム公演をオーディエンスで収録し Sigmaレーベルからリリースされた 『 Definitive Uniondale 1975 2nd Night (Sigma 294) 』 です.
既発では,Sigmaレーベルだけでも,2009年リリースの 『 Nassau 1975 Day 2 (Sigma 43) 』,2010年リリースの 『 A Generation's Legacy (Sigma 63) 』,2017年に 『 Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175) 』 とアップグレードを繰り返して来ました.
2017年にリリースされた 『 Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175) 』 は,Jerry Moore氏のマスター・カセット音源を,Rob Berger氏がトランスファーし,Flying M氏が,細かい箇所を含めてトリートメントを施し,2016年末にネット上に公開した音源が元になっていると思われるのですが,今回は元となっているマスター・カセット音源のデジタル版を元に,最近,何度となく登場しておりリマスタリングに定評のある Graf Zeppelinレーベルが行っているとの事.
元々,高音質のオーディエンス録音なだけに,ヘッドホンで聴かないと差分は余り判らないかも知れませんが,明らかにアップグレード盤となっています.
ただ,既発(一つ前)を所有していれば,コアなファンで無い限り,あえて購入する必要は無いかも知れません.
メーカー情報では
『『DEFINITIVE BOSTON 1975』と並び、「WISH YOU WERE HERE Tourの最高傑作」との賞賛を集める超名録音がブラッシュアップ。「GRAF ZEPPELIN」による執念マスタリングで磨き込まれた究極盤が永久保存プレス3CDで登場です。
その最高傑作録音に吹き込まれているのは「1975年6月17日ユニオンデール公演」。その超・極上オーディエンス録音です。このショウは古くから録音が知られ、長い録音史の間に何度もアップグレードを繰り返してきた定番中の大定番。恐らく、本稿に目を留められた方なら何かしらの既発を1つはお持ちなのではないでしょうか。本作も同じ大定番録音でありつつ、その頂を更新する1本なのです。
【大元カセット・トランスファーから磨き直した最高峰更新盤】
今回のアップグレードで要となるのは「大元カセットからの磨き直し」。
ここで「あれ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。現在までのベスト・バージョンは2017年にリリースされた『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER(Sigma 175)』でして、そのタイトル通り、大元カセットは既にお馴染みになっている。ここで「じゃあ、前回とちょっと違うだけ?」と思われるかも知れませんが、そうではない。むしろ、これまでのリマスターとは、大幅にサウンドが異なり、パッと聴いて一発で「全然違う!」と驚く仕上がりになっているのです。
そのサウンドをご説明するには、前回盤『Sigma 175』の知識も必要。ここで時計の針を2017年に戻してみましょう。それまでもアップグレードを繰り返してきた“ユニオンデール2日目”ですが、革命的に向上したのが2017年。大元カセットの発掘でした。その次元の違うアップぶりは二軍から一軍に上がったような大ジャンプであり、しかも一気に優勝候補の最有力とさえなるようなものでした。
そして、その大アップに世界中のコレクターが歓喜。さらに究極を目指して独自のマスタリングを敢行するマニアも登場し、大元カセットだけでなく、何種類かのマスタリング・バージョンも公開されました。そして、その中でコレクター間でもっとも評価の高かったバージョンを使用したのが『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER』。もちろん、当店でも最終のチェック/仕上げも行っていましたが、ベースとなっていたのは海外マニアによって調整され、当時「これぞベスト!」の評判を集めたバージョンでした。
それに対し、本作の土台となっているのは、大元の「カセット版マスター」。原点に立ち返り、「GRAF ZEPPELIN」がイチから磨き直したものなのです。その違いは、再生した直後から明らか。この録音は開演前のサウンドチェックから録音が始まっていますが、そこからして全然違う。本作では綺麗で細部まで鮮明な喝采がワッと沸き上がるのですが、前回盤『Sigma 175』を聴き直してみると遠くの風音のような塊になっており、それがシュワシュワとした歪みを伴っている。これは恐らく、前回版が意図的に喝采を削っていたのでしょう。パチパチの打音が1つずつ削除され、口笛も抑え込まれている。「オーディエンス・ノイズ」を文字通り「ノイズ」と捉え、不要な物としてカンナをかけるように削りとられているのです。もちろん、それ自体は是非もあるのですが、問題なのは思いっきり加工感が出てしまっていること。妙に引っ込んでゴワゴワとうねる喝采は、まるでスポンジの天ぷらでも揚げているような異音になっているのです。
【微に入り細に穿ったマスタリングが生み出した“輝きの音”】
分かりやすいので喝采の話が長くなってしまいましたが、これは肝心の演奏音にも言える。前回盤『Sigma 175』は中音域を大胆に絞り込み、低域を強力にブーストした仕上がりになっていました。これが演奏に凄まじい迫力を生み出し、世界中のマニアから賞賛を集める要因ともなっていたのです。しかし、それが明度に繋がってはいなかった。大元起こしのアップグレードだから「めちゃくちゃ鮮明!」と驚きましたが、ヘッドフォンで耳を澄ませ得ると鳴りが「ゴー」といううねりを起こしており、微細部を曇らせていた。特にバスドラはギターとベースの巨大な渦に飲み込まれ、ポコポコと段ボールを叩くような頼りない音だけが残っていたのです。
それに比べ、本作は本来のナチュラル感が絶大。うねりを起こすことのない無音部はクリスタル・グラスのような透明感を湛え、ギターやベースが盛大に鳴っても他の音やスキマが綺麗に描かれている。これは「ギターやベースを犠牲にしている」という意味ではありません。例えばベースですが、前回盤『Sigma 175』は重低音の迫力を押し出して一聴目立っていましたが、実はアタック音の鋭さや輪郭は惚けていました。それに比べ、凡作はアタックのゴリゴリ感は鋭く立ち上がり、鳴りも決して長く回り込まず、演奏音の芯に金属光沢の輝きを与えるだけに留まっているのです。
この鮮やかさは「大元カセットのナチュラル感」を最大限に尊重した結果ではありますが、決して「元のまんま」という意味ではありません。むしろ逆。これまでの「GRAF ZEPPELIN」リマスター作品でも触れてきましたが、その精度は半端ではない。ランダムな変化にもキッチリ対応するピッチ調整や、耳でも波形でもチェックを重ねるプチノイズ処理、1/1000秒のズレも見逃さない位相調整などなど。実際、大元カセットのナチュラル・トランスファーでは位相が左チャンネルへ(わずかに)寄っており、高周波ノイズもありましたが、そうしたポイントはすべて改善されている。さらに言いますと、前回盤『Sigma 175』では「Raving And Drooling」や「Echoes」の前に(海外マニアがマスタリングした段階で生まれたのであろう)わずかなギャップがありました。もちろん、本作は大元カセット・ランスファーからオリジナルで作業していますので、それもありません。
この録音が最高傑作と呼ばれるのは、音の良さに加えて名演ぶりもあります。その素晴らしさは前回盤でもたっぷり感じられましたが、本作はさらに一層輝いて聞こえるのです。ド迫力最重視派の方なら前回盤『Sigma 175』を好まれるかも知れませんが、その迫力を演出するために犠牲になってきたディテールが本作にはある。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上した最高傑作の更新盤です。その輝きを永久に失わないプレスCDに封じ込めた3枚組。どうぞ、心ゆくまで「てっぺんの音」をご堪能ください。
★「1975年6月17日ユニオンデール公演」の超・極上オーディエンス録音。何度もアップグレードしてきた伝統の名録音で、本作は大元カセット・トランスファーから「GRAF ZEPPELIN」が磨き直した最高峰更新盤です。海外マニア制作のマスターを元にした前回盤『Sigma 175』は重低音がかなり豪快に押し出された迫力サウンドでしたが、本作は大元のナチュラルさと鮮明さを最大限に重視。その上でピッチやノイズ処理、1/1000秒のズレも許さない最精度の磨き込みで圧倒的な鮮やかさを実現しました。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上したツアー最高傑作の更新盤です。
------------------------------------------------------------
(リマスター・メモ)
REMASTERED BY GRAF ZEPPELIN
★今回はMasterからデジタル化されたデータを改めてリマスター
★前回盤『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER(Sigma
175)』はFlying -M- (Dec 2016)とされるものが元になっていた。
★今回盤と前回盤との違いですが、EQ処理が全く異なります。
前回盤は低域の非常に出た迫力のあるサウンドである反面、異様な加工感がつきまとっていた。
今回盤は低域の補強を中心にリマスターを施しつつも、全体のバランスも重視。
元々あった現場の空気感を尊重したマスタリング。
その他
★位相修正(若干左寄り→センターに寄ってます)
★高周波ノイズ除去 (左chのみ 18khz、14khz の2本
但し元々音には影響ないですが、念のため) 』
Definitive Uniondale 1975 2nd Night (Sigma 294)
Live At Nassau Coliseum,Uniondale,NY,USA 17th June 1975
[UPGRADE]
Disc 1
01. Introduction
02. Raving And Drooling
03. You Gotta Be Crazy
04. Shine On You Crazy Diamond (Part 1-5)
05. Have A Cigar
06. Shine On You Crazy Diamond (Part 6-9)
TOTAL TIME (59:01)
Disc 2
01. Speak To Me
02. Breathe
03. On The Run
04. Time
05. Breathe (reprise)
06. The Great Gig In The Sky
07. Money
08. Us And Them
09. Any Colour You Like
10. Brain Damage
11. Eclipse
TOTAL TIME (58:19)
Disc 3
01. Audience
02. Echoes
TOTAL TIME (29:37)
You Gotta Be Crazy
Shine On You Crazy Diamond (Part 6-9)
Any Colour You Like
[参考]
1975 North American Tour 1st Leg
April
08 Pacific National Exhibition Coliseum,Vancouver,B.C.,CANADA
10 Seattle Center Coliseum,Seattle,WA,USA
12 The Cow Palace,Daly City,San Francisco,CA,USA
13 The Cow Palace,Daly City,San Francisco,CA,USA
15 University Activity Center,Arizona State University,Tempe,AZ,USA
⇒ [Rescheduled To 20 April]
17 Denver Coliseum,Denver,CO,USA
19 Tucson Community Center Arena,Tuscon,AZ,USA
20 University Activity Center,Arizona State University,Tempe,AZ,USA
21 Sports Arena,San Diego,CA,USA
23 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
24 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
25 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
26 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
27 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
1975 North American Tour 2nd Leg
June
07 Atlanta Stadium,Atlanta,GA,USA
09 Capital Centre,Landover,MD,USA
10 Capital Centre,Landover,MD,USA
12 Spectrum Theater,Philadelphia,PA,USA
13 Spectrum Theater,Philadelphia,PA,USA
15 Roosevelt Stadium,Jersey City,NJ,USA
16 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
17 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
18 Boston Gardens,Boston,MA,USA
20 Three Rivers Stadium,Pittsburgh,PA,USA
22 County Stadium,Milwaukee,WI,USA
23 Olympia Stadium,Detroit,MI,USA
24 Olympia Stadium,Detroit,MI,USA
26 Autostade,Montréal,QC,CANADA
28 Ivor Wynne Stadium,Hamilton,ON,CANADA
[関連記事]
「Ultimate Millard (Sigma 286)」
「Tempe 1975 (Gift 2CDR)」
「Landover 1975 : 8mm Footage : Resttored Edition (Gift DVDR)」
「Definitive Boston 1975 : Unprocessed Masters (Sigma 276)」
「San Diego 1975 : 1st Gen (Ltd Bonus 2CDR)」
※) 『 California Soundboard : Revised Edition (Sigma 277) 』付属のボーナス・アイテム
「California Soundboard : Revised Edition (Sigma 277)」
「Echoes From The Past : Original Millard Master Recording (SPE-42675)」
「Definitive Seattle 1975 (Sigma 267)」
「Los Angeles 1975 4th Night : Mike Millard Original Master Tapes (Sigma 242)」
「Definitive Millard (Sigma 228)」
「Hamilton 1975 (Sigma 208)」
「Detroit 1975 2nd Night (Sigma 200)」
「Los Angeles 1975 Final Night (Gift CDR)」
「Pittsburgh 1975 (Sigma 187)」
「Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175)」
「Los Angeles 1975 4th Night (Sigma 148)」
「Difinitive Landover 1975 (Sigma 142)」
「Landover 1975 (Sigma 75)」
「A Generation's Legacy (Sigma 63)」
「Prism (Gift CDR)」
「Seattle Master Reels (Sigma 58)」
「The Arms Of Vancouver (Sigma 56)」
「Definitive Rave Master (Sigma 52)」
「San Diego 1975 (Sigma 51)」
「California Soundboard (Gift CDR)」
「Heavy Rain (Bonus CDR)」
「Theory Of Ruin Value (Sigma 46)」
「Nassau 1975 Day 2 (Sigma 43)」
「Pink Millard (Sigma 31)」
「Steel Breeze (Special Bonus CDR)」
「Nassau 1975 Day 1 (Sigma 22)」
「Raving Maniacs (Sigma 12)」
「Hamilton '75 (Sirene-082)」
#2021-11-23
1ヶ月強のオフを挟んで,1975年6月7日米国はジョージア州アトランタのアトランタスタジアム公演から,6月28日カナダはオンタリオ州ハミルトンのイボール・ワイン・スタジアム公演までの 2nd レグ.と 2回に分けて行われています.
本CDは,2nd レグ中盤に当たる 6月17日ニューヨーク州ロング・アイランドはユニオンデールのナッソウ・ヴェテランズ・メモリアル・コロシアム公演をオーディエンスで収録し Sigmaレーベルからリリースされた 『 Definitive Uniondale 1975 2nd Night (Sigma 294) 』 です.
既発では,Sigmaレーベルだけでも,2009年リリースの 『 Nassau 1975 Day 2 (Sigma 43) 』,2010年リリースの 『 A Generation's Legacy (Sigma 63) 』,2017年に 『 Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175) 』 とアップグレードを繰り返して来ました.
2017年にリリースされた 『 Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175) 』 は,Jerry Moore氏のマスター・カセット音源を,Rob Berger氏がトランスファーし,Flying M氏が,細かい箇所を含めてトリートメントを施し,2016年末にネット上に公開した音源が元になっていると思われるのですが,今回は元となっているマスター・カセット音源のデジタル版を元に,最近,何度となく登場しておりリマスタリングに定評のある Graf Zeppelinレーベルが行っているとの事.
元々,高音質のオーディエンス録音なだけに,ヘッドホンで聴かないと差分は余り判らないかも知れませんが,明らかにアップグレード盤となっています.
ただ,既発(一つ前)を所有していれば,コアなファンで無い限り,あえて購入する必要は無いかも知れません.
メーカー情報では
『『DEFINITIVE BOSTON 1975』と並び、「WISH YOU WERE HERE Tourの最高傑作」との賞賛を集める超名録音がブラッシュアップ。「GRAF ZEPPELIN」による執念マスタリングで磨き込まれた究極盤が永久保存プレス3CDで登場です。
その最高傑作録音に吹き込まれているのは「1975年6月17日ユニオンデール公演」。その超・極上オーディエンス録音です。このショウは古くから録音が知られ、長い録音史の間に何度もアップグレードを繰り返してきた定番中の大定番。恐らく、本稿に目を留められた方なら何かしらの既発を1つはお持ちなのではないでしょうか。本作も同じ大定番録音でありつつ、その頂を更新する1本なのです。
【大元カセット・トランスファーから磨き直した最高峰更新盤】
今回のアップグレードで要となるのは「大元カセットからの磨き直し」。
ここで「あれ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。現在までのベスト・バージョンは2017年にリリースされた『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER(Sigma 175)』でして、そのタイトル通り、大元カセットは既にお馴染みになっている。ここで「じゃあ、前回とちょっと違うだけ?」と思われるかも知れませんが、そうではない。むしろ、これまでのリマスターとは、大幅にサウンドが異なり、パッと聴いて一発で「全然違う!」と驚く仕上がりになっているのです。
そのサウンドをご説明するには、前回盤『Sigma 175』の知識も必要。ここで時計の針を2017年に戻してみましょう。それまでもアップグレードを繰り返してきた“ユニオンデール2日目”ですが、革命的に向上したのが2017年。大元カセットの発掘でした。その次元の違うアップぶりは二軍から一軍に上がったような大ジャンプであり、しかも一気に優勝候補の最有力とさえなるようなものでした。
そして、その大アップに世界中のコレクターが歓喜。さらに究極を目指して独自のマスタリングを敢行するマニアも登場し、大元カセットだけでなく、何種類かのマスタリング・バージョンも公開されました。そして、その中でコレクター間でもっとも評価の高かったバージョンを使用したのが『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER』。もちろん、当店でも最終のチェック/仕上げも行っていましたが、ベースとなっていたのは海外マニアによって調整され、当時「これぞベスト!」の評判を集めたバージョンでした。
それに対し、本作の土台となっているのは、大元の「カセット版マスター」。原点に立ち返り、「GRAF ZEPPELIN」がイチから磨き直したものなのです。その違いは、再生した直後から明らか。この録音は開演前のサウンドチェックから録音が始まっていますが、そこからして全然違う。本作では綺麗で細部まで鮮明な喝采がワッと沸き上がるのですが、前回盤『Sigma 175』を聴き直してみると遠くの風音のような塊になっており、それがシュワシュワとした歪みを伴っている。これは恐らく、前回版が意図的に喝采を削っていたのでしょう。パチパチの打音が1つずつ削除され、口笛も抑え込まれている。「オーディエンス・ノイズ」を文字通り「ノイズ」と捉え、不要な物としてカンナをかけるように削りとられているのです。もちろん、それ自体は是非もあるのですが、問題なのは思いっきり加工感が出てしまっていること。妙に引っ込んでゴワゴワとうねる喝采は、まるでスポンジの天ぷらでも揚げているような異音になっているのです。
【微に入り細に穿ったマスタリングが生み出した“輝きの音”】
分かりやすいので喝采の話が長くなってしまいましたが、これは肝心の演奏音にも言える。前回盤『Sigma 175』は中音域を大胆に絞り込み、低域を強力にブーストした仕上がりになっていました。これが演奏に凄まじい迫力を生み出し、世界中のマニアから賞賛を集める要因ともなっていたのです。しかし、それが明度に繋がってはいなかった。大元起こしのアップグレードだから「めちゃくちゃ鮮明!」と驚きましたが、ヘッドフォンで耳を澄ませ得ると鳴りが「ゴー」といううねりを起こしており、微細部を曇らせていた。特にバスドラはギターとベースの巨大な渦に飲み込まれ、ポコポコと段ボールを叩くような頼りない音だけが残っていたのです。
それに比べ、本作は本来のナチュラル感が絶大。うねりを起こすことのない無音部はクリスタル・グラスのような透明感を湛え、ギターやベースが盛大に鳴っても他の音やスキマが綺麗に描かれている。これは「ギターやベースを犠牲にしている」という意味ではありません。例えばベースですが、前回盤『Sigma 175』は重低音の迫力を押し出して一聴目立っていましたが、実はアタック音の鋭さや輪郭は惚けていました。それに比べ、凡作はアタックのゴリゴリ感は鋭く立ち上がり、鳴りも決して長く回り込まず、演奏音の芯に金属光沢の輝きを与えるだけに留まっているのです。
この鮮やかさは「大元カセットのナチュラル感」を最大限に尊重した結果ではありますが、決して「元のまんま」という意味ではありません。むしろ逆。これまでの「GRAF ZEPPELIN」リマスター作品でも触れてきましたが、その精度は半端ではない。ランダムな変化にもキッチリ対応するピッチ調整や、耳でも波形でもチェックを重ねるプチノイズ処理、1/1000秒のズレも見逃さない位相調整などなど。実際、大元カセットのナチュラル・トランスファーでは位相が左チャンネルへ(わずかに)寄っており、高周波ノイズもありましたが、そうしたポイントはすべて改善されている。さらに言いますと、前回盤『Sigma 175』では「Raving And Drooling」や「Echoes」の前に(海外マニアがマスタリングした段階で生まれたのであろう)わずかなギャップがありました。もちろん、本作は大元カセット・ランスファーからオリジナルで作業していますので、それもありません。
この録音が最高傑作と呼ばれるのは、音の良さに加えて名演ぶりもあります。その素晴らしさは前回盤でもたっぷり感じられましたが、本作はさらに一層輝いて聞こえるのです。ド迫力最重視派の方なら前回盤『Sigma 175』を好まれるかも知れませんが、その迫力を演出するために犠牲になってきたディテールが本作にはある。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上した最高傑作の更新盤です。その輝きを永久に失わないプレスCDに封じ込めた3枚組。どうぞ、心ゆくまで「てっぺんの音」をご堪能ください。
★「1975年6月17日ユニオンデール公演」の超・極上オーディエンス録音。何度もアップグレードしてきた伝統の名録音で、本作は大元カセット・トランスファーから「GRAF ZEPPELIN」が磨き直した最高峰更新盤です。海外マニア制作のマスターを元にした前回盤『Sigma 175』は重低音がかなり豪快に押し出された迫力サウンドでしたが、本作は大元のナチュラルさと鮮明さを最大限に重視。その上でピッチやノイズ処理、1/1000秒のズレも許さない最精度の磨き込みで圧倒的な鮮やかさを実現しました。1音1音の際立ちも、自然なリアリティも、クリスタル・クリアな鮮やかさも圧倒的に向上したツアー最高傑作の更新盤です。
------------------------------------------------------------
(リマスター・メモ)
REMASTERED BY GRAF ZEPPELIN
★今回はMasterからデジタル化されたデータを改めてリマスター
★前回盤『NASSAU COLISEUM 1975 2ND NIGHT: CASSETTE MASTER(Sigma
175)』はFlying -M- (Dec 2016)とされるものが元になっていた。
★今回盤と前回盤との違いですが、EQ処理が全く異なります。
前回盤は低域の非常に出た迫力のあるサウンドである反面、異様な加工感がつきまとっていた。
今回盤は低域の補強を中心にリマスターを施しつつも、全体のバランスも重視。
元々あった現場の空気感を尊重したマスタリング。
その他
★位相修正(若干左寄り→センターに寄ってます)
★高周波ノイズ除去 (左chのみ 18khz、14khz の2本
但し元々音には影響ないですが、念のため) 』
Definitive Uniondale 1975 2nd Night (Sigma 294)
Live At Nassau Coliseum,Uniondale,NY,USA 17th June 1975
[UPGRADE]
Disc 1
01. Introduction
02. Raving And Drooling
03. You Gotta Be Crazy
04. Shine On You Crazy Diamond (Part 1-5)
05. Have A Cigar
06. Shine On You Crazy Diamond (Part 6-9)
TOTAL TIME (59:01)
Disc 2
01. Speak To Me
02. Breathe
03. On The Run
04. Time
05. Breathe (reprise)
06. The Great Gig In The Sky
07. Money
08. Us And Them
09. Any Colour You Like
10. Brain Damage
11. Eclipse
TOTAL TIME (58:19)
Disc 3
01. Audience
02. Echoes
TOTAL TIME (29:37)
You Gotta Be Crazy
Shine On You Crazy Diamond (Part 6-9)
Any Colour You Like
[参考]
1975 North American Tour 1st Leg
April
08 Pacific National Exhibition Coliseum,Vancouver,B.C.,CANADA
10 Seattle Center Coliseum,Seattle,WA,USA
12 The Cow Palace,Daly City,San Francisco,CA,USA
13 The Cow Palace,Daly City,San Francisco,CA,USA
15 University Activity Center,Arizona State University,Tempe,AZ,USA
⇒ [Rescheduled To 20 April]
17 Denver Coliseum,Denver,CO,USA
19 Tucson Community Center Arena,Tuscon,AZ,USA
20 University Activity Center,Arizona State University,Tempe,AZ,USA
21 Sports Arena,San Diego,CA,USA
23 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
24 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
25 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
26 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
27 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
1975 North American Tour 2nd Leg
June
07 Atlanta Stadium,Atlanta,GA,USA
09 Capital Centre,Landover,MD,USA
10 Capital Centre,Landover,MD,USA
12 Spectrum Theater,Philadelphia,PA,USA
13 Spectrum Theater,Philadelphia,PA,USA
15 Roosevelt Stadium,Jersey City,NJ,USA
16 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
17 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
18 Boston Gardens,Boston,MA,USA
20 Three Rivers Stadium,Pittsburgh,PA,USA
22 County Stadium,Milwaukee,WI,USA
23 Olympia Stadium,Detroit,MI,USA
24 Olympia Stadium,Detroit,MI,USA
26 Autostade,Montréal,QC,CANADA
28 Ivor Wynne Stadium,Hamilton,ON,CANADA
[関連記事]
「Ultimate Millard (Sigma 286)」
「Tempe 1975 (Gift 2CDR)」
「Landover 1975 : 8mm Footage : Resttored Edition (Gift DVDR)」
「Definitive Boston 1975 : Unprocessed Masters (Sigma 276)」
「San Diego 1975 : 1st Gen (Ltd Bonus 2CDR)」
※) 『 California Soundboard : Revised Edition (Sigma 277) 』付属のボーナス・アイテム
「California Soundboard : Revised Edition (Sigma 277)」
「Echoes From The Past : Original Millard Master Recording (SPE-42675)」
「Definitive Seattle 1975 (Sigma 267)」
「Los Angeles 1975 4th Night : Mike Millard Original Master Tapes (Sigma 242)」
「Definitive Millard (Sigma 228)」
「Hamilton 1975 (Sigma 208)」
「Detroit 1975 2nd Night (Sigma 200)」
「Los Angeles 1975 Final Night (Gift CDR)」
「Pittsburgh 1975 (Sigma 187)」
「Nassau Coliseum 1975 2nd Night:Cassette Master (Sigma 175)」
「Los Angeles 1975 4th Night (Sigma 148)」
「Difinitive Landover 1975 (Sigma 142)」
「Landover 1975 (Sigma 75)」
「A Generation's Legacy (Sigma 63)」
「Prism (Gift CDR)」
「Seattle Master Reels (Sigma 58)」
「The Arms Of Vancouver (Sigma 56)」
「Definitive Rave Master (Sigma 52)」
「San Diego 1975 (Sigma 51)」
「California Soundboard (Gift CDR)」
「Heavy Rain (Bonus CDR)」
「Theory Of Ruin Value (Sigma 46)」
「Nassau 1975 Day 2 (Sigma 43)」
「Pink Millard (Sigma 31)」
「Steel Breeze (Special Bonus CDR)」
「Nassau 1975 Day 1 (Sigma 22)」
「Raving Maniacs (Sigma 12)」
「Hamilton '75 (Sirene-082)」
#2021-11-23