長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『Zola ゾラ』

2022-10-04 | 映画レビュー(そ)

 2015年にデトロイト在住の一般女性アザイア・“ゾラ”・キングがTwitterに投稿した148ツイートを基にする本作は日頃、僕たちががタイムラインを周遊して遭遇する意外性とグロテスクさを映画化することに成功しているものの、140文字以上の奥行きがあるのかは些か怪しい。主人公ゾラ(輝くようなテイラー・ペイジ)はたまたま出会った白人女性ステファニーと意気投合。共にストリッパーである2人はもっと荒稼ぎしようというステファニーの提案からカリフォルニアへのロードトリップに出る。ところが出発の日、ゾラを迎えに来たのはステファニーだけではなく、恋人のデレク、そして名前も名乗らない怪しげな黒人男性で、やがてゾラは旅行の恐ろしい目的を知ることになる。

 『ユーフォリア』で主人公ゼンデイヤを献身的に支える元薬物中毒者を演じて注目されたコールマン・ドミンゴがここでは極悪ポン引きを怪演し、周囲を圧倒。ニコラス・ブラウンが『サクセッション』同様、背ばかり高くて一向に役に立たないどアホのデレクに扮して不気味な笑いを取る。ゾラが直面する出来事はあまりにグロテスクだが、『アンダー・ザ・スキン』のミカ・レヴィによる浮遊感ある音楽は何とも心地良く、監督ジャニクザ・ブラボーのポップな演出によって目を離すことができない。ツイート音や叙述のトリックはさほど機能しているとは言えないが、この現実を奇妙な角度から見つめて世を切るのが主人公ゾラの機知でもあるのだ。

 ステファニー役のライリー・キーオは『悪魔はいつもそこに』『アンダー・ザ・シルバーレイク』に続いてまたしても“出会ってはいけない美女”に扮している。出演作の多くがA24リリース作品である事からもキャリアコントロールに強いこだわりが伺え、バイプレーヤーとして成長著しい事を記しておきたい。


『Zola ゾラ』21・米
監督 ジャニクザ・ブラボー
出演 テイラー・ペイジ、ライリー・キーオ、ニコラス・ブラウン、アリエル・スタッチェル、コールマン・ドミンゴ
 

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