拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子の新しい目覚め

あなたへ

 

洋画って、いいよね

 

仕事から帰った私に、その日観た映画についてを話してくれたのは、

夏休みに入った頃のあの子でした。

 

我が家のテレビのレコーダーには、あの頃のまま、

あなたが撮り溜めていた映画が、たくさん残っています。

 

これまでは、あなたが好きだったそれらに対して、

何の興味も示さなかったあの子ですが、この夏、突然に目覚めたようです。

 

今日は、この映画を観たよ

 

そう言って、楽しそうに話を聞かせてくれるあの子の声に耳を傾けながら、

これもまた、あなたから受け継がれたものなのだろうかと、

なんだかとても感動してしまいました。

 

テレビドラマが次々と最終回を迎え、

楽しみがなくなってしまったねと、あの子とこんな話をしながら、

未再生である洋画の録画を見つけたのは、先日の私。

 

これ、知ってる?

 

あっ!忘れてた

それ、俺が録画したんだよ

 

こんなやり取りをしながら、ほんの少し驚いてしまったのは、

絶対に、あなたが好みそうな映画のタイトルだったからでした。

好みまでもが全く同じなんだなって。

 

じゃぁ、今日は、これを観てみようか

 

いつもなら、撮り溜めたドラマを観る時間、

あの子が録画したのだと言う映画を観ることになりましたが、

ストーリーが進むにつれて、更に驚いたのは、

何気なく、映画に集中するあの子の顔を見た瞬間でした。

 

口をポカンと開けて、映画を観ているではありませんか。

こんなところまで、あなたにそっくりですよ。

 

ねぇ、あなたは気付いていましたか。

あなたもね、映画に物凄く集中している時には、

ポカンと口を開けて、映画を観ていたよ。

 

ここにあなたがいてくれたのなら、きっと、2人揃って、

口をポカンと開けて、映画を観ていたんだろうな。

 

そんな2人の姿をこっそりと思い浮かべて、

静かに笑ってしまったことは、私だけの秘密。

 

目覚めというものは、本当に、

ある日突然にやって来るのものなのでしょう。

 

あの子の新しい目覚めを見つめながら、

いつかのあなたの声を思い出していました。

 

この映画を初めて観た時にね、映画っていいなって思ったんだ って。

 

あの子が初めて、洋画の良さに気付いたあの日と、

あなたが初めて映画を好きになった日の感覚は、

きっと、よく似た感覚だったんだろうな。

 

やっぱり、あなたとあの子は親子だね。

どんなに離れていても、笑っちゃうくらいに、

あの子は、あなたによく似てる。