コントだからこそ・・・
□□□□□□はじめに□□□□□□
「コント」の目的は、もちろん笑いを獲る事。
笑いを獲るためには、
どんな形であれ、
ボケる、
…つまり、
ディスコミュニケーションを感じさせる必要があります。
、、、とは言え、
「どんな形であれ」って言われると、
逆に、どうやってボケればいいのか途方にくれますよね。
□□□□□□設定□□□□□□
ご心配無く。
コントには、ボケるのにおあつらえむきの素材があります。
コントである以上、
設定、シチュエーションが不可欠ですよね。
それこそが、コントの笑いの素材。
その設定、シチュエーションを素材として、
逸脱を作り出し、
ディスコミュニケーションを提示する訳です。
「設定」と「逸脱」の関係としては、
以下の二通りのパターンが考えられます。
・設定からの逸脱
・逸脱した設定
もちろん、設定と直結しない逸脱もありますし、
そもそもこの2つも明確に区別しにくい場合もありますが、
この2つが基本です。
□□□□□□設定からの逸脱□□□□□□
「設定からの逸脱」とは、
そのコントの設定からイメージされる常識的な言動を想定し、
それに反する言動でボケる事。
簡単ですね。
まずは、設定からイメージされる常識的な言動を考えてみましょう。
例えば、
A:泥棒に忍び込むという設定なら、
音をたてず静かに行動する、
…というのは常識ですね。
B:職場での先輩による新人教育なら、
正しい手順とか効率的に処理するコツとかを教えなきゃいけません。
C:人を脅迫して機密情報を聞き出したいなら、
家族に危害が及ぶ事をほのめかすのが常道です。
D:結婚式の余興にだって、それに相応しい出し物があります。
E:ちょっと変わった設定ですが、
大食い選手権の給仕係だったら、
黙々と食事を運ばなければなりません。
上記のような「そういう状況ならこうあるのが当然」という常識を何でもいいから一つ想定し、
その一つの常識から外れた行動をとる事で、
ディスコミュニケーションの笑いのフォーマットが作れます。
A:泥棒に忍び込む設定で、
不必要なタンバリンを持ち込んで無駄に音をたてるとか、
< 基準 >:音をたててはいけないにも拘わらず
< ズレ >:(不必要に音のでるものを持ち込み)音をたてる
<ツッコミ>:「音たてんな!」「シーッ!シーッ!」
B:新人教育の場面で、
どう考えても非効率的、全く意味のない手順を教えるとか、
< 基準 >:効率的で正しい手順を教えるべきにも拘わらず
< ズレ >:非効率的で間違った手順を教える
<ツッコミ>:「他のやり方あるやろ!」「効率、悪っ!」
C:人を脅すシーンなのに、
不安感を煽るのには必要無い細かい情報や関係無いご近所さんの情報を教えるとか、
< 基準 >:(家族への危害をほのめかすなど)不安感を煽る情報を示すべきにも拘わらず
< ズレ >:不安感を煽らない情報を示す
<ツッコミ>:「いや、関係あらへん!」「どーでもいい!」
D:結婚式の余興で、
人間技を越えたびっくり人間的な見せ物(電動ドリルを自身の身体にあてる等)をするとか、
< 基準 >:結婚式の余興に相応しい出し物が期待されるにも拘わらず
< ズレ >:結婚式の余興として相応しくない出し物をする
<ツッコミ>:「やりすぎやろ!」「いや、引くわ!」
E:大食い選手権の給仕係が、
大食い選手に接客したり料理の説明したりするとか、
< 基準 >:不必要な言動は慎むべきにも拘わらず
< ズレ >:不必要な接客や声かけをする
<ツッコミ>:「そんなん要らんねん!」「いや、早く持って来いや!」
このように、
常識を一つだけ想定し、
それから逸脱するたった一つの笑いのフォーマットを繰り返し提示するだけで、
一応コントとして成立します。
…実は上記のボケは全て、
『キングオブコント2020』からの引用です。
実際にこれらのネタでは、
ボケの内容に関しては、
終始一貫、ほぼ同じ「設定からの逸脱」を繰り返しているだけでした。
同じ笑いのフォーマットをリピートしてるだけ。
ちなみに、
泥棒ネタはジャルジャル、
新人教育ネタはロングコートダディ、
機密情報脅迫ネタはジャングルポケット、
結婚式の余興ネタはニューヨーク、
大食い選手権ネタは滝音。
もちろん、
設定からは一つの常識しか導き出せない訳ではありません。
設定から複数の常識を導き出し、
それら複数の常識から逸脱する事も出来ます。
例えば、高名な陶芸家だったら、
寡黙で落ち着いているとか、
よく吟味して作品を判断するとか、
自分に厳しいとか、
師匠弟子の関係は絶対とか、
共有されたイメージがあります。
…と言うことは、
陶芸家がちゃんと吟味せずに勢いで出来を判断するとか、、
間違って割って取り乱すとか、
弟子のせいにするとか、
弟子が師匠を蔑ろにするとかすれば、
これらも「設定からの逸脱」によるボケです。
< 基準 >:じっくりと吟味して判断すべきにも拘わらず
< ズレ >:よく見もせず判断する
<ツッコミ>:「ちゃんと見ろや!」
< 基準 >:冷静沈着であるべきにも拘わらず
< ズレ >:興奮して取り乱す
<ツッコミ>:「落ち着けや!」
< 基準 >:自分に厳しくあるべきにも拘わらず
< ズレ >:弟子を責める
<ツッコミ>:「いや、お前やろ!」「人のせいにすな!」
< 基準 >:師匠は絶対であるべきにも拘わらず
< ズレ >:師匠を蔑ろにする
<ツッコミ>:「師匠やろ!師匠!」
この陶芸家ネタも『キングオブコント2020』の引用で、
うるとらブギーズのネタ。
複数であっても、
「設定からの逸脱」による笑いであるのは同じです。
…どうです?
「設定からの逸脱」でボケるって、
別に難しくはないですよね。
そんなシンプルなボケだけでコントが作れるし、
キングオブコントに出られる、、、
……訳ないかぁ。
これはあくまでも、
ボケの内容に関してだけの話。
もちろん、キングオブコント決勝に勝ち残るネタが、
そんな単純なディスコミュニケーションだけで出来ている訳ではありません。
実際のこれらのネタでは、
「緊張と緩和」、「思い込みの間違い」、「下方評価」の笑いのフォーマットも感じさせましたし、
それらを効果的にする「間」による醸成、
ツッコミによる落差拡大、ズレ生成など、
たくさんの工夫が凝らされていました。
キングオブコントで観たこれらのネタの面白さは、
そちらの方にこそあるのですが、
この記事では触れません。
ここで言いたいのは、
コントの多くは、
「設定からの逸脱」というシンプルなボケを軸にして出来ている、、、
…いう事です。
□□□□□□逸脱した設定□□□□□□
さて、もう一つの設定に絡む笑いが、
「逸脱した設定」、、、
…なのですが、、、
以下次号。。。
m(__)m
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