子どもの本屋として避けられない、
重いテーマについて書きます。
湯本さん・酒井さんの新刊が届きました。
実は、絵が美しすぎたらどうしようか・・・と
密かに用心したのですが、
※ 気持ちが絵に傾きすぎてしまうので・・・。
文章と絵がひとつに溶け合った、
心惹かれる作品でした。
辛い現実に押しつぶされそうになって、
生きることを迷う少年を描いていて、
テーマはズンと重いです。
橋の上で
湯本香樹実/酒井駒子
河出書房新社 本体¥1,500.
この本を手にした時に
真っ先に浮かんだのが
しばらくまえに、自死を扱って話題になった、
そしてわたし自身も迷いに迷った、
こちらの絵本です。
ぼく
谷川俊太郎作 合田里美絵
岩崎書店 本体価格¥1,700.
どちらも死と向き合う物語ですが、
<ぼく>では、
主人公の少年の悩む姿は描かれず、
彼はするりと別の世界を選んでしまいます。
<橋の上で>では、
辛い現実を噛み締めつつ、
橋の欄干から川面を見つめる少年に
見知らぬ男性が話しかけます。
たったひとつの、
きみだけのみずうみがある
という男性からのメッセージ。
自分の湖の水がからだに満ちる
というイメージの、
その何が彼を引き止めたのでしょうか。
谷川さんの<ぼく>とは別の方向に
<橋の上で>の少年は、歩きはじめます。
この2冊の絵本を比べてみた時、
死に向かう作品が間違いで
生き抜くことを描けば正しい作品、
と分けることはできないな、と感じます。
表現力が無くて、
理論的にお伝えできないのですが、
どちらの作品も真実を描いていると思えます。
どちらの作品の描く世界も本当だと
絵本との長い付き合いの中で
ただ、そう感じます。
命について、
何も考えずに大人になることはできない。
わたしの年齢になっても、
こんなに呑気なわたしでも、
この問題はとても重いものです。
でも、だからといって、
目をつむって通り過ぎるのは間違いでしょう。
危険な作業ですけれどね・・・。
そして、本屋の立場から思うのですが、
もし絵本のなかでそれを体験して、
どちらの<本当>にも触れたとしたら、
そこから希望を見つけてもらうことは、
できないでしょうか。
<ぼく>が出版された時には
特に読み聞かせを実践する方々から
この作品を危うく感じる意見が多いようでした。
今回、<橋の上で>を手にしたので、
改めて2冊を並べて読んでみたのですが
別の作家によって
別のタイミングで描かれているにもかかわらず、
2冊はまるで一対の作品のようです。
生きるという選択を辛く思うとき
自死について考えるとき、
この一対の作品を手することで、
生きることを
自身で選ぶ人がいるかもしれない。、
誰かに正しい道を指されるのではなく
自分で生きる道を選ぶための助けとして
この一対の絵本に出会ってもらえたら・・・。
2冊が揃って本当に良かった。
この2冊は常備したいと思っています
応援よろしく!
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