<生きる>に向き合う2冊の絵本 | ほんとうのピコットさん

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子どもの本屋「夢文庫ピコット」店主です。
タイトル「ほんとうのピコットさん」については、
http://ameblo.jp/pikot/archive1-200711.html をどうぞ!

子どもの本屋として避けられない、

重いテーマについて書きます。

 

湯本さん・酒井さんの新刊が届きました。
実は、絵が美しすぎたらどうしようか・・・と

密かに用心したのですが、汗
※ 気持ちが絵に傾きすぎてしまうので・・・。
文章と絵がひとつに溶け合った、
心惹かれる作品でした。

 

辛い現実に押しつぶされそうになって、

生きることを迷う少年を描いていて、

テーマはズンと重いです。

 

 

 

 

 

橋の上で

 

湯本香樹実/酒井駒子

河出書房新社 本体¥1,500.

 


この本を手にした時に
真っ先に浮かんだのが
しばらくまえに、自死を扱って話題になった、

そしてわたし自身も迷いに迷った、

こちらの絵本です。

  ・・・→ 新刊を手にして 迷う

 




 

ぼく

 

谷川俊太郎作 合田里美絵

岩崎書店 本体価格¥1,700.

 

 

 

 

 

どちらも死と向き合う物語ですが、
<ぼく>では、
主人公の少年の悩む姿は描かれず、
彼はするりと別の世界を選んでしまいます。


<橋の上で>では、

辛い現実を噛み締めつつ、
橋の欄干から川面を見つめる少年に
見知らぬ男性が話しかけます。

たったひとつの、

きみだけのみずうみがある

という男性からのメッセージ。

自分の湖の水がからだに満ちる

というイメージの、

その何が彼を引き止めたのでしょうか。

 

谷川さんの<ぼく>とは別の方向に

<橋の上で>の少年は、歩きはじめます。

この2冊の絵本を比べてみた時、
死に向かう作品が間違いで
生き抜くことを描けば正しい作品、
と分けることはできないな、と感じます。

表現力が無くて、
理論的にお伝えできないのですが、
どちらの作品も真実を描いていると思えます。

どちらの作品の描く世界も本当だと
絵本との長い付き合いの中で
ただ、そう感じます。

命について、

何も考えずに大人になることはできない。

わたしの年齢になっても、

こんなに呑気なわたしでも、

この問題はとても重いものです。

でも、だからといって、
目をつむって通り過ぎるのは間違いでしょう。
危険な作業ですけれどね・・・。

そして、本屋の立場から思うのですが、

もし絵本のなかでそれを体験して、
どちらの<本当>にも触れたとしたら、
そこから希望を見つけてもらうことは、

できないでしょうか。


<ぼく>が出版された時には
特に読み聞かせを実践する方々から
この作品を危うく感じる意見が多いようでした。

今回、<橋の上で>を手にしたので、
改めて2冊を並べて読んでみたのですが
別の作家によって

別のタイミングで描かれているにもかかわらず、
2冊はまるで一対の作品のようです。

生きるという選択を辛く思うとき
自死について考えるとき、
この一対の作品を手することで、
生きることを
自身で選ぶ人がいるかもしれない。、

誰かに正しい道を指されるのではなく
自分で生きる道を選ぶための助けとして
この一対の絵本に出会ってもらえたら・・・。

2冊が揃って本当に良かった。

この2冊は常備したいと思っています

 

 

 

 

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