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良い意味でぶっ飛んだ傑作!「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2023)

ぷらすです。

3/3日の公開日から話題沸騰の「エブエブ」こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観てきました!

監督が「スイス・アーミー・マン」のダニエル・クワン&ダニエル・シャイナートということで楽しみにしていたんですが、実際観たら期待をはるかに超える面白さでしたねー!

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画像出展元URL:http://eiga.com

概要

『ムーンライト』『ミッドサマー』などのA24が製作し、『スイス・アーミー・マン』などのダニエル・クワンダニエル・シャイナートが監督を務めるアクションコメディー。破産寸前のコインランドリーを経営している女性が、並行世界で驚異的な身体能力を得て人類を救うための闘いを繰り広げる。主人公を『グリーン・デスティニー』などのミシェル・ヨーが演じ、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』などのキー・ホイ・クァンや『ハロウィン』シリーズなどのジェイミー・リー・カーティスらが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

あの「スイス・アーミー・マン」のダニエルズ・監督最新作はさらにぶっ飛んだ映画だった

本作でメガホンを取るのはダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(通称ダニエルズ)。ハリーポッターダニエル・ラドクリフが動く水死体を演じた「スイス・アー・ミーマン」では、そのぶっ飛んだ物語と哲学的な内容が相まって大きな話題を呼びました。

本作では「ポリス・ストーリー3」や「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」など洋の東西を問わず数々の作品に出演したミシェル・ヨー、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」のキー・ホイ・クァンら中国系キャストを揃え、今にも潰れそうなコインランドリーを経営する人生に疲れた中年女性がマルチバース世界を救うという、「スイス~」以上にぶっ飛んだ映画を制作したのです。

ざっくりストーリー紹介

本作のストーリーをざっくり紹介すると、今にも潰れそうなコインランドリーを経営するエヴリンミシェル・ヨー)は、ボケかけた父(ジェームズ・ホン)の介護に疲れ、優しいだけの呑気な夫ウェイモンドキー・ホイ・クァン)にいら立ち、同性愛者の娘ジョイ(ステファニー・スー)を受け入れられない人生に疲れきった中年女性。

そんな彼女が確定申告に行った国税局で、突如、別宇宙(ユニバース)のウェイモンドが現れ、全ユニバースにカオスをもたらす強大な敵 ジョブ・トゥパキとの戦いに巻き込まれる――という物語。

ミシェル・ヨー演じる主人公エブリンはこれまで様々な夢に挫折。残ったのは潰れかけのコインランドリーと、優しいだけで役立たずな夫、彼女を否定し続けた父、同性愛者の娘。そして大量の領収書と確定申告を抱えいっぱいいっぱいになっています。

そんな彼女が国税局に行くと、エレベーターの中で突如様子の変わったウェイモンドが監視カメラを避けるため傘を開き、エブリンの両耳に通信機のようなものをつけさせ「君に危険が迫ってる」と意味不明な事を矢継ぎ早に言ってアプリを起動。

そして「またすぐ会おう」と言うと、元の夫に戻りエレベーターが開くんですね。

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そんな夫の様子が気になって税務職員ディアドラジェイミー・リー・カーティス)の言葉も上の空のエブリンは、ウェイモンドから手渡された指示書に従って、靴を反対に履き替え、用具室の扉をイメージしながら緑に光った耳の機器を押してみると、謎の感覚が彼女を襲い、用具室の中で様子の違うウェイモンドと一緒にいたのです。

そこで彼は、自分は別アース(並行宇宙)のウェイモンドであり、全ユニバースを破壊しようとしている強大な敵、 ジョブ・トゥパキと闘えるのは君だけだと伝えるんですね。

お前は何を言ってるんだ?と思われるかもですが、そういう内容なんだから仕方がないw

マルチバース

マルチバースと言えばMCU作品などのアメコミ映画で登場するようになった並行宇宙。馴染み深い言葉で言えばパラレルワールドのことで、可能性の分だけあり得たかもしれない自分が存在する宇宙が枝分かれして存在しているという概念。

本作でエブリンは、別アースのエブリンが作った装置を使い、全ての並行宇宙を破壊せんとするジョブ・トゥパキとマルチバースをまたにかけて闘うハメになるんですが、面白いのは、別アースに移動できるのは肉体ではなく精神のみで、別アースの自分を体験することでその世界の自分が得た能力を使えるようになる。ということ。

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もう一つは、思いつく限りバカバカしい行為をすればするほど移動のためのエネルギーを得られるということ。

最初の靴を左右反対に履くもそうですが、その行為がより常識から外れるほど得られるエネルギーは大きくなり、より強力な自分にアクセスできるんですね。

それはエブリンだけでなく、全ての登場キャラがそうなので画面上ではとんでもなくバカバカしい、もしくはお下品な光景が映し出される事になるのです。

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そこを笑えるかどうかが本作の評価の分かれ目と言う感じなんですが、「スイス・アーミー・マン」を観た人なら何となく分かると思いますが、まるで小学生男子がゲラゲラ笑いながら考えたようなバカバカしい展開に呆れていると、急に哲学的だったり、深い人間ドラマに連れていかれるのがダニエルズ監督の凄いところ。

普遍的な愛の物語

本作でも扱われているテーマは、家族、多様性、毒親問題、ミドルエイジクライシスなど、ともすれば重く、デリケートなものばかり。

エブリンは娘のジョイがレズビアンであることを認められず、事あるごとにジョイに対して「あんたは太り過ぎ。食事に気をつけろ」と否定的な事ばかり言う、いわゆる毒親なんですが、実は彼女自身も、父親から否定されて育っていた事が明かされます。

なので、父親にジョイのガールフレンドを「友達」と紹介。ジョイを失望させたりするんですね。

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また、中年期に突入し「自分にはこの潰れかけのコインランドリーと役立たずの夫、年老いた父親と自分に反抗的な娘しかない」と絶望。テレビに映るミュージカルに、あったかもしれない自分を重ねて妄想に耽ったりしている。まさにミドルエイジクライシス(中年の鬱)なんですよね。

しかし、本作はそこにマルチバース設定を絡める事で、限りなくポップで楽しいコメディとして見せてくれるんですね。

それでいて中盤以降、エブリンがあらゆるユニバースを経験しながら自分と向き合っていく深い展開には唸らされるし、そこから彼女が導き出されたある答えには、爆笑しながらも思わず泣いてしまいました。さすがダニエルズ。

さらにそのまま終わるのかな?と思ったら、そこからもうひと捻り。

いわゆる多様性を受け入れるとは何か、家族とは何かを示すラストは、僕らの“これから”に、一つの可能性を示してくれる展開で、本当に素晴らしかったですよ。

とはいえ、劇中ではバカみたいなギャグや下ネタも結構あるし、その辺、合う人合わない人がいるかもしれません。

キャスト陣

そんな本作の主人公エブリンを演じるのは、洋の東西を問わず多くの映画に出演しているミシェル・ヨー。エブリンの優しいけど頼りない夫ウェイモンドを演じるのは子役時代「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 」や「グーニーズ」にも出演したキー・ホイ・クァン。彼は役者から裏方へと活躍の場を移していましたが、本作で俳優として本格的にカムバックしたそうです。

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この対照的なキャラを演じる二人の演技はもちろん素晴らしかったんですが、個人的に驚いたのは、二人の娘ジョイを演じたステファニー・スー
彼女はこれまで舞台を中心に活躍していたようですが、本作ではミシェル・ヨーにも負けない存在感を発揮していたと思うし、本作でアカデミー助演女優賞にもノミネートされたようですね。

ポップでキッチュな映像体験

そんな本作、恐らくはそこまでビックバジェットではないと思うんですが、その分、ポップキッチュな色使いやデザイン、ダニエルズらしい映像センスで決して安っぽくはみえないような画作りがされていたと思うし、この映像だけでも観る価値があるように思いました。

興味のある方は是非!!