不思議なことに…宗太郎は少しも怖くはなかった。
自分の頭のどこかで…
これは、夢なんだ、と思っている節があった。
先生の声に誘導されるまま、目の前の扉に手を伸ばす。
(確かに、ここに来たことがある)
少年の宗太郎は、無邪気にそう思う。
「やぁ、来たか」
入り口の側で、おじいさんが声をかけてくる。
「こんにちはぁ」
そう言いながら、入って行く。
「今日はねぇ、みんなと実験をしているんだ」
老人はニコニコしながら、話しかけてくる。
「へぇ~」
迷うことなく、スタスタと宗太郎は中に入って行く。
宗太郎が小学生の時、すでに古い家ではあったけれど、今のように
オンボロでもなく、ただの古い家という見た目だった。
「ソータローくん、キミ…興味がある?」
この日のおじいさんは、なぜか宗太郎に話しかけてくる。
「何が?」
ここには『幼なじみ』と遊びによく来ているので、何の抵抗も
なかった。
「だって、ここ…
お化け屋敷って言われているんだろ?」
おじいさんはやけに、宗太郎に馴れ馴れしい。
「なんで、知っているの?」
本当いうと、このおじいさんのことも…
子供たちはみんな、『死神』とか『マッドサイエンティスト』とか、
『変なオジイサン』と、陰で呼んでいた。
「みんな…何か言ってる?」
「別に!一人で来てるし」
宗太郎はあまり、みんなとサッカーとか、野球とかするのは、得意では
ないのだ。
「キミは…私のことは、怖くないの?」
オジイサンは、宗太郎にさらに聞いた。