先日、豊田市美術館にて「ゲルハルト・リヒター展」を観てきました。
リヒター展は必ず観ねば…と行って来ました。
リヒターは現代アートの中心、物差し的な存在です。
リヒターの名を知らしめた作品が「モーターボート」(1965年)。
広告写真をプロジェクターで投影して筆やブラシで描くフォト・ペインティングという手法を作ったリヒター。
近くで観ると筆づかいとかブラシの跡が分かります。
リヒターの作風はバリエーションに富んでいますね。
刷毛のタッチでぼんやりとした風合いをだしています。↓
リヒターはアブストラクト・ペインティングという手法を編み出します。
製作現場の映像をテレビで観ましたが、リヒターが塗料をつけた板をガッと下げたりしていました。
偶発的要素が高い画法なのかな、と。
成功を収めたフォト・ペインティングから新たな技法へ移るのはリスキーですが、アーティストの魂がそれを求めたんでしょうね。
下は展覧会の主役「ビルケナウ」(部分)。
ナチスによる悪名高いアウシュビッツ収容所でのユダヤ人への残虐な戦争犯罪。
ドイツ人のリヒターとしては、ずっと心の中で暗い影を落としていたテーマだったんですね。
でもそれは、人間の中の深すぎる闇、暗部に潜む醜い悪をテーマにするわけですから、リヒターとしては出来れば避けたいような苦しみが長年あったことでしょう。
時が満ちてリヒターは宿題としてきたこのテーマに挑んだんですね。
フォト・ペインティングの上からアブストラクト・ペインティングを上塗りしたという点でも、リヒターの集大成だったと思われます。
リヒターは90歳を超えて引退宣言していますが、今もスケッチを続けています。
生粋のアーティストは何かをクリエイトしないではいられない、生涯現役なんですね。