週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

胸郭出口と呼吸の関係

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

 

最近は自由診療でも子供の体を診る機会が多くなりました。

正直、親御さんの期待を裏切れないというプレッシャーから大変しんどい週末を送ることとなり…

 

その中でも、

子供の頃から気を付けておきたい部位の一つである「胸郭出口」について、今日は切り込んでいきます。

 

前回の内容はこちら↓

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

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胸郭出口について

 

肩や頚の問題を診ることの多い私にとって、胸郭(出口)は臨床における生命線です。

なので、

自然と弟子に指導するときも熱がこもり、セミナーでも調子に乗って 特別時間をかけて喋った覚えがあります…

 

 

さて、

胸郭とは肋骨・胸骨・脊柱で囲まれた胸部全体を指します。

この中には胸膜を介して肺と心臓が包まれており、換気(呼吸)と血液の循環において最重要な器官であることに異論ありません。

 

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胸郭の基本構造

 

そして、胸郭出口は

・胸郭と肩

・胸郭と頸 

との連結部分を指します。

 

体表面からはわかりにくいですが、

この胸郭出口は非常に入り組んでおり、そもそもトラブルを生じやすい構造になっています。

 

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胸郭出口症候群は、骨関節や筋だけでなく神経・血管の複合的な絞扼性障害である

 

代表的な問題として、

・斜角筋の隙間を通る腕神経叢の挟み込み

・鎖骨と肋骨の間を通過する動脈/静脈の圧迫

・小胸筋下のトンネルでの血管/神経の圧迫

 

これらの物理的な問題に伴う神経症状や循環不全によって、肩こりをはじめ末端のしびれや痛み、冷え、張れ、だるさ・・・

といった症状をきたす可能性があり、実際に臨床においては私自身も遭遇してきました。

 

 

呼吸補助筋について

 

ところで…

以前の記事でもお伝えしましたが、

呼吸に合わせて肋骨は膨らんだりしぼんだりを繰り返しているため、そもそも胸郭は四六時中動いています。

toratezza0316.hatenablog.com

 

運動時や緊張したときなど、身体が戦闘態勢のときはより酸素を必要とするので、通常より多く胸郭を動かして肺を広げることで酸素を取り入れることができます。

その時働くのが呼吸補助筋です。

 

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呼吸補助筋は胸郭出口(赤線)の周囲に多い

 

この呼吸補助筋は、

安静時のメインの呼吸筋である横隔膜肋間筋を必要に応じてサポートしますが、

あくまでも「補助」筋なので、いつもは適度に休んでいます。

 

が、

高齢者や病院で出会う患者の多くは「頑張って動く」傾向にあり、いわゆる努力性呼吸が常態化している人にしょっちゅう遭遇します。

 

自由診療をするようになってからというもの、

「呼吸が下手で、胸郭の動きが感じ取れない健常者」

がとても多いことに気が付きました。

 

現代社会はデスクワークやスマホ依存、運動不足があいまって、

最も基本的な運動である「呼吸」が下手な人がかなり増えました。

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気を付けていないと体が丸まっていくような刺激が多く、胸郭は常に縮まった状態が続きます。

 

前胸部が潰れ肋骨同士を滑りにくくさせ、

結果的に肺が膨らまない状態になります。

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呼吸補助筋は、滑りにくい肋骨を首や肩の方へ引っ張り上げようと頑張り、徐々に硬くなっていきます。

 

全ての人がそうだとは言い切れませんが、そのような人の特徴として

・巻き肩

・背中に手が届きにくい

・肘が体の中心を超えない

・仰向けになると肩が浮く

・首がやたらと筋張っている

・肩を外へ開く動き(外転/外旋)が苦手

・胸郭が楕円形でなく筒状

・鎖骨の周囲を軽く押さえると異常に痛がる

・右のお尻の真上に左肩を乗せられない

 

など…

細かい解説はここではしませんが、共通することは胸郭と肩・頚の動きに余裕がなくなり可動域が狭まるということです。

 

 

 

胸郭出口の問題を鑑別する

 

さて、

そんなハイリスクな胸郭出口の問題、さすがに子供にはそこまで関係ないだろう、と思っていたらそんなことはなかった、という話。

 

先日、小学二年生の男の子を診せていただく機会がありました。

空手歴1年、細身で大人しく、人の話をよく聴いてくれる。

が、

足腰がふらつきやすいということをお母さんは仰っていました。

そうは言ってもまだ小学二年生ですから、そんなに身体はできていません。

 

もっと重要な問題はないかと観察していると、

・突きがやたらとフラフラしている

・身体が硬く動きがギクシャクしている

・ロングブレスが苦手

・仰向けに寝転ぶと肩が浮いている

 

胸郭出口の「肋鎖間隙」を触り、圧をかけるとかなり痛がります。

 

え・・・この歳で?

 

空手の技は瞬発力がものを言います。

きれいな形で動くにはそれなりの体軸の安定が必要ですが、小さい子にそこまで求めることは難しく、形を合わせにいくために突きや蹴りを出す度に「かなり力む」子もいます。

 

そのように胸郭を引き締めて固める習慣がついているのだとしたら、

目の前の技に必死になることで呼吸筋や補助筋の柔軟性が犠牲になり、骨関節の動きはもちろん「成長」を妨げかねないことは本末転倒です。

 

そこで、

お母さんにもこの問題を共有していただくために一緒に触ってもらい、お子さんの胸郭の動きを引き出すためのストレッチを習慣化してもらうことにしました。

 

つまり、

固めすぎている胸郭をリセットし、深い呼吸ができ肋骨や鎖骨を動きやすくして少ない力で肩を動かす(突きを出せるようになる)ことが、身体の成長につながる

そのようなコンセプトでこれからの練習に取り組んでいただくよう指導させてもらいました。

 

その後の様子については、またお会いする機会があればと思います。

 

 

 

まとめ

 

今日は久しぶりに上半身の話ができました。

高齢者や明らかな診断名のついた人だけではなく、ライフスタイルによってどの年代でも起こりやすい胸郭出口のトラブルについてフワっと解説してみましたがいかがでしょうか。

 

大人も子供も、今のご時世マジでストレスの温床です。

自分も決してストレスフリーではなく、常にプレッシャーとの闘いです(週末は)。

 

それでも、

信頼してくれる人のために貢献することが自分の役割です。

できるだけ楽しい気持ちで、悲しいことがあってもそれは心に締まって、これからも少しづつ発信していきますね。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。