流れない時間の中を

 34日間の出張から夫が帰ってきた。お盆休みを共にし、一昨日から通常営業となった我が家。5時目覚ましで夫のお弁当を詰め、朝茶とシェーバーを枕元へ届け、朝食のバナナヨーグルトドリンクを作り、着替えの肌着を並べる、そんな慌しさが嬉しい。

 夫不在のこの夏はずっと掴みどころのないものと闘っていたかのようだった。

 夫婦二人暮らしの専業主婦がひとりで・・・猫がいるので旅行は無理だが・・・何時に起き、何を食べ、何をして過ごしても自由。贅沢に聞こえるが、実のところ戸惑った。どうしていいか分からないのだもの。

 自堕落になるのは怖くて、初日に台所家電を磨いてみたら、清々しかった。すると、翌日も次の日も何かしないといけないような気になって、今日は何をしようか、家の中が片付いていたら夫は喜ぶだろうかとそのことを励みに、半ば強迫観念に囚われて、普段手をつけない場所へ屈み込んだ。

 草ぼうぼう枝ぼうぼうの庭で毎日汗だく、手も足も得体の知れない虫刺され湿疹だらけになり、痒み止めが手放せなかった。蜂の巣とも格闘した。

 夫に懐いていた猫が予想通り情緒不安定になり、夜中に何度も私を起こす。1時間おきにスキンシップを求め、庭へ出入りするので、ほとんど眠れないまま朝を迎える。

 暴飲暴食しないよう、この機に挑んだ糖質制限生活はちょうど良かったが、毎日毎日豆腐と豆乳とチーズとサラダチキンだけを食べた。

 かえって自分を律し続ける日々、家の中は時間が止まったよう。

 意外だったのは、その存在をどちらかというと否定的に思っていた携帯電話の恩恵にあずかったこと。関東と関西、離れ離れでも、おはように始まり、夫がこまめにくれるラインでどんな様子かを知ることが出来、家で普段テレビを見ながら交わすような話もし、団欒の時を得た。

 ありがたくはない、二度とごめんだが、こんなことでもないと見えない光景も。いい夏だと言おう。

 

  ♪ 近頃好きな某CM、コビトの草刈正雄さんが朝の枕元で『雨ニモマケズ』を朗読。

  ♪ 私も真似してみました(体サイズは元のまま) よろしければ全文どうぞ ♪

  雨ニモマケズ - よろしゅうおあがり - Radiotalk(ラジオトーク)