(重税の殿堂東京国税局ビル(中央区築地)納税者の目につく地元の税務署だけはショボい建物にするあたりおカミもやることがあざとい)
スマホに不在着信が2件あった。いずれも杉並で最も律儀な税理士として評判の小野寺誠先生からだ。
(ホンモノはもっともっと律儀そうな感じ 小野寺誠税理士事務所HPより)
小野寺センセイには、
5年前 父の死去に伴う相続税の申告、
3年前 母の(同上)、
昨 年 土地の売却に伴う不動産譲渡所得税の申告
とこれまでに3回お世話になっている。
先生の方から電話が来るというのはいい話ではないだろう。
折り返してみると案の定税務署から土地売却の件で照会が来たとのこと。税務調査でなく現段階では「任意の事情聴取」といったところらしい。
税理士経由で各種納税申告をした場合、税務署は納税者本人でなく代理人たる税理士にアクセスしてくる。
「連中何ほざいてるんですか?」
「電話では何も言わないのでとにかく明日行ってきます。ところで亡くなられたお父上は売却した杉並の土地を買う際に『買い替え特例』を使ってませんかね」
「いや分かりません」
「もし使っていると結構大変かもしれません」
「ギョギョ」
土地の売却に伴う譲渡所得税の仕組みをおさらいしておこう。
細かいことを抜きにしてざっくりいえば税金は以下の算式で計算される(詳細は不動産会社各社のHP、国税庁のHP等で確認してください)。
土地譲渡所得税額 =(土地の売却額ー取得額ー3000万円)×20%
例えば20年前に3000万円で買った宅地を7000万円で売ったとしよう(注:あくまで例示で私の売買とは無関係)。この場合は、
7000-3000-3000=1000万円、その20%だから200万円の税額①となるわけだ。
ところが「取得時の売買契約書がない(=私)」、「先祖伝来の土地で取得額なんて存在しない」といった場合は「売却額の5%を取得額とみなす」というルールがあるので、
7000-350-3000=3650万円となるから税額は730万円②となってしまう。
譲渡所得税にはもうひとつ特例がある。
「マイホームの買い替え特例」といわれるもので、土地を売って新たにマイホーム用の土地を買い替えた際に「特例」を選択すると、税金が繰り延べされてとりあえずは税負担がなくなるというものだ。
ただしこれは税が繰り延べられるだけで無税になるわけではないから使わないにこしたことはない。
子々孫々にわたって未来永劫新たな土地に住むならいざしらず、いずれ相続時に兄弟でその土地を売ってカネを分配するようなことになれば上記の税金を支払わねばならない。
しかもその際には3000万円の特別控除が適用されないので、子供たちが支払う税金は800万円③(売買契約書がある場合)または1330万円④(売買契約書がない場合)となる。
生来の粗忽者の私は亡母が施設に入居した際の荷物整理で亡父が土地を買った時の売買契約書など古文書の類は全て捨ててしまった(アホ)。
だってしょうがないじゃない、税金なんて知らなかったから~
(いつもお世話になってます)
その時救いの手を差し伸べてくれたのが天狗のおじちゃん、じゃなくて小野寺センセイである。
「国税庁の通達やらなんやらを調べてみても『取得額の証明には売買契約書が必須』とは明記されてないんです」
「ってことは・・・」
「お父上が土地を購入された額が合理的に推定できればそれが取得額として認められる可能性があります」
「やった~。がんばれおじちゃん!」
契約書がないケースでの税金支払い(上記税額②のケース)を覚悟していた私にセンセイはなんとか税額①になるよう当時の路線価やらを調べ、税理士意見としてそれを添付して申告してくださったのだ。
「ことによるとセンセイの高邁かつ崇高、淫靡な理論が彼奴らには理解できなかったんですかね~(←その場合税額は②相当になる」
「もっと深刻なのはお父上が『買い替え特例』を使っていた場合です。その時は交渉の余地が全くありませんから」
亡父が杉並の土地の前に住んでいた練馬区の土地を購入したのは1963年のこと。
「もうすぐ地下鉄が通るから」と楽しみにしていた亡父だがとうとう地下鉄で通勤することはなかったという辺鄙な土地だからそんなに高いものではなかっただろう。
仮に練馬の土地取得価格が1000万円だとすると、税額は今回の土地の売却額と練馬の土地の取得額に基づいて計算されることになり、事例にあてはめると税額は、
(7000ー1000)×20%の1200万円にはねあがることになる(注:この場合税務署の手元に練馬の土地の契約書があるわけだから「5%ルール」は適用されない)。
う~む。
幸せになるには多くの努力と時間が必要だが、不幸はいとも簡単にやってくる。高いサックスを買ったり、お調子にのっているからこういう目に会うのだ。
今の私にできることはアルトサックスでプ~スカ冴えない音を出しながらセンセイからの連絡をひたすら待つだけだ。
(もっと巨悪を追及しろっての)