(「うなぎ馳走八嶋」梅ランチのうな丼)
「八ヶ岳南麓三大鰻屋」といえば、「井筒屋」(小淵沢)、「森のやまびこ」(大泉)、そして韮崎にある「うなぎ馳走八嶋」であろう(韮崎を「八ヶ岳南麓」に混ぜると韮崎市民の皆さんは怒るかもしれないが)。
「八嶋は関東風の鰻だそうですが、実際のところどうなんでしょう」
囲碁トモのAさんに質したところ、Aさんも過去何度かトライしたもののいろいろなアクシデントが重なってまだ召し上がっていない由。ではさっそく実地検分してみましょう、ということで店を訪れた。
「関東風と関西風、どっちの蒲焼きが美味いのか」
このドングリの背比べはいかにも島国らしい議論で、世界の鰻文化は遥か斜め上をいっている。
大昔に見た「ブリキの太鼓」というドイツ映画に鰻料理のシーンが出てきた。
主人公の父親が浜辺に馬の首を抛りこんでおき、翌朝首の中に潜り込んだウナギを捕らえてブツ切りにしてスープのようなシチューのようなものをこさえるのである。
話は脱線するが「馬の首」はキリスト教圏では何らかの寓意があるのだろうか。「ゴッドファーザーパート1」の冒頭でも馬の首を使った印象的なシーンがあった。
(「ブリキの太鼓」 1979ドイツ 原作ノーベル文学賞作家ギュンター・グラス(1959)
「3歳になったらオモチャの太鼓を買ってあげる」という両親の言葉をきっかけに主人公オスカルは3歳になった日に自らの意志で成長を止めてしまう。オスカルが代わりに身につけた不思議な能力は・・・)
この映画に見られるようにどうやら北欧では鰻料理といえばウナギをブツ切りにして煮込んだものが主流らしい。
(「アールズッペ」ドイツ北部の伝統料理 「アール」はたぶん eel だろう ブツ切りウナギを果物と一緒に(オエ)煮込んだりするらしい)
英国にも鰻文化がある。
連中は「ウナギのゼリー寄せ」という摩訶不思議な料理を食うという。しかもこれどっちかというとデザートの仲間だというから、さすが「メシマズの国」英国の面目躍如である。
(見るからに不味そうな色合い 生臭さを柑橘系フルーツで緩和しているのだろう)
一方「食の国」イタリアには我が国とそれほど違わない鰻文化が根づいているらしい。
(アドリア海沿いの小都市コマッキオの調理シーン 蒲焼き風のものをこさえるあたりさすがイタリア人はわかってらっしゃる travel.jp様の記事より)
(うなぎパイならぬ「うなぎクッキー」もある 同上)
スペイン、ポルトガルでは「シラスウナギのアヒージョ」が有名だ。
概していえばプロテスタント諸国では食に対して禁欲的、カトリック圏では神の恵みを大いに楽しんでいる、といったところだろう。
米国大陸には固有の鰻文化というものは存在しないらしい。ナマズなんかと十把一からげにフライにしちゃうのだろう。
(鰻フライ これは世界中で見られる淡水魚の典型的な食い方)
我々が注文したのは「梅ランチ」。鰻一切れの丼に前菜がついて2500円(税別)なり。
どんぶり単品だと1900円だが客席も多く出来上がりまでだいぶ待たされるので、つなぎとしてランチセットにした方がよさそうだ。
(前菜はこのほかに揚げたてのさつま揚げがつく)
意外と早く、待つこと20分ほどで蒲焼きがやってきた。
旨い。焼きたての香ばしい蒲焼きの旨いことといったら。
外国人が日本の鰻の蒲焼きを口にしてそのあまりの旨さに感動する、というのがよく分かる。
コロナが収まり、また世界中の人々に本当に旨い鰻を楽しんでもらえる日が早く来て欲しいものだ。