武田鉄矢が本格格闘アクションを見せる人気刑事アクションシリーズ第3弾。

青森から長崎県は五島列島福江市の五島中央署へ異動となった片山元。のどかで平和な街中でたまのパチンコなどですっからかんになりながらも勤務に勤しんでいた彼は、パチンコ帰りに自殺しようとしていた女性を助けようとしたがそれがオカマで迫られて反対にビルから落下してしまう。

そんなトラブルメーカー的な彼は署長からデスクワーク勤務を命じられてしまう。
給料日前10日前にして金欠の片山は怒られついでに署長から借金を無心するが、あっけなく玉砕。仕方なくなけなしの満期間近だった定期預金を解約しに郵便局へやってきた片山だったがそこで郵便局強盗に遭遇してしまう。

なけなしの金を奪われそうになり怒り心頭の片山は強盗犯に蟷螂拳で対抗し、追撃の末にこれを逮捕するのだが自身も負傷して入院を余儀なくされてしまう。

数日後。
ようやく退院し、復活した片山は課長から東京警視庁からやってくる刑事たちの道案内役という任務を言い渡される。別手当てで貰える出張手当に目が眩み引き受けた彼は、派手な上り旗で彼らを迎えようとするが、彼らはとある極秘捜査で来ており、またしても片山はドジを踏んでしまうのだった。

警視庁の村上率いる面々は、東京での暴力団組長射殺事件の犯人仁科を追っており、彼が帰ってくる可能性のある彼の母親が住んでいるという島へと渡り、母親が経営している『バー玉江』を見張ることに。
片山は捜査の手伝いとして加わると、仁科の境遇について説明をうける。
組長を射殺した仁科は現在も逃亡中で、彼の行方を警察だけでなく、暴力団やサラ金グループらも追っていた。

片山はより仁科の情報を探るために若手の木崎刑事と共に客として店内に入り、バーのママである玉江と接触を図る。
その頃村上のもとには警視庁より仁科が北海道に逃げていたという情報がもたらされる。
村上は木崎を残して、北海道へのとんぼ返りで戻ってしまう。

その頃酔いつぶれていた二人は玉江に起こされるが、木崎の凡ミスにより自分達が刑事であることがバレてしまう。
片山の必死の説特によって玉江は息子のことを話しだし、片山は酒に酔った玉江を介抱するのだが、そこで玄関先に何者かの気配を感じる。

ドアを開けると必死に逃げる人影を見つけた片山はそれを追いかけるのだが、途中でライダースーツにホッケー仮面を被った殺し屋に立ち塞がられる。
相対した片山はこれと戦うのだが、敵は強く、片山は格闘戦の末にボコボコにされて敗北してしまうのだった。

仁科の母玉江から息子の嫁と娘がいることを聞いた片山は、木崎と共に彼女らが住んでいるという黒江町黒瀬郷へと渡り、彼女が経営するという民宿『海っ子』への張り込みを始める。

張り込みを始めてから数日。
浜辺で子供相手にフラフープを使ったカンフーを見せていた片山は子どもたちの助けを求める声を聴き、埠頭の方へ。
そこで浮かんでいる子供を助けようと海へ飛び込む片山であったが、子供は海老を取っていただけで、膝までの水深しかなく、豪快に腹打ちした片山は怪我して倒れてしまう。

気絶していた彼を助け、介抱したのは他でもない仁科の妻である清子であった。
民宿の部屋に運ばれ、目が覚めた片山が見たものは宿泊客へと夕飯準備であくせく働く清子と彼女の娘海子と友人たち。
海子の強引な誘いもあって、助けられた恩義として片山はしばらく住み込みで彼女たちの手伝いをすることを決意する。

清子に思いを寄せている男の介抱やその父親から清子への理不尽な偏見発言に思わず自分が彼女を守る的な発言をしてしまうなど自分達を守ろうとする片山の姿に次第に清子もそして海子も好意的な感情を持ち始めるなか、清子は海子が就職のための履歴書の家族欄に父親の名前だけが空いているのを見つけ、複雑な思いを浮かべるのだった。

そんなある日、民宿に東龍会のヤクザたちが乗り込んでくる。
彼らは組長を殺害した仁科がこの島に渡っていることを嗅ぎ付け、接触するであろう清子の民宿を襲ってきたのである。
暴れまわるなかで騒動をききつけた片山がヤクザたちと壮絶な決闘を繰り広げ、青息吐息になりながらもこれを撃退。しかし、その騒ぎの中で海子は仁科が自分の父親でしかも殺人犯で逃亡中ということを知ってしまう。

問い詰める海子に無言の清子。そして騒ぎを聞き付けて片山を誤認逮捕しかけた警察官を説得するためにやってきた木崎によって、片山が仁科を追っていた刑事だったことも知ってしまう。

一時は自分の父親にと思うほど慕っていた片山が刑事と知り、ショックで戸惑う海子。
そして正体の知れてしまった片山は静かに去ろうとするが、そこに清子を訪ねて仁科がやってくる。

真相を話すため二人で会いたいという仁科の言葉で、清子は島の離れに岸壁の方へと向かう。
そして清子の様子に気づいた片山もその後を追うのだが、そこには仁科の命を狙うあの殺し屋が潜んでいた。

二人が再会を果たすなかで、片山は二人を守るため一度は敗北を喫した因縁の敵を相手に再度一騎討ちに挑む。

果たして決闘の行方は?
そして片山と仁科と清子、海子ら家族に待つ結末は…


個性派俳優、武田鉄矢の代表作でもある刑事アクションシリーズの第3弾。

海援隊のボーカリストだけでなく、俳優としてもテレビドラマの金八先生で確固たる評価を得た武田鉄矢がジャッキー・チェンに触発されてアクション俳優として本格チャレンジした『刑事物語』シリーズ。

『片山蒼』というペンネームで自ら原作・脚本を書き、当時アクション俳優の代表格であった千葉真一らに見劣りすることがないよう本格的な蟷螂拳の指導者に弟子入りして習得したという武田鉄矢の本シリーズにおける意気込みというのは並々ならぬものであった。

公開当初こそ評論家たちの批評の的であったもののしっかりとしたドラマ性と武田鉄矢を応援するため集まった豪華すぎる共演陣、そして何よりハンガーヌンチャクをはじめとするアイデアと意外にしっかりした格闘アクションは評判をよび、ヒット。
そして続編となる『りんごの詩』では東宝映画における全世代がみたい作品の上位となり公開年における興行収入第一位になるなど更なる期待が高まるところとなった。

その経緯を経て製作されたのが第3弾となる本作である。

前二作と比べるストーリー展開は想いを寄せるヒロインが不幸だったり、主人公と恋仲になるヒロインが死んだりと結構シリアスで陰惨だったものからかなりライトな感じになっており、主人公片山の恋物語もそう深くは描かれていない。

そもそもが今回のヒロインは往年の美人女優の星由里子なのだが、前作『りんごの詩』の後半のプロットを女親子に変えただけであり、展開も片山の恋よりも親子ドラマの属性が強いため、非モテ男の奮闘が泣けるシーンに繋がっていた前作までのドラマ性のラインはほとんど感じられなくなっている。

一応は今回のドラマ性の軸となるのは片山が見せる父性で、片山の恋は二の次。
片親である微妙な年頃の娘が自分の父親にと思うことへの葛藤がみそといえる。
そのためか、前二作までの片山の報われなさと悲愴感からくる号泣ドラマ性は薄れている。

そのドラマ性にかわって作品のエンタメ性が強化されており、より誇張されたコミカルさとアクションが増やされた。

これまでも人のいい片山のドジぶりをコミカルさのメインにしていたが、本作からさらにポンコツぶりが追加。
とにかくよくつまづいて転ぶし、細かく笑いを取ろうとする貪欲さが目立ち始めている。
これはエンタメ性強化の志向からして、とにかくコントのように分かりやすいボケをということだろう。

そしてアクション面においてはかなりジャッキー作品を意識したものとなっている。
実は本作で武田鉄矢は尊敬するジャッキーとの共演を熱望していたが折り合わず、仕方なく断念した経緯があった。
そんなジャッキー好きな武田は格闘シーンにおいても拘りをみせている。

冒頭でのビル落下シーンはカメラワークからして『プロジェクトA』の時計台落下の名シーンだし、クライマックスの岸壁沿いの野原での強敵との一騎討ちシーンは『ヤングマスター師弟出馬』の対ウォン・インシク戦を意識したものとなっている。
よく見るとやられながら中座して水飲んで冷却スプレーふるというのはあの対決シーンの間までも意識したマニアックな拘りといってもいいだろう。

さらによりアクションにもバリエーションをということでハンガーヌンチャクに続く新たな武器ミニフラフープが登場。
ハンガーとは違う小気味いい使いこなしでマンネリ打破も狙った感じ。
武田自身も今回は飛び蹴りや旋風脚の連続などなかなかアクロバティックな技を見せていて、アクションへの本腰具合が見て取れる。

こうしたエンタメ性を強めた本作であるが、やはり一番の注目は本作でヒロインデビューを飾った沢口靖子の存在。
長澤まさみらも輩出した由緒ある『東宝シンデレラ』における第一回グランプリが彼女なのだが、そのデビュー作品を飾ったのが本作。

天性の美貌もだが、ここに初々しさある可愛さもあって正ヒロインである星由里子すらも霞むような眩さすら感じさせる。
さらに本作では挿入歌も担当しているのだが、これはなかなか破壊力のある音程で、後に歌手活動からは遠のいたというのも納得である。
今でもアラ還ながら変わらぬ美貌をほこっている沢口靖子だが、ここで見せている可愛すぎる魅力は何より必見である。


続編が進むにつれてより娯楽作品らしさに舵を切った本シリーズ。
泣かせるドラマ性こそ薄れてしまったが、より武田鉄矢の面白さは増しただろう。
肩のちからの抜けた感じで楽しめる作品として、今後の続編への期待値も高まっていくことだろう

評価…★★★★
(武田鉄矢のジャッキー愛がすごーくわかる作品(笑))


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