アクション界に『パルクール』を浸透させた人気クライムアクションの続編。

パリの一角、高い壁に囲まれた無法地帯『バンリュー13区』。捜査官ダミアンとバンリュー13区の住人レイトの活躍によってパリ全土を標的にしたミサイル強奪事件は解決され、政府主導のもとバンリュー13区は生まれ変わることを約束された…はずだった。

三年後。かつての約束は反故にされ、バンリュー13区はさらにスラム化。人種のるつぼと化した区内は人種によってギャングたちが活動エリアを統治し、その危険性は増していった。
レイトは一人壁を無くすため日々、パリの警察に追われながらも区とパリを隔てる壁を爆破して無くす活動を続けていた。

ダミアンもまたパリに巣くう犯罪組織の撲滅のため危険な潜入捜査をする毎日を送っていた。

そんなある夜。
郊外でナンパをしていた13区のサミールたちはナンパ相手の女性の車を職務質問中の警察官を警察が射殺するという場面に遭遇。その一部始終を動画で撮影する。

射殺された警官は警察車両ごと13区の入り口に捨て置かれ、潜んでいた警察の銃声に驚いた見張りたちは車両に向けて一斉射撃を始める。
レイトはその不審な車両をスコープで目撃しており、そのナンバーには『DISS』と付けられていた。
DISSは彼らが一斉射撃する様を動画にとり、彼らが射殺したように編集する。

翌朝。麻薬売買グループを摘発し恋人と休んでいたダミアンはDISSの息のかかった警察によって麻薬所持の現行犯で逮捕されてしまう。
何者かによって罠にはめられたと気づいたダミアンは護送中に看守から携帯電話を奪って、レイトに助けを求める。

一方ニュースでは13区の人間が警察車両に一斉射撃を加える動画が繰り返し伝えられていた。騒動が各地で広がるなか、事態の収拾に大統領はDISSの局長であるガスマンを任命する。
ガスマンは将軍と組んで13区の住民を強制的に移住させて無人化し、犯罪の温床である5棟のビルを爆破、破壊してその跡地に企業を誘致して雇用を創出するという案を大統領に提案する。

そのあまりに過激な案に渋る大統領であったが、暗黙で計画は遂行されていく。

その頃町外で買い物をしていたレイトはサミールから警察官射殺事件の真相となったSDカードを託される。
家に戻ったレイトはダミアンからの留守電を聴きながらカードの映像を確認するとそこには昨夜見たDISSの車が。レイトはニュースの警察官殺害事件がでっち上げであることを確信する。

しかしDISSの魔の手はすぐそこまで迫っていた。レイトはDISSの刺客を巧みな身体能力でかわし、ダミアンが収監されている留置所を目指す。
看守から鍵を奪い取ったレイトはダミアンを救出。そこで今回の警官射殺事件がDISSによる陰謀であるとダミアンに告げる。

ダミアンはかつて局長のガスマンからDISSへの勧誘があったがそれを断っており、自分を排除するためガスマンが画策したものであると勘づくのだった。

脱出を図る二人はガスマンの陰謀の決定的証拠を手に入れるためダミアンがDISSの一味と戦って注意を引く間にレイトに局長室から証拠を探させる。
機転を利かせガスマンのパソコンのHDDを奪ったレイトはダミアンと共に13区へと逃げ込む。

二人は諜報能力に長けたチャイニーズギャングの首領タオを訪ね、膨大な情報からガスマンの13区壊滅計画に関わるものを手に入れ、13区を守るためにタオらに結束を求める。
二人の提案に乗ったタオは他のギャングの頭たちを集め、13区をガスマンから守るための同盟を持ちかけ、結束を固める。
しかしその間にもガスマンによる13区破壊計画は進行し、ビルの屋上には爆撃ポイントが設置されていた。
ダミアンは計画を阻止するため大統領司令部に各ギャングの精鋭たちを集めて乗り込む作戦を遂行する。

官邸ではガスマンが大統領に爆撃の開始を急かすも住民全員の退避が完了するまでは決行しないとして大統領は避難完了の報告まで待つことに。

そのとき官邸にダミアンたちが乱入。構えるDISSや軍の兵士たちを薙ぎ倒し、大統領司令部へと辿り着くと、一連の計画が全てガスマンの野望によるものである証拠を大統領に提示する。錯乱したガスマンは大統領を人質にとり爆撃のスイッチを押すように迫る。
果たしてダミアンたちはガスマンの野望を砕き、13区の破壊を阻止することができるのか…

超人的身体能力でアクション界に革命を起こしたパルクールクライムアクションのヒット作の続編。

本作の主演も務めるダヴィット・ベルが創始したエクストリームスポーツである『パルクール』。現在ではアクション界でも広く取り入れられドニー・イェンらが作品で活用するなどアクション作品のレベル向上を担っているが、これをいち早く見つけたのが本作の監督も務めているリュック・ベッソンである。

『ヤマカシ』で初めて紹介されたパルクールはその危険さと華麗さで瞬く間に話題となり、これを活かした本格的なアクション作品として作られたのが『アルティメット』シリーズであった。
本格的な格闘アクションとの融合はもう一人の主演であるシリル・ラファエリの功績で、このパルクールと格闘アクションの化学反応は後のアクション作品に大きな影響力を与えている。

そんな二人が再び主演を務めた続編は前作よりもさらにバディ感が増し、アクションと同じようにストーリー展開もテンポ良く進んでいる。
前作は中盤まではクライムアクションとしては間延びする部分もあったが、今回は登場人物こそ増えたものの極力それぞれを掘り下げるような描写はせず、分かりやすい見せ場だけを提供している。

例えば前回は13区を牛耳るギャングの大ボスがいたが、今回は人種によってギャングたちが分かれており、それぞれにインパクトあるボスが君臨する。
クライマックスでは人種の壁を越えて団結し巨悪に立ち向かう胸アツな展開なのだが、ここで各々が目立ちすぎないのが面白い。
唯一、マーシャルアーツに特化しているチャイニーズギャングのボス、タオ役のエロディ・ユンは鮮やかな格闘シーンの見せ場が設けてはあるが(^^;

ダヴィット・ベルとシリル・ラファエリもそれぞれに持ち味を活かしたアクションシーンがあり、前半戦でみせるベルの超絶技巧のパルクールアクションは圧巻。
そして同じく麻薬組織や中盤のDISSメンバーとの戦いでみせるシリル・ラファエリの卓越したハイスピード格闘アクションは女装も含めて見応え十分。

惜しむらくは二人が同時にみせるアクションの見せ場が減っているくらいだろうか。
更にいうと今回は格闘に秀でた敵がいないため、二人の無双ぶりが際立ちすぎるという弊害はある。

前作ほどのインパクトには及ばないものの作品としての完成度はこちらの方が上かも。
ストーリー展開のテンポやアクションの速さ、いい意味でのリュック・ベッソンのこだわり強さが薄れているので単純にスゴいアクション映画が見たいという人にはオススメである。

評価…★★★★
(作品としての娯楽度は増しているも二人のアクションの濃さは少しだけ薄まってるか?)

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