自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?症状や特徴、子どもとも接し方の注意点

※この記事は約8分で読めます。

こんにちは、四谷学院の生田です。

「自閉症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
自閉症は、正式には自閉症スペクトラム障害(ASD)と呼ばれ、発達障害の1つとして知られています。

今回の記事では、自閉症スペクトラム障害について、その症状や特徴、そして子どもとの接し方の注意点を解説していきます。
※以降、「自閉症スペクトラム障害」については「自閉症」の表記を用いております。

自閉症の特徴

自閉症には、以下のような特徴があると言われています。

1. 言葉の発達の遅れ
2. 対人関係・社会性の障害
3. パターン化した行動、こだわり

1つずつ解説していきます。

1.言葉の発達の遅れ

言葉の理解や発語に遅れがみられることがあります。「言語発達遅滞」とも言われ、言葉を理解できない、理解はできているが話さない、発音が不明瞭など、その症状は様々です。また、言葉の発達に遅れはないものの、独特な言いまわしをする子どももいます。

2.対人関係・社会性の障害

他者への関心が薄く、対人関係を築くことや人の気持ちを理解することが苦手な傾向が見られます。また、表情が少なかったり、人と目を合わせなかったりするので、大人からすると「何を考えているか分からない」ように見えることもあります。

3.パターン化した行動・こだわり

特定の物事に強いこだわりを持ちやすい傾向があります。いつも同じ行動・手順でものごと進めたり、何度も同じ行動をする(反復行動といいます)ことがあります。要求が通らなかった場合、かんしゃくやパニックを起こす子どももいます。

このような障害特性は非常に様々な形であらわれますが、多くは3歳頃までに何らかの症状がみられるとされます。

自閉症のお子様によくみられる行動事例・リスト

具体的な行動事例については以下のようなものが挙げられます。

  • 視線が合わない、目を合わせようとしない
  • 表情が乏しい又は不自然
  • 相手の気持ちを読み取りにくい
  • 場の状況や雰囲気がつかみにくい
  • 名前など呼びかけても反応しない
  • 要求を言葉でせず、大人の手を引っ張るなどして示す
  • 言葉の意味を理解するのが難しい
  • オウム返し(反響言語)がみられる
  • 手をひらひらしたり、体を常に揺らしている
  • 同じ場所を行ったり来たりする
  • 手順や道順等に固執する
  • 回転するものをずっと見ている
  • おもちゃなどを一列にひたすら並べる

自閉症の二次障害

自閉症の子どもは、一生懸命に努力しても失敗を繰り返してしまったり、練習をしても思うように上達しなかったりすることがあります。そうした経験を繰り返すことで、自信を失ってしまう子どもも少なくありません。

障害に気づかない、あるいは気づいていても適切な支援を受けることができないと、次のような「二次障害」にいたる場合もあります。

二次障害の例
・不登校や引きこもり
・頭痛や腹痛、食欲不振、不眠などの身体症状
・不安や鬱、緊張、感情の不安定さなど精神症状

二次障害をできる限り生じないようにするためには、周囲の理解や適切な支援をすることが欠かせません。

自閉症の子どもとへの対応方法

ここからは、自閉症の子どもの抱える生きづらさを軽減し、子ども自身の能力を発揮できるような支援法について考えていきます。

療育とは

現在、自閉症の子どもに行われている支援の中で、最も一般的なものが「療育」です。

「療育」とは、医療や専門的な教育機関と連携して、食事や着替え、トイレなどの生活スキル(ライフスキル)、運動、認知、言語、数概念、ソーシャルスキルなどについて必要なトレーニングを施していくことをいいます。医療「療」と教育の「育」と考えるとわかりやすいでしょう。

自閉症を含み、発達障害の子どもたちは、脳の発達の仕方が定型発達の子どもたちとは異なる部分があるために、日々の生活に困難さを感じることがあります。

療育の目的は、そうした特性による生きにくさを改善し、社会自立やより制約の少ない生活ができるようになることです。

ただし、発達障害は病気ではありません。一般的な病気のように薬を飲んだり手術をしたりして治療するというアプローチとは異なり、医療・教育と言った側面から適切なトレーニングを受ける中で、さまざまなスキルを獲得することを目指します。

また、幼児期は身近な人や周囲の物との関わりを深め、興味の対象を広げ始める時期とされているため、できるだけ早くに療育を始めることで、その後の社会適応力が高まると言われています。

つまり、専門家による指導だけでなく、それに基づいた家庭での日々の療育が重要であるということです。

環境調整とは

さて、「療育」が子ども自身でトレーニングを積むものであるのに対して、子どもが過ごしやすいように周囲の環境を整える「環境調整」という対応方法があります。

分かりやすく言うと、療育が「子ども自身で壁を乗り越える力を養うこと」だとするならば、環境調整は、その壁を乗り越えやすくするために「足場を作ってあげたり、壁の高さを変えてあげたりすること」だと言えるでしょう。

たとえば、「パニックを起こしやすい」というお子さんであれば、次のような環境調整が考えられます。

・イレギュラーな予定は数週間前から予告をしておく
・発表会では子どもが信頼している先生に隣についてもらう
・落ち着ける場所(カームダウンスペース)を用意する など

このように、環境調整とは、子どもの身の回りの「人/もの/こと」のそれぞれを子どもに合わせて工夫することを指します。つまり、物理的な空間としての「環境」だけでなく、出来事や時間、声のかけ方、人間関係など、子どもを取り巻くものすべてが「環境」に含まれるということです。

自閉症の子どもとの接し方の注意点

ここからは、自閉症の子どもによく見られる4つのケースについて、具体的な対応方法をいくつかご紹介します。

(1)ことばでの指示が通りにくい(伝わりにくい)

自閉症の子どもに言葉で指示をしてもなかなか伝わらない場合があります。そのような場合には、以下の点に注意するとよいでしょう。

・一度に2つ以上の指示を出さない
・指示語(あれ/それ)はなるべく使わない
・絵カードを活用する
・注意を向けてから、ゆっくり、はっきり伝える など

(2)時間を守れない

時間感覚をもてない、他のことに夢中になって約束を忘れてしまう等の理由で時間が守れない場合は、見通しを持ちやすくするための工夫が有効なことがあります。

・タイマーを使って注意を促す
・予定表を見えるところに貼っておく
・「次の予定はなんだっけ?」と問いかける など

(3)集団活動が苦手

小学校入学後に増える「集団活動」。自閉症の子どもは集団での行動が苦手なことがあります。こうした子どもは友達とのトラブルも多い傾向にあるため、ソーシャルスキルを身につけながら、活動への配慮ができるといいでしょう。

・遊びの前にはロールプレイをして見本を見せる
・集団の中での役割を与える(やるべきことを明確にする)
・保護者や先生と「聞き役」「話し役」に分かれて会話の練習をする など

(4)感覚過敏がある

「感覚過敏」は、音、光、色、味、触覚などの刺激に対して、極度に強いストレスを感じることを言います。たとえば、小さい音でもうるさく感じたり、テレビなどの画面がまぶしく感じられたり、シャワーを浴びるのを嫌がったり、粘土遊びを拒否したりすることもあります。そのため、子どもの感覚を和らげられるような働きかけが有効です。

・イヤーマフなどのサポートツールを活用する
・粘土遊びでは小麦粉粘土や寒天粘土などサラサラした触り心地の粘土を使う
・直射日光のあたる窓際の席を避ける

逆に、感覚が鈍い「感覚鈍麻」の場合もあります。
【参照】敏感すぎてストレスに。感覚過敏と感覚統合

まとめ:自閉症児のためにできること

自閉症の子どもは、その障害特性ゆえに様々な配慮が必要となりますが、逆に言えば、適切な支援を行うことでできることが増えていくということでもあります。

子育てをしていると、どうしても「できないこと」ばかり気になってしまうものです。だからこそ、まずは「今、できること」から始めましょう。成功体験を積み重ねていく中で、子どもも自信を持てるようになり、より前向きに日々の活動やトレーニングに取り組めるようになるはずですよ。

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