その音に、恭介は近付こうとする。
すると…ホースを使う音がして、男性の姿が現れた。
「えっ?」
思わず声が漏れる。
「なんで?」
そこには…見覚えのある人物が立っていた。
「犬井さん…」
驚きのあまり、足元に気付かず、プランターにぶつかる。
ガチャン…
何かが倒れる音がして、あわててしゃがみ込むと…
その人はクルリと振り返った。
「やぁ。やっぱり、ここにいたんだね!」
だがその老人は、少しも驚いてはいなかった。
「なぜ?」
むしろ恭介の方が、狼狽している。
なぜなら…この人は、この不思議なホテルに、来る前日に会った人で、
現実世界の人だからだ。
自分以外に…ここに来た人が、いるんだ…
「なんで?」
思わずつぶやくと…
ハハハハハ…
大きな声で笑う。
「なんだ?その…幽霊を見るような顔は?」
思い切り笑い飛ばした。
自分が、おかしいのか?
犬井さんの反応に、さらに、恭介は驚きあまり、言葉が出ない。
確かに彼は、幻ではなく、ここにいる…
一瞬恭介は、自分が元の世界に戻ったのか、と考えていた。
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