「その子は、見かけなかったよ!
たぶん…ここじゃあないなぁ」
キッパリとそう言い切った。
(名前も、顏も知らないのに?)
何でそんな風に、自信満々なんだ?
裕太はどうしても、気にかかる。
だがその人は、まったく平然とした調子で、
「その子はきっと…誰かと一緒だな」
まるで見て来たような言い方で、キッパリと言う。
「どうして?」
思わず裕太は、口をはさむ。
もしかしたら、気付いていないだけなんじゃないの?
そう思うのに…
「いや」
やはり彼は、断定的に言う。
「どうして?」
「えっ、だから、何が?」
むしろ裕太の反応に、大げさに大きく手を広げる。
「どうして、そんな風にわかるの?」
裕太にしてみれば…わからないことだらけだ。
この人は、何者だ?
何で、ジュンペイを知っている?
どうしてそんなに、ハッキリと言えるんだ?
その目をヒタと、男に向ける。
「そんなの、少し考えたら、わかることだよ」
裕太の言うことに、笑いながらも適当に、ごまかしている。
(何者なんだ?)
この人の目的は、一体何なんだろう。
わからないことだらけだ…
(この人と一緒にいても、いいのだろうか?)
出来るだけ、かかわらないようにしよう…と裕太は心に決めた。
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