(なんなんだ、アイツ…)

 とんでもないことに、なったなぁ~と思うけれど、裕太も

わぁぁぁと叫びながら、元来た道を駆け抜ける。

おかしなことなのだが、夢中に駆け抜けていると、

なぜだか全身の血管に、血が駆け巡るようで、爽快な気分だ。

ちょっと、疲れるけれど。

 

「ライト!」

 ジュンペイが叫んでいる。

なに、と思ったけれど、すぐに、

(そうだ、目印だ)と気付く。

ようやく、さっきジュンペイが何をしていたのか、を思い出して、

渡されたライトのスイッチを押した。

そうして壁を照らし出した時…

あの時何をしていたのか、答えが見つかったような気がした。

 ゴツゴツとした岩肌のアチラコチラに、ポツポツと玉虫色の

印が浮かび上がる。

それは斜めだったり、横向きだったり、逆さまだったりしたけれど、

ひらがなの『し』のようにも見えたし、

アルファベットの『J』にも見えた。

 

「へぇ~」

 アイツ、やるじゃないかぁ~

この時ばかりは、裕太はジュンペイのことを、見直す気持ちになった。

とっさに、ここまで思いつくことはないぞ、と自分と引き比べると、

そう思う。

(ところで…追っ手の方は、どうなった?)

冷静に立ち戻ると、やはり気になって来る。

だが、耳を澄ませても、ジュンペイの走っている足音だけしか

聞こえない。

(やみくもに、戻ってきたけど…こんなことをして、本当に

 よかったのだろうか?)

ふと、裕太の中で、迷いが生じて来た。

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ノンジャンル小説へ