歌と故郷と思い出と          

石本美由起    


人それぞれの人生を    

描いて生きて 五十年    

残り火燃やす 今日の日の    

盃乾いて しみじみと    

幾歳月を 語ろうか    

歌と故郷と思い出と


昭和を代表する作詞家・石本美由起。

その生涯に作詞した作品は3500曲以上にも及び、作詞界の大御所的存在だった。


美空ひばり「港町十三番地」、「悲しい酒」、「人生一路」をはじめ、細川たかし「矢切の渡し」、岡晴夫「憧れのハワイ航路」、青木光一「柿の木坂の家」、五木ひろし「長良川艶歌」、中村美律子「河内おとこ節」など、多くの名曲を生み出した。


そんな石本は広島県大竹市の出身で生涯に亘り故郷を愛し続けた。


石本は幼少から喘息を患い、家に閉じこもるような生活を送っていたが、宮島や江田島など瀬戸内海を見渡せる風光明媚な場所に生家があったことから、病状も少しずつ和らいだと言われている。


大竹市内にある亀居公園は、戦国武将福島正則が広島城の支城として築いた亀居城址に整備された公園で、地元では桜の名所としても知られ、市民の憩いの場となっている。


この公園に「詩の坂道」なる遊歩道があり、石本美由起が生み出した名曲の歌詞が刻まれた歌碑を巡りながら散歩することができるという。


冒頭の詩が刻まれた歌碑もこの散歩道に設置されており、石本直筆の流麗な筆致が、彼の望郷の思いを今に伝えている。


病弱な文学少年だった石本が大竹の地より飛躍して日本を代表する作詞家となったのである。


広島生まれの私であるが、大竹に行ったことは一度もない。

岩国行きの列車で通過したことはあったが、山と海に囲まれた美しい瀬戸内の小都市と記憶している。


いつの日か彼の地を訪れて石本の歌碑をこの目で見てみたいものである。


評点

★★★☆☆