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子供の頃に出会った不思議な絵本

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皆さんはまた会いたいのに、どうしても会えないものってありますか?

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あの絵本との出会い

私が五、六歳くらいのときに体験したことで、私の母は本を読むことが好きでした。
よく一緒に図書館に通って、せっかく来るのだからと私にも絵本を借りてくれたのです。
初めの頃は母が選んだ絵本を母に読んでもらっていましたが、字が読めるようになると自分で絵本を選ぶようになりました。

いつものように図書館の絵本コーナーで借りる本を選んでいると、普段は自分の目線に一番近い棚を見るだけだったのですが、その日は一番下にある棚を眺めていました。
しゃがんでは次の棚、次の棚・・・と興味を引く絵本を探しているうちにコーナーの一番端の棚、そして、棚の一番隅にある絵本に目が留まったのです。

その本は背表紙に何も書いておらず真っ白なもので、手に取ってみると、表紙には赤い風船を持った髪の長い女の子とクマが描かれ、とてもかわいらしい絵柄だったので私は一目で気に入り、借りることにしました。

返さなければならない

それから毎日、暇さえあればずっとその絵本を読んでいました。
何度ページを開いても飽きることはなく、読む度にストーリーが変わっているように感じるほど夢中。

しかし、借りた本は返さなくてはなりません。
いよいよ返却期限となった日に私は「返したくない!」と泣き喚き、それでも無理やり母に連れ出され、図書館の返却コーナーの前に来てもなお、私は返すことを渋りました。
母の何度目かわからない「また借りればいいじゃない」の言葉を嫌々受け入れ、奥歯を噛みしめながら係員に絵本を手渡すのでした。

別の絵本を借りてはみたものの、先日借りたあの絵本に比べたらまったく面白くありません。
私は母に「明日返した絵本を借りに行く!」と喚き散らし、根負けした母に図書館に行く約束を取り付けました。

見つからない絵本

保育園の帰り道、約束通りに図書館に寄ってもらい、私はまっさきに絵本があった棚に向かいましたが、そこにあの絵本はありません。まったく同じ場所に置かれないこともあると思い、その周辺を探しましたが見つかりませんでした。

背表紙が真っ白い絵本などそうそうあるものではないので簡単に見つかると思ったのですが、他の棚などを見ても結果は変わりません。母にも探してもらいましたが見つからず、受付で訊いてみることにしました。

昨日あれだけ返却を渋ったこともあり、係員の方は私のことを覚えていたのです。
そして、返却した本をもう一度借りたいと言うと快く了承してくださり、絵本を探してくれました。
しばらく待っていると、借りた絵本をまとめて持って来てくださいました。

私はワクワクした気持ちをなんとか抑え込み、手渡された絵本をすぐに確認するのですが、しかし、そこには例の絵本はありません。
係員にそのことを伝えると「貸出履歴にあった絵本はすべて渡しましたよ」と言われたのです。

そんなはずはない?!

そんなはずはないと、私は必死にその絵本の特徴を伝えました。表紙の絵や絵本の内容、そして一番特徴的だった背表紙が真っ白であったこと。しかし、その係員は首を傾げて困惑の表情を浮かべています。
他の係員にも確認してくださいましたが、皆さん一様に「そんな絵本はない」と言うだけだったのです。

母も借りた冊数は覚えていたため、一冊足りないことは確かだと伝えましたが、貸出履歴には残っていないと言われるだけ。
万が一、図書館に所蔵されていない絵本を返却しようとすればすぐにわかるはず。しかし、昨日はそのようなことは言われませんでした。

私は抱きしめていた絵本を手渡し、バーコードを読み取ったことも覚えていて、間違いなく、あの絵本は昨日返却したはずなのですが、ないものはないので借りることはできません。

私は失意のどん底に突き落とされたまま、図書館をあとにし、私のあまりの落ち込み様に母は本屋で探してみようと言ってくれ、それから数件の本屋を回りましたが、結局見つかりませんでした。

ふたたび

そんな出来事から十年以上経ったある日のことです。私はテスト勉強のために図書館の自習室に来ていました。
しばらく勉強していたのですが、飽きてしまったので気分転換に読書をしようと本を探しに行くことに。

図書コーナーの入口近くの受付を通り過ぎようとしたところで、女の子と母親らしき人の言葉が耳に入りました。
「確かに昨日返却したはずなんです」
「赤い風船を持った女の子が描いてあったよ。あとクマさんも!」

私はその言葉であの絵本のことを思い出しました。
思わず振り返ってしまったのですが、そのまま通り過ぎ、彼女たちの声が聞こえる棚に身を潜めます。

話を聞いていると、やはり私とまったく同じ体験をしているようです。
返却した絵本を再び借りようとしたが、貸出履歴にも所蔵データにもそのような絵本はないとのこと。
しかし、女の子だけはその絵本の存在をきちんと認識していて、絵や内容を覚えているのです。

「私もその絵本借りたことあるよ! 本当にその絵本はあるんだよ!」と彼女の味方をしてあげたい気持ちでいっぱいになりました。けれど、見知らぬ女子高生が突然そんなことを言い出せば変人扱いされるに決まっています。
私はがっかりしている女の子を心の中で励ましながら、自習室へ引き返したのでした。

あの絵本はいったい?

あれから様々な図書館へ行く度に絵本コーナーで例の絵本を探しましたが、出会うことはできません。
ネットで検索もしてみましたが、見つけることはできていません。

もしかしたら、子どもしか出会えないのでしょうか?
ちょうど娘が当時の私と同じくらいの年になったので、図書館に行ってみようと思います。
きっと私はその絵本を読むことはできないと思いますが、素敵な絵本だったことは確かなので、娘に楽しんでもらえたら嬉しいです。

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