友野雅志の『TomoPoetry』

友野雅志の『TomoPoetry』

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TomoPoetry、過去へむかう鳥。


鳥がないた

別れの知らせ

巣からはばたく

過去へむかって

かれが知らないはずの

わたしたちには見ることができないはずの

ひらく扉がない方向へ

鳴き声と羽ばたきもきこえない方向へ


空がない

方向へ

鳥に

一本の光が見える

ほかに見えるものも

聞こえるものもない

かれが生まれる前の

世界へ


空はとじられている

鳥は眼をとじている

あおい波も

みどりに揺れる星も

あかくながれる涙も

すべてをうけいれる闇も

空もない

かれが飛ぶはずの


鳥は去った

記憶を

ふたたびたどるために

生まれる前の


わたしは泣く

出発を知らされて

海と地がゆれる

オーロラ

きみの脚をかくすように

光になったきみに

触れることはできない


ひかりにキス

ゆれてきえつつあるきみに

キス

記憶からきえさる

きみに

さよなら

わたしも出発するときだ


世界はふるえている

かなしみに

孤独に

手繰り寄せることができない

過去に


そんな気はなかった

きみから過去を奪うとは

そんな気はなかった

きみから

空を奪うとは

わたしたちが

闇をみとおす眼をうしなうとは


今夜も

わたしの空は鳥の羽音で満ちる

その中を

きみは飛んでいる

全身を凍らせ

かたちをくずしながら

一滴いってき

記憶を

ながしながら

深夜 カーテンを湿らし


凍りついた夢が割れ

きみの声が

あふれる

カーテンのはるかむこうで

風も光も

とどかない


きみの

生まれるまえの

位置

指先にふれるあたり

聞こえてくる

きみの呼吸が








語らなかった

子どもたちのうえに降る

花のような焔

木の棒になった

自立を望んだ子どもたち

だれも語らなかった

背をかじる

あかい海老


まるいテーブルで

まわる皿

フォークで刺されるのは

オマール あるいは

アメリカ

あたらしい皿には

しあわせを詰めたという

まるい赤


ならんでいる

あなたが捨てたものが

風がはこんでくる

あなたの記憶からきえたものを

レッドベリーと

ソーダ水で

口をあらう


だれも見なっかった でも

ときに

胸をきざんでいく

かおり


そう そこは歩いたことがある

石をひきづりながら


きみは刻んだのだ

その石の裏に

古いいいつたえを

きみの爪で


まもなく風はおさまるだろう

きみはふかく

ふかく吸いこむだろう

いのちを

きみは夜があけるまで

遠くに聴きつづけるだろう

古い声を


ふるいかなしみと呻き

あたらしい風に

かおる

その終わりのように

だれのものでもない声で

風がはこんでいく






きみを何と呼ぼう
なまえのないきみを
きみを何と表そう
色も形もないきみを
きみを
どのように抱きしめよう
わからないきみを
存在しているのか
わたしに
触れることなしに
あたたかさを与えるきみを

何と呼ぼう
焔のあとに
かおりだけを残していく影
踏もうにも
そこがない そら
すべてが
それぞれの位置に帰っていく
もう 正座して
世界は
足先から崩れていく
ひとつひとつの
なまえのない口
声が発せられるはずの
しずかに
ひろい闇に
戻っていく
それぞれの位置へ

もどるところのない
都市は
はっきりしない
黄色の
きみの尾とおもわれる
裾を
ビルとビルのあいだに
おもい浮かべる
ながれる血の
記憶のあとに


















きみの親指が

この星の経線を

はしっていく

ながれるのは血と涙

かなしみとよろこひ

33分の

叫び

悦びの そしてさみしさの

わたしは投げられる

心地よい肌のうえ

裂かれた肉体のなか

どこまでもひろがるのは

きみのたましい

わたしは凍った空間になり

さまよう


コーヒー味のアイスクリーム

かれの血が溶けている

アジアの

水が

けがれていく音

靴音と

歓声と

悲鳴

わたしたちは

わたしたちの歓喜を

なにと交換しようか

ぶーん ばーん ぱらぱらぼーん

きみの指が

複雑なリズムで

空間を

引き伸ばし

わたしたちは顔をゆがめか

声をほそく

送る

靴音と銃声が

爪のように

ひびく


きみの爪のせいだ

この星の弦を

ひっかくきみの

指の

絶望の


ミントクリームを舐めながら

わたしは

朝の青山から

しずみゆく渋谷までくだる


耳を爪がひっかく

古い音が

聞こえる




















さあ 言うがいい

きみを槍で刺し

笑う男に

呟くがいい

きみの血がながれるのを

喜びおどった男に

死の扉のむこう

どこまでも落ちていく闇について

一言

語るがいい


おおくの耳が

きみの声を待って

何千年だろう


目が覚めると

星が洗われるような

耳鳴りがする

それは

聞こえないきみの声が

世界から欠けている

せいだ


朝の道に

無意味な耳鳴りが

反響している

バス停で

横断歩道の白を跨ぐとき

自動扉がひらくとき

わたしは聞く

生きよ

生き血よ


きみの声か

わからないわたしは

飛行機の音を追って

見上げる

音もなく

鳥が青に消えていく








あなたが人であるなら

わたしは人でない


かれは口を閉じた

人から発するものを

吐き出した

すべてからになるまで

言葉

のぞみ

糞尿

そして血


乾いた葦になり

数分からからと燃えた


あなたが牛のステーキを切るとき

かれは骨だけになった自分を

削っている


あなたが

頰に風を受けて歩くとき

かれは

風のなかを

かるい種と一緒に

ながれていく


あなたが人であるなら

かれは人ではない

きらきら光る

いのちだ

一度死んだ命


かれが降りそそぐ朝

わたしは

どこにも行きつかない大地を

歩いている

かれの声と

おびただしい声が

雲のうえに

鳴りひびく

星を踏みながら









灰色の空気

色なくくすんだ風

そこを歩く


どこへ向かうのか

背がななめのきみは 

こたえない

灰と水を踏むわたしは

何も

知らない

何も知ろうとしなかった


今朝もきみは

その道を踏んでいる

赤いヒールを捨てようかなと思いつつ

コートと

合成皮革のかばんを

捨て去ろうと思いつつ


わたしは もう

凍えている しかし

はだかだ

風も声もつき刺さる

わたしの

色がするところ

わたしのなかの

かくせないところに


そこでは

死んだ彼のかおりがする

もういない彼女の

声を風がはこぶ


あと

すこしだ

ひかりと風をつくった

その口が語る


その風を

ほおにうけて

わたしは角をまがる






目が覚めると
きみは河の向こうから
こちらを見ている

すべてが破壊され
まだ煤が熱をもっている
時を
目覚めるには早すぎると
眠り あるいは
生がはじまる前の
かなしみの笛が鳴る前の
わたしを
きみは水で流しさろうと
あおい眼を
ふくらませ わたしが腰をおろした星を
ぴっしょり濡らす

言葉から言葉へ落ちていく
いのちは
透きとおった卵
時よりも
すこし先で
割れていく

ちいさな者よ
忘れてはいけない
歪んだ顔の
おだやかに静かな眼を
そこからきみの
記憶と呼吸ははじまる

かなしい音楽が
泡だちながら
きみを洗っていく

ちいさな者よ
わたしは流れていく
きみの咽喉を
いくつかの和音となって

空から落ちてくるわたしは
きみの足を洗う

さあ きみが
歩きはじめる時だ
裸足の肌に
歴史の針が
雲と風を
そして死のにおいを刺し入れる

きみをながれる河に浮かぶ
燃える柱
音たてる言葉
きらきらゆれる
青いひかりは
わたしが見ている
きみの
歩みがゆらす時間だ

まもなく
雨の音のなかに
きみの名を呼ぶ声がする
眼をとじて
歩きはじめよ

ちいさな者よ


































振り返る

そのことを理解する

まず自分の左足首を落とす

一週間後、左手首

一ヶ月後、左目

一年後、左耳をそぎ落とす

十年後、

記憶と意識を漆喰の壁に埋める

わたしの価値はまだあるのか


十年後の朝

恋人はわたしの姿に驚く

野菜炒めとサラダとハムを並べながら

住宅ローンの残額を質問する

口をくしゃくしゃ動かし

秤が傾いているのに気づく

いっしょに世界も傾いている

わたしは椅子から滑りおちる


重くなってきた生活

魂も飛び回れない

還暦で右足を落とす

一週間後、右手

米寿で右目

そのまた一週間後、右耳

翌日の夜

残っていた記憶

オーロラの光を

意識の向こうに仕舞う

わたしの価値はまだ感じられるか


老いた恋人は

わたしの不在を知りながら

ヨーグルトとウインナーとバターロールを二人分準備する

世界の傾きに合わせ

テーブルが傾く

わたしの位置からはなにも見えない


きみの背中にユーラシア大陸が埋まっている

膨張する生活と宇宙

わたしの呼吸は

暖かいままだ

きみの言葉が聞こえる


ほら

振り返って見てみて

きみの緑の眼

そのなかで

わたしの時間が

繰り返し始めている

漆黒の

香辛料を振りかける

なにもない朝から












朝のオムレツにナイフを入れる

六回

一回は蛇のため

二回はパーティ好きな女のため

三回は愚かな男のため

残りの三回は

すべての人類のため


テーブル

アフリカの地図

あるいは上海の居留地

椅子にすわる私の頭蓋骨

不規則なパズル

欠けている数枚

そこに人類の進歩が

人類の安息があると言う

テーブルも切られて

六方向にたおれる

朝日に立つ樹の影のように

砂にもどる塔のように

祖先の墓のように

二千年前の城壁のひとつのように

きみが祈願して

名を書いた柱のように

誕生を祝った欅のように

なにも言わずに

脚を失いたおれた


俎板の上

野菜の根の絡み

肉の筋のすきま

刀が撹拌する

野菜市場と精肉工場で

探すしあわせ

三つに分けた人類

つくる人と食べる人と飢える人

美しい曲線で

爆弾のリズミカルな破線で

ピアノのキーボードの動きで

切断する


洗ったばかりの白いシーツに

写しとる

死体の欲望と

波が砕ける海岸線

穴だらけの寝室

欠けている地球

表れるのは

わたしが愛していた

女性の緑の眼

バナナの葉に並んだカラフルな食事

あなたを最後に包んだ白木綿


静寂の地で

遠い人々の叫びは

音にならない

絶望でたおれる子供の表情は

風にならない


染めたばかりの国旗のような

ケーキを切り分ける

歴史にそって

食事の後

真っ白いクリームを塗る

そしてキス

人類の美しさをほおばる

老女がひとり

オリーブ色の眼球をつまんで

海の底へ去る


鳥が

海面から飛びだし

最初の声をひびかせる

それはまもなくだろうか