のこしたもの、それは | 友野雅志の『TomoPoetry』

友野雅志の『TomoPoetry』

日々書きためている詩をのせます。noteには下にのせています。https://note.com/mtomono

ギター三本八万円
カメラ12個六万円
本 数千冊二千円
身体を灰にする費用十五万
交通費一万
なにも残らなかった
連れ合いがいう 

あっ 年金が
鼠といっしょにたべるくらいはある

ねぇ ひとは死んでそのあとどうなるの
きみは何度かきいた
柿の種みたいに地から芽を出すよ
また 嘘だ
いや本当に芽を出す
芽をだしつづけて
散る花粉のように
わたしたちは会話し
交わり
散っているではないか

でも わたしの芽はでるだろうか

のこしたもの
ならべると
胃がいたくなる
間違いや悩みで
痛むのだろう
プラスとマイナスがあり
累計がある
そこまでくると 人類は
痛み止めをコーラでのみ
データを画面の向こうにまかす
きみが残すコーラの箱
宇宙が束ねられた排水管 そして
きみのなかで
ほそくなりゆく
黒い時間

まるで黒い希望のような
そのさきをきみは覗くだろうか

椰子の木が三本
パパイヤ二本
豚四頭
生きる道一本
わたしの祖父が残したもの

今朝 寝床のなかで
わたしは一本の熱帯樹
むしむしして生きているのがくるしい
わたしは一頭の豚
くるくるまわりながら焼かれる
そのうえにある
一本のあおい道

残したものから残されたものへ
そこを歩く足音が聞こえる

わたしのものでない足音
生きて死ぬものでないものの足音

もうひとつの世界への足音
きみは
それを聞いて
よろこびのあまり
わたしが残したものを
落とす
きみのあたらしい世界に