895:肝転移のない転移性大腸がんは免疫療法で予後を改善！米シティ・オブ・ホープ総合がんセンター

■ 肝転移のない転移性大腸がんは免疫療法で予後を改善！米シティ・オブ・ホープ総合がんセンター

転移性大腸がん患者の9割以上を占めるマイクロサテライト安定性（MSS）大腸がん患者のうち肝臓への転移がない患者では、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体が生存期間を延長する可能性を示した研究結果がこのほど明らかになりました。

米シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのMarwan Fakih氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に8月9日発表されました。

米疾病対策センター（CDC）によりますと、大腸がんは米国で3番目に罹患者数が多く、がん関連死亡の主な原因となっています。また、転移性大腸がんの95％をMSS大腸がんが占めるといいます。

抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞の働きを抑制する分子を標的としたがん治療薬で、免疫細胞ががん細胞を認識して攻撃させる作用を持ちます。

しかし、MSSの大腸がんでは、こうした免疫療法の効果を得られないことが多く、化学療法に抵抗性を示す場合の治療選択肢はほとんどないといいます。

Fakih氏らは今回、化学療法による標準治療に抵抗性を示し、その後、抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体が投与された95人（年齢中央値55歳、男性56.8％）のMSS転移性大腸がん患者のデータを後ろ向きに解析しました。

主要評価項目は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による治療により得られた奏効率と無増悪生存期間（PFS）です。 その結果、全体の治療の奏効率は8.4％（8/95人）でした。この8人は全て肝転移がなかった患者群に属しており、患者を肝転移の有無で分けて解析すると、肝転移がない群での奏効率は19.5％に上昇しました。一方、肝転移がある患者群（54人）では治療に反応を示した患者がいませんでした。

また、PFS（中央値）は、肝転移のない患者では4.0カ月であったのに対して、肝転移のある患者では1.5カ月でした。

Fakih氏は、「われわれの知る限りでは、この研究は治療抵抗性のMSS転移性大腸がん患者を対象にがんの転移部位によって層別化して抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体への反応について検討した研究としては、最大規模のものだ」と話します。

その上で、「肝転移のない患者の方が、肝転移のある患者と比べて免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けるメリットが大きい可能性がある」と結論付けています。また、「今後はMMS転移性大腸がん患者に対する抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体による治療の成果を前向きに検討する試験の実施が必要だ」との見通しを示しています。