このシンプルでお金のかからないテクニックを使うだけで、24時間後には意志力を高めることができます
「自分を変える」本の実践をしながら、悪い習慣を捨てて良い習慣を継続していく実践記録の連載だよ
欲求の波に乗れ!
「衝動」を観察して自制心を強化する
この本の中で「拷問部屋」と呼ばれている、ワシントン大学の嗜癖(しへい)研究センター(ABRC)の研究科学者セアラ・ボーウェンの実験を紹介しよう
ごく普通の会議室に12名着席できる細長いテーブルを置き、窓をふさいで壁に貼ってあったものもすべて撤去する
こんな殺風景な部屋に参加者たちが順番に到着しはじめた
ボーウェンの指示により、参加者たちは好きな銘柄のタバコを未開封のまま持参している
この参加者たちは「禁煙したい」と思いながらなかなか禁煙できない人たちだ
ボーウェンは参加者がニコチン切れの状態で実験に臨むよう、実験前の12時間は喫煙を控えるように指示していた
そのため全員すぐにでも一服したいに違いない状態だけど、まずはとにかく参加者全員がそろうのを待たなければならなかった
さて喫煙者が勢ぞろいすると、ボーウェンは全員を着席させ、本・携帯電話・飲食物など持ち物はすべてしまうように指示したあと、質問に答えるための紙とエンピツを配布した
実験開始前にはすべての椅子が壁に向けられ、参加者はお互いの顔を見ることもできず、「何があってもお互いに話しかけないように」と注意された
この時点で十分に焦らされてはいるけれど、拷問の本番はここからだ
箱をながめる・封を切る・箱を叩いて葉を均一にする・箱から1本取り出す・口に咥えるなどタバコを吸うための動作ひとつひとつを指示に従って進めていく
しかし手順をひとつ進めるたびに参加者は数分間もじっと待たされる
挙句ライターに火をつけてもタバコに着火はさせない
こんな拷問のような仕打ちが1時間半にわたって続くのがこの実験だ
拷問部屋の真の目的は波乗りの実践
参加者達はもう禁煙を断念したくなるほどの激しい欲求を感じさせられている
喫煙者が苦しみ悶える様を見てボーウェンは何をしたかったのだろう
その真の目的は「喫煙者はちゃんと注意していればタバコを吸いたい欲求に打ち勝つことができるのかどうか」を探ることだ
実はこの拷問テストの参加者たちは、2グループに分けられている
参加者の半数は「欲求の波を乗り越える」というテクニックを学ぶための短いトレーニングを実験前に受講している人たちなんだ
このトレーニングに参加した喫煙者達は「タバコを吸いたくなったら、ムリに他のことを考えようとしたり打ち消したりせず、吸いたい気持ちをじっと観察するように」と指示されている
前回の記事『禁止を実行に変えれば意志力を高めることができる』で出てきた、「思考の抑圧をしない」というテクニックだね
衝動というものは、こちらがそれに負けようと負けまいといずれ去っていくものだ
ボーウェンによると、強い衝動を感じたときには、頭の中で大きな波を思い浮かべると良いそうだ
トレーニングに参加した喫煙者たちは自分が見事に波に乗っているところを想像した──波に対して抵抗もせず、かといって呑まれることもない
ボーウェンはこのトレーニングを受けた参加者らに対して、「あとで行う拷問テストの際に、この欲求の波を乗り越えるテクニックを試すように」と指示していたんだ
波乗りした人・しなかった人──その違いは
さて1時間半にわたって散々苦しみを味わった後に、喫煙者たちは拷問部屋から解放された
実験終了する際、ボーウェンは参加者らにタバコの量を減らすように指示したわけでもなければ、「欲求の波を乗り越えるテクニックを日常生活で試すように」とも言わなかった
ただひとつ「次の1週間、タバコを吸った本数を記録し、そのときはどんな気分だったか、そしてタバコを吸いたい衝動はどの程度だったかも併せて記録するように」と指示しただけ
欲求の波に乗るテクニックを学んでいる参加者も、そうでない参加者も、実験直後の24時間では喫煙量に変化はなかった
ところが2日目からは欲求の波を乗り越えるテクニックを学んだグループの人々は、タバコの量が減っていった
そして7日目、波乗りを学ばなかったグループには何の変化もなかったけれど、波乗りテクニックを学んでいるグループでは喫煙量が37%も減少していた
さらにボーウェンは「喫煙者の気分とタバコを吸いたくなる衝動の関連性」についてのデータにも注目している
欲求の波を乗り越えることを覚えた喫煙者たちの間では、「気分がむしゃくしゃしたせいでタバコを吸ってしまう」という典型的なパターンが見られなくなっていた
こうした実験研究によって、欲求の波を乗り越えるテクニックを身につけると、イヤなことや大変なことがあってもそれを受け止めて対処することができるようになり、気晴らしに不健康なことをする必要を感じなくなる効果があることが分かったんだ
意志力の実験:「欲求の波」を乗り越える
科学的な研究や理論にもとづいて自己コントロールを強化するための実践的な戦略、意志力の実験
今回は、「欲求の波乗り」を実践してみよう
どんな誘惑であれ、欲求の波を乗り越えることができれば、誘惑に負けずにやりすごすことができます
衝動に襲われたら、まずは落ち着いて、自分の体がどのように反応しているかに注意しましょう
衝動はどんな感覚をもたらしますか?
熱い感じですが、それともヒヤリとしますか?
体のどこかに緊張を感じる部分はありますか?
心拍数や呼吸やお腹の調子に変化はありますか?
少なくとも1分間はそうやって体の様子を観察しましょう
そして、そのような体に感じる感覚が強くなったり弱くなったりするか、あるいは何か別の間隔が生まれるかどうか観察しましょう
衝動に従わずにいると、ますますその衝動が激しさを増すことがあります
まるで注意を引こうとしてかんしゃくを起こす子どものようです
そんな激しい衝動を感じながらも、頭からムリに追い払おうとせず、かといって衝動に従いもせず、乗り切れるかどうか試してみましょう
つまり欲求の波を乗り越えるためには、1分くらいは自分の体の様子を観察してみることがポイントらしい
これまた瞑想の話になってしまうんだけど、瞑想中も身体の感覚をじっと観察したりする
瞑想時には自分の身体のセンサーだけを使って観察するんだけど、心拍数がどれくらい上がってるかなんてちょっと分かりにくいので、このテクニックを実践する際には腕時計型の活量計なんかで心拍数を見るのもいいかもしれない
欲求の波を乗り越える練習として、呼吸も大いに役立ちます
呼吸の感覚に意識を集中し、息を吸ったり吐いたりしながら、どんな感じがするかを体で感じましょう
欲求の波を乗り越えながら、同時にそれを行うのです
これはまさに瞑想中の基本的な部分
自分の呼吸に集中して、鼻を通って肺へ空気が流れていく感覚なんかを観察することは、瞑想に関するどの本を読んでも書いてあると思う
とまあここまで読んでくるとこのテクニックがどんな欲求でも苦も無く乗り越えられる魔法のように思えるかもしれないけれど、実際のところこの練習を始めたばかりのうちは、欲求の波を乗り越えたつもりでも結局は波に呑まれてしまうことがあると思う
実はボーウェンの拷問部屋実験でも、参加者は波乗りテクニックのトレーニングを受けた人々を含めて全員が拷問部屋を出たとたんにタバコを吸っている
だからたとえ最初の数回うまくいかなくても、それだけで「こんなん効果ない」と決めつけるのは早計だ
意志力を高めるために自己コントロールを身につけるには時間が必要で、欲求の波を乗り越えるテクニックだって時間をかけて習得するスキルなんだ
ところで拷問部屋をわざわざ用意しなくても、実はこの欲求の波に乗るテクニックの練習をすることができる
じっと座ってみる──ただこれだけ
じっと座っているうちに、体のどこかがむずがゆくなったり、脚を組みたくなってきたり、どこかへもたれかかりたくなったりする
こうした欲求を感じはじめたら欲求の波乗りテクニックの練習タイミングだ
まずはその衝動をじっと感じて、すぐに負けないようにしよう
まとめ:欲求の波に乗れ
衝動というものは、こちらがそれに負けようと負けまいといずれ去っていくことを学んだ
欲求の波が襲ってきても、それを抑圧しようとすれば逆効果というのは第9章を通して学んできた通りだ
だから欲求の波を抑え込もうとせず、かといって波に呑まれて欲求に負けてもいけない
欲求を感じている間の自分の身体の感覚を観察したりして、欲求の波を乗り越えるテクニックを実践しよう
次回予告:意志力の本を9週間実践した感想
ついに実質最終章となる第9章の内容も終わってしまった
意志力を高めるために学んできた9週間の集大成と呼べる章だったな
次回は第9章の内容を振り返って、この1週間で第9章を実践してみた感想や気づいたことを書いてみるよ
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