前々回の「未練たらしいオーディオ愛好家」で取り上げた「1ワットクラスのアンプ」。
この時に標的になったのは上段左側の「071」アンプだったが、今回取り上げるのは右側の出力管「371」(カニンガム:トリタン・フィラメント)アンプだ。
左側と非常に似通ったアンプだが「前段管」が大きく違う。このアンプも何とか手前側の「6CG7プッシュプル」アンプに近づけたいものだ。
出力管の「371」が何しろ90年前の球なので(2本のうち)1本が経年劣化でノイズが多くなったので予備の球から1本挿し代えて新たに出直し。画像をアップしてみよう。
左側が前段管の「AC/HL」(英国マツダ:初期版)、出力管が「371」、右側の整流管が「83V」(RCA)というラインナップ。
このアンプの特徴は「前段管」の切り替えスイッチが付いていて、「AC/HL=MH4」と「MHL4」とが挿し代えられるようになっている。
「AC/HL」は「μ=増幅率」が「30前後」で「MHL4」はμが「20前後」で、どちらもイギリス系の球だが出てくる音は大きく違う。
前者は音に活気があって華やかだが、もっと音の重心が下がるとさらに素敵だと思うし、その一方、後者は音の重心が下がるのはいいが全体的にやや音に活気がなくなる。
いったいどっちがいいのか、ほんとうに悩まされるが、現時点で優勢なのは「AC/HL」のほうだ。
そこで、我が家の真空管の主治医にあたる「北国の真空管博士」に相談してみた。
「前段球の増幅率は低いのから高いのまでいろいろあって、我が家の場合はどうも高い方が音がいいような気がしますが、この点についてどのようにお考えですか?」
すると、次のような回答が返ってきた。
「前段球のミューについてですが、個人的見解としては回路定数の設計が適切であればミューが高くても低くても良い音が楽しめると思います。
私の理想はミューの高い球の繊細な表現そのままにワイドレンジかつスピード感のある音を実現することですが、回路設計と部品選定を適切に行えば可能であると考えています。
出力管との相性でいえばPX25やWE300Bのような入力容量の大きな球の前段としてはミューが高く内部抵抗の高い球は相性が悪く使用にあたっては特別な配慮が必要です。
以上のとおりだが、前段球のミューの違いによる音質の変化は個人の好みや音楽ソースによっても左右されるのでどうやら簡単に結論が出せるような問題ではないようだ。
真空管アンプは何だか「八岐大蛇」(やまたのおろち)みたいで、スッキリした解答が導かれず割り切れないことが多いが、それだけに弄りがいがあって楽しい面もある(笑)。
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