二度目のコロナ緊急事態宣言が発令されて以降、飲食店や飲み屋への営業時間短縮要請の見返りとしての給付金のニュースが出るたびに、ネットのコメント欄には、
「オレらには給付金がないのに、飲食店にだけ出すのはおかしい」
「飲み屋に血税を出すなよ」
「好きで商売やってるくせに、苦しい時だけ助けを求めるな」
「水商売の意味、解ってる?」
「キャバ嬢は文句を言う前にちゃんと納税してんのか?」
といった批判コメや文句コメがズラリと並んでいる。

街の飲食店や飲み屋の多くは、コロナ禍への怯えや自粛警察の徘徊の影響で、売上が半減、8割減なんてところがザラにあるんだから、6万円/日×30日程度の給付金など”ほんの一部の補填”にしかならぬはずだが、コロナ給付金のお代わりすらない貰えない大多数の国民にとっては、雀の涙ほどのわずかな還付金ですら「特権」に映るらしい。

本来なら、「アイツらだけ助けるのかよ(# ゚Д゚)」と文句を垂れて総員玉砕の下策を選択するのではなく、「アイツらもオレらも助けろよ(# ゚Д゚)」と国民全員に救いの手が回るよう政府に強く要求すべきじゃないのか?

飲食店への給付にイチャモンをつける輩は、「給付金の財源は税収であり、それには限度がある」と思い込み、これ以上給付を増やすと将来増税になって跳ね返ってくると曲解しているようだ。

まず、一般国民によく理解してもらいたいのは、
「税金は”富の再分配・特定品目の使用抑制・国内産業保護”という政策目的実現のための手段であり、国家財政を支える財源ではない」
「財政政策に必要な財源は”国債発行・貨幣製造”で創出(調達)すべきもので、高インフレを招かぬ範囲なら、その規模に限度はない。特に長期・超長期で見ればほとんど無限大と言える」
「財源を決めてから歳出を決めるのは間違い。社会的課題解決に必要な歳出項目や規模を決めてから必要なだけ財源を創出すればよい」
「国家運営において何より優先されるべきは、社会的課題の速やかなる解決であり、財源探しはそれに大きく劣位する」
という基本原理だ。

ここを勘違いしたままだと、
「オレたちの血税が~」
「財源はどうする~」
「税の使い道が~」
と議論が空転し、総論賛成各論反対のまま話が前に進まず、政策も「too little too late」な中途半端な愚策となり効果も半減してしまう。

財源探しという時代遅れの発想で足踏みするのは、
食糧不足に直面した時に、「いまから苗を植えようか」
病気が蔓延した時に、「いまから医者を育てるか」
燃料不足に直面した時に、「いまから山に行き木を切ってくるか」
と暢気なことをほざくのと同じでスピード感の欠片もない。

コロナ禍は日本経済を蝕んでおり、長期不況や相次ぐ増税により、ただでさえ弱り切っていた経済はまさに死の淵に立たされている。
飲食業界や宿泊・観光・旅行業界の苦境を他人事だと嗤えるのはいまのうち。
不況の因果は巡り巡って、他人の不幸をメシウマと嘲笑していた輩の足元に忍び寄ってくる。

『大量リストラが前倒しされる恐れ…3社に1社が「1年以内に雇用維持できなくなる」~国の失業対策財源も企業体力も枯渇』
https://president.jp/articles/-/42280
「(略)すでに雇用情勢は悪化している。2020年11月の雇用者数は前年同月比41万人減となり、同月のパートを除く有効求人倍率は1.02倍と低迷している。また、厚生労働省は新型コロナウイルス感染拡大に関連した解雇や雇い止めは見込みを含めて1月6日時点で8万121人に上ることを明らかにしている。(略)
調査したのは2020年10月初頭だが、コロナの第3波がまだ到達していなかったこの時点で削減実施の企業を含めて2割弱(18.0%)の企業で半年以内に、また3分の1(33.6%)の企業で1年以内に「現状の雇用を維持できなくなる」と見込んでいる。もちろんこうした企業はすでに雇調金を受け取っている企業も多いだろう。それでも企業の体力に限界はある。(略)」

『「失われた40年になりかねない」2度目の緊急事態宣言が残す禍根~「貯蓄が正義」で日本経済が凍り付く』
https://president.jp/articles/-/42238?page=1
「(略)先行き不透明感が強くなれば家計や企業の抱く消費・投資意欲は低下する。GDPの需要項目で言えば、個人消費、住宅投資、設備投資などが減少する話になる。
ラフに言えば、「不安だからお金を使わない」という判断が家計や企業にとって合理的なものと見なされやすくなる。実際、あの米国でも貯蓄率が歴史的高水準で高止まりしている現状がある。(略)」

『「私も収入が半減した」経済評論家が覚悟するイベント業界の暗い先行き~アフターコロナでも元に戻らない』
https://president.jp/articles/-/42198
「私は3つの顔を持っています。経営戦略コンサルタント、投資家、そして経済評論家という別々の仕事をこなしているのですが、その中で新型コロナのイベント業界への打撃をもろに受けたのが経済評論家の仕事です。ざっくり言うと私の経済評論家業のビジネスモデルは、ウェブ連載の記事で露出を確保して、年1~2回書籍を出版して話題をつくり、たまに放送メディアに出演して名前を売って、月2回程度の講演会で元を取るような仕組みです。(略)これが新型コロナでどうなったかというとウェブ30%、書籍15%、講演5%、減収分50%と、ほぼほぼ評論家業の収入は半減しました。(略)」

他人が受け取る給付金に文句をつけるだけで、大規模かつ広範な所得補填策を指を咥えたまま放置すると、コロナ自粛による経済崩壊の大津波をモロ被りするリスクが高い。

コロナ給付金のお代わり(30万円/人の大盛りで)、休業補償(逸失売上全額補填)に加えて、消費税廃止、社保負担廃止、公共料金半額国庫負担etcといった大規模な需要注入策に踏み切らぬと、日本経済は本当にクラッシュを免れまい。

何につけ経済の不調や不況を惹き起こすのは「需要不足・消費不足」であり、突き詰めれば所得、つまりカネ(貨幣)不足に行き着く。
上記でご紹介した三つのコラムで書かれている経済リスクも、結局は所得低迷による需要不足が原因となっているものであり、思い切った聖域なきバラマキに着手せぬ限り問題は一㎜たりとも解決できない。

また、コロナ感染拡大防止策としての緊急事態宣言やロックダウンの類いも、自粛というポーズを正当化するだけの弥縫策でしかない。
ロックダウンみたいな仰々しい私権制限は、すでに世界各国で実践されてきたが、一時的な感染者減にはなるものの、その効果は長続きせず、数か月もすると感染爆発に見舞われ失敗に終わっている。
そんなものは、行動を制限された挙句に所得減少や失業に見舞われた国民に不幸と不満をもたらすだけの愚策に過ぎなかった。

コロナ感染拡大を食い止めるには、無理な私権・行動制限ではなく、「マスク着用・手洗いうがい励行・大声禁止・健康維持」といった基本動作の徹底を以って当たるべきで、くだらぬ緊急事態宣言など無用。
飲食店の営業時間にケチをつけるのではなく通常通り営業させ、来店客が大声で騒がぬよう巡回パトロールを強化すべきだ。
飲食業組合や商店街組合、商工団体、行政職員に加えて、自粛警察の連中を臨時雇用してパトロールに当たらす方が遥かに効果的だろう。

幸いワクチンも来月以降、接種が可能になりそうだし、治療薬に関しても、レムデシビルやアビガンなど効果が期待できる薬が複数あるのだから、慌てずに対処すればよい。