チェックしていたいくつかのツアーが、Go toの都民解禁で一気に予約が埋まり、突撃はあまりに危険と早々に撤退を決めた。
ふり返ってみれば二ヶ月あまりが経過。今年も残すところ3週間・・・
あの時 “空きあらば“と狙っていたのは、屋久島と西国観音巡礼のツアーでしたが・・・
今回は、観音巡礼と言えば・・・です。
札所、霊場、呼称はさまざまなれど、都内なら江戸三十三観音なるものがあると聞きます。同様に幾多の観音霊場が日本各地にあり、それぞれを巡り訪ねる人々も土地土地におられるのだと思います。
Wikiによれば
「観世音菩薩が衆生を救うとき33の姿に変化するという信仰に由来し、その功徳に与るために三十三の霊場を巡拝する」
とあります・・・そこから全国各地に三十三観音霊場が広まったということでしょうか。
遡ること1300年余り、奈良時代初期の718年、大和長谷寺の僧侶・徳道上人が開いたという観音巡礼の道。そこから更に270年後、時の花山上皇が再興したと伝えられる西国三十三所。
それが坂東の地に移植されたのが坂東三十三所観音巡礼”らしい”。秩父三十四札所は、どうやらその後らしいが 成り立ちについては更に不透明。
近畿地方の西国三十三所、関東の板東三十三所、秩父三十四所、合わせ百観音巡礼が知られ、最寄りの札所を、或いはその全てを巡るツアーなどが各旅行社で組まれています。
衝動に駆られ、断続的にそれぞれの札所を巡ったのは十数年以上も前のこと。
当時、関東の札所を数度、西国は一度巡ってはみたものの、当時の記憶はすでに朧げなものとなっています。
何百年という間、耐えることなく人々が続けてきた巡礼というものを、その行き先だけでも実際に訪れ雰囲気を体験してみたい、巡礼に参加したのはそんな衝動からだった様な気がします。
各札所を巡る道中、山谷袋(白い布製のショルダーバッグ、頭陀袋)に肉親のものと思しき遺影代わりの写真を貼り付けた方と すれちがったことなどもありましたが、
私の場合、他界していた父親への何某かの想いあっての巡礼だったのかというと、そうではなかったと思います。
この手のツアー、参加者の多くは「時間にゆとりある世代」。
私如き若輩者が混じっていると妙に目立つのか、珍しい種族でも見つけたかの様におっ!と思わず目を見開く、そんな年代の方々がほとんど。
皆さん和気藹々、観光気分の参加者が大多数でしたが、そもそも観光ツアーなのだから観光気分というのも至極当然と言えるのかもしれません・・・。
夕食時、参加されたお父さん達からビールなど勧められ、巡礼中故に酒類は、とお断りすると「ほぉ〜」と真顔になりビール瓶を引っ込める、そんな場面がよみがえってきますが、
それでも参加者のうち何人かは、予め書き溜めた写経を行く先々のお寺さんで一枚一枚納めたりと、頭の天辺から足の爪先まで観光気分にどっぷり、というわけでもないのかもしれません。
ビールを勧めてくださった方々があの時見せた真顔は、「そういうこと」を知っていた、故なのでしょう。
余談になりますが、寺院で写経を納めていたのは女性がほとんどで、となれば、そういった思いある奥様主導での巡礼ツアー参加ということでしょうか・・・。
スーパーへの買い出しに“おまけ“でついて行くご主人、という構図はこの手のツアーでも変わらない、のかもしれません。 そういうことなら、宿に帰っての夕食の“ひととき“・・・さあビールを、という気持ちにお父さんたちがなるのも、今更ですが、合点がいきます。
100+αのお寺さんを巡り読経を重ねれば延命十句、般若心経、場合によっては観音経を唱えることにもだいぶ慣れてきます。
元来、写経を納めたその証としての朱印、それが時とともに簡略的になり、写経の代わりに読経を納めての朱印という段取りが一般化、時としてスタンプラリー的なものに変わってきたとも言われています。
そこへのこだわりを見せる住職もおられれば、一見そうではないお寺さんもある、というのは今も変わっていないのだろうと想像します。
凝り性の私は、「せっかく参加すると決めたのだから、写経を一枚一枚納めてみようじゃないか」・・・そう思い立ち、結果、慣れない写経に随分と悪戦苦闘した記憶があります。
小学生以来の筆字ということもあり、一枚の写経に2時間かかるところからの始まりとなり、巡礼そのものより、その下準備としての写経に肉体的エネルギーを費やすこととなりました。
この際だからと判衣(白衣/笈摺)、掛け軸もこしらえましたので、まずは一通り表面上のことは”体験・体感”したのかもしれません。
ただ、西国、板東、秩父それぞれの判衣を手にした時、漠然と頭をよぎったことがあります。
それがいつなのかはわかりませんが・・・、“その時“この判衣をどうするのか?
あるいは、
秩父地方に生家のある母の“その時“、秩父三十四所の印の入った1着を羽織らせることになるのか、
そんな思いが、浮かんできました。
- 笈摺・・・後編に続く -