それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

入院一日目・・・カテーテル回避

f:id:masakahontoni:20220101171532j:plainベッド上にキャリーを置き、
枕元横の床頭台に身の回りのものを格納してゆく。

身の回り、と言っても所詮は入院用、
タオル、洗面用具、貴重品類・・・なら床頭台の限られたスペースで十分。

f:id:masakahontoni:20211212145855j:plain「試してみよう」と手に入れたアンダーシャツの出番も近い。

明日は朝から点滴だ。まずは、袖口なし・八分袖のやつ、あれを就寝前に着よう。

点滴が外れる明後日はGUNZEの袖付きだな、
そのローテーションでいくとしよう。

 

f:id:masakahontoni:20211212150311j:plain病衣に着替え、あの扉とじスリッパに履き替え、イヤホンをTVに繋ぐ。

TVは枕元すぐ横のタンスに備えつけ。
ベッドに横たわり視聴、は角度的にかなり無理。

ベッドの縁に座るか、備え付けの折りたたみ椅子を使うか、その二択が残る。

なるほど、となれば、イヤホンのコードは長くなければならない。
3.5m長が最適なのかは「?」だが、大は小を兼ねる、はず。

 

ノック音と同時に
スライド式ドアが開き、看護師さんが入ってくる。

 

「体温と血圧測りますね。
リストバンド、まず付けましょうか。」

 

f:id:masakahontoni:20220101163942j:plainバーコード・名前付きバンド装着。
差し出された体温計を脇に挟む。
額にピッの赤外線式は流石にこういう場所では使われない。

 

f:id:masakahontoni:20211212151201j:plain「このオムロンの、私も使ってます。」

 

「あら、そうなんですか!」

 

「ええ、15秒測定、に誘われて。」

 

その15秒を知らせる電子音が流れ、
取り出したオムロン製のやつを看護師さんに渡す。

 

「はい、37度ですね。」

 

15秒だと予測体温で、これ実際より高めに出るんですよね。
結局数分かけないと実測値は出ないと、買った後で知りました・・・

 

f:id:masakahontoni:20220101170253j:plainリストバンドのコードをピッと読み込み、
ナースカート上の端末に結果を打ち込む。
手慣れた手順で血圧測定も終了。

 

「今後の予定について、説明の者がまもなく参りますのでちょっとお待ちくださいね。」

 

と残し、看護師さん退出。

 

5分と経たぬころ、
またノック、
今度は、別の看護師さん。

 

「真坂さん!」

 

「んっ?」

 

「真坂さん、
今日誕生日でしょう?」

 

「あっ、そうなんです。」

 

「おめでとうございます!」

 

「ありがとうございます。
そういう巡り合わせになりまして。
お陰でメモとることもなく、覚えやすかったです。
今日からお世話になります。」

 

手続き済ませた私のデータがナースセンターで共有された、
のだろうが、

f:id:masakahontoni:20220101170649j:plainあっ、この人今日が誕生日だ、となり、
では一言 病室まで声かけに、ということか?

多忙な中、その目的で速攻部屋まで、
というのが、新鮮・・・

 

これまで、母に付き添い、様々な病院、中規模から大規模に至るまで、お世話になってきた。
大規模な病院は中小と比べ雰囲気が違うと
当時、足を踏み入れた途端に、気づいたことがある。

大規模となれば相当数の看護師さんがいる。
看護師、介護士、他職員が病棟内を始終行き交い、
それが、雰囲気に影響を及ぼし、
あっ何か違う、と途端に気づいたのだろう。

 

大規模なら研修受け入れも多いのだろうが、
逆に、中小だと即戦力、経験十分な方が多く、その年齢層には違いがあるのかもしれない。

人材多ければ作業・職務分担も割り振りのしようもある。
が、限られた人数ならほぼ全て一から十まで各々がこなさねばならない。

どちらが良い悪いではなく、
雰囲気の違いはあるべくしてあるものなのかもしれない。

 

3度目に入ってきた看護師さんに血を抜かれる(採血)。

この2ヶ月間、煩雑に血を抜かれている。
クリニックで日帰り内視鏡検査を受けた時、
この病院でのESD手術が決まり事前検査で、
そして入院して早々。

拒否反応こそないが・・・喜んで、という気にもならない。

 

昼食。
入院後、初の食事は当然ながらの検査食。
それが肉ジャガだったのをみて、ちょっと動揺。

 

(これ食べていいのか?)

 

検査食で肉、と言えば鶏胸か鶏笹身、それが検査食、オイリーなものは避けるもの、と思っていた。

入院するまでの三日間の努力はどうなる?という気もよぎったが、
残す、のも憚られる。
病院で出された、なら仕方ない、と平らげる。

 

4度目のノックで、入ってきた看護師さんから予定表を手渡され、
説明が始まる。

今日は、お風呂OK、就寝前に下剤。
明日は、食事無し。朝からニフレックを2ℓ。
午前中に点滴装着、昼過ぎに手術開始。
術後は水もダメ。

手術は2時間、場合によっては3時間ほどかかる。
鬱血を防ぐため体圧分散用のソックスを履く。
術後しばらくはベッドから起き上がることも、トイレに立つこともダメ。
必要に応じ、おしめ、尿道カテーテルを装着・・・

 

(っ・・・)

 

ここで私の動揺、声ならぬ声?気配が伝わったのだろう、

 

「おトイレの方、大丈夫ですかね?」

 

「はい、3時間、4時間ぐらい全く問題ありません。」

 

「でしたら、こちらの項は✖️にしましょう。
念のため、手術前にはおトイレに行っておいてください。」

 

いや、いや、おしめだ、尿道だとなったら、骨折で搬送された当時の母と同じだ。
そこまで経験したくない、する覚悟もない。

 

「経過をみながら、おトイレもOKになりますが、遠慮なくナースコールを使ってください。
明後日も食事はありません。水は飲めるようになります。
トイレで出血が認められた場合、必ずナースコールで呼び出しを。

術後2日目から徐々にお食事をとっていただきます。
トイレで下血が認められたら、速やかに看護師を呼び出してください。」

 

兎にも角にもカテーテル挿入を回避したことに安堵し、
夕食までの時間を潰そうとKindleを取り出し椅子に腰を下ろす。

が、数十分もすると臀部に座り疲れを感じ、ベッドの縁に座り直す、
時間が経ち元の椅子に移動、そしてまたベッドの縁へ、
を繰り返す。

こういう環境では、本ばかり読み続けるのにも無理がありそう。

せっかくのパラマウントベッド。リクライニングにしてベッドで読書、というのもあるのだろうが、
ベッドに横たわるのは就寝時のみ、という意地がある。

 

お年寄りが入院し認知症になる、それがひどくなる、とよく言われる。
母も最初の骨折時、一月ほどの入院で症状が悪化した。
何することもなくただベッドに横たわり、昼間からうつらうつらとしている母の姿が今も浮かぶ。
リハビリと称しいくら病院側が身体機能の維持に努めたところで一日中リハビリすることなどできはしない。
ほとんどの時間をベッドで過ごせば、年齢によらず様々な能力が衰えるのは当然なのだろう。

 

流石に認知症とは縁遠くとも、私とて只ごろごろしていれば何がしか肉体的に衰えるのは当たり前。

ベッドに横たわるのは夜寝る時だけ、そういう意地だ。

 

天上の葦の下巻中程まで読み進んだあたりで担当医の方が入ってきた。

 

血液検査も問題ないので予定通り手術執行
緊急オペが入り、明日は手術開始が3時ごろに繰り下がる

 

ここは急性期病院、救急患者が優先されるのは当たり前。
数時間の遅れぐらいどうということはない。
余裕で腸内洗浄に集中できる。

そして、夕食。
クリームシチューだった。
正体不明の肉らしきものが入っている。多分鶏肉なんだろうと、折り合いつけこれも平らげた。

例の介護用アンダーシャツを着て就寝した。

(さあ、明日は手術だ。)