Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【海外メディア記事より】増え続けるワグネルの戦死者

 皆さんこんにちは、現役救急医です。数日ぶりの更新です。寒波のせいか、急病になる人が増えてしまい、てんてこ舞いでした。それに加え、担当患者の病状説明やら, 今後の方針(長期的なものを含む)の相談やらで忙殺され、心の余裕もすり減っていました。

 

 今日は久々に、海外メディアのネット記事をざっと紹介してみます。今年1/24公開・1/26訂正がされたNew York Timesの記事"Imagery shows how a cemetary for Russian mercenaries is expanding"を参考にしています。

www.nytimes.com

 ウクライナ情勢の報道で既に何度も言及されているので皆様はご存知かもしれませんが、ロシアのウクライナ侵攻には民間軍事会社ワグネルも参加しています。廣瀬陽子氏の著書『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』講談社現代新書によると、『民間』という呼称はあれど, 実際のところワグネルはロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の指揮下にある集団であり、2014年以降のウクライナ東部での戦闘のほか, シリアへの介入, 中央アフリカリビア等のアフリカ諸国での政府軍の訓練や要人・重要施設の警備を担ってきた経緯があるそうです。また特にシリアやアフリカ諸国では、こうした任務を請け負う見返りに、各国政府から地下資源の採掘利権も供与されているそうです。

 こうしてウクライナ侵攻に『参入』したワグネルですが、その戦闘員の死者数は数千人にも上り, その90%近くは刑務所で採用された受刑者なのだそうです。ワグネルの戦闘員の墓所がロシア南西部のMolkinという場所にあるそうですが、元ロシア空軍軍人の活動家によると、その墓所では墓標の数が増え続けているとのこと。また、別の場所に設けられたワグネルの墓所衛星写真を2022年11/24時点と今年(2023年)1/24時点で比較すると、明らかに規模が拡大しています。

 ワグネルのトップであるエフゲニー・プリゴジンは刑務所内で戦闘員を募る演説の中で、「埋葬を希望する場所が不明な戦死者は、ワグネルの教会の近くに埋葬する」と述べており、その後ロシアの政府系メディアによって、プリゴジンがその墓所へ献花している映像が公開されています。こうした映像には、最近(つまりウクライナにおける戦闘で)死亡した戦闘員の墓標が写っており、これらの墓標に記載された氏名・生年月日をロシアの犯罪者データベースと照合したところ、少なくとも16名の該当者が居ました。

 

 ちなみに上記『ハイブリッド戦争』の記述によると、ワグネルのトップであるプリゴジンは、強盗・詐欺・売春のカドで服役し出所後に飲食業で成功して事業を拡大させ, その過程でプーチンとお近づきになり, プーチンと外国首脳との食事会を自分が所有するレストランで開催するほどであったそうです。その後、学校給食や軍への食事提供も受注するようになり, 軍との契約は2013年で終了したものの、それ以降はワグネルへの出資や, ロシア政府のインターネット空間における情報工作を担う会社の運営にも乗り出しています。つまりプリゴジンプーチンに気に入られたことで、上記のような『汚れ仕事』を含めた業務を受注し, それにより利益を得てきた存在なのです。

 

 プーチンは何年もかけて強権的な支配体制を確立し, それによって今回のような理不尽極まりない侵略行為・戦争犯罪が可能となった訳ですが、この強権支配体制の中で、プーチンの『お友達』がロシア政府の『国益』のための汚れ仕事を喜んで受注し, それによって利益を得るとともに一定の『成果』を出すことで益々ズブズブの関係に入っていく…という闇深さを感じてしまいました。