2022.6.27 更新
1921 張哲瀚チャン・ジャーハン

張哲瀚が萧子升役で出演しています。813が原因となり、現在は倪寒尽さんを代役として撮り直されたものが中国で配信されています。日本でも『2021東京・中国映画週間』で上映されましたが、萧子升は倪寒尽さんが演じられたバージョンのようです。

原題《1921》 英語名:Nineteen twenty one
撮影:中国・上海・2020年7月
監督:黄建新、郑大圣
主演:黄轩、倪妮、王仁君、刘昊然、陈坤、李晨、袁文康、韩东君、张颂文、祖峰、窦骁、王俊凱、劉家祎、張超、張雲竜、胡先煦
上映時間:137 分
上映日:2021年7月1日
配信:騰訊視頻、愛奇芸、芒果TV 、優酷網 、楽視視頻


中国共産党第一次全国代表大会(中国共産党設立)にスポットをあてた群像劇。租界がひしめき国家が主権を失う象徴のような当時の上海を舞台に、危機感を募らせ理想に燃えた若者たちが中国共産党を成立させるまでを描きます。

主人公一人を中心に描くのではなく、登場人物全員の動きで物語の流れを作っていくタイプの映画です。テンポよく話が進みます登場人物がとにかく多いです。有名な俳優を贅沢にキャスティングしているのにささやかな出番で終わることも多く、名前と顔を覚える前に退場します。そもそも主人公夫婦でさえ出番が少ないですからね。実際の社会も多くの人々の思惑が絡み合って作られていくのでそこも醍醐味の一つかもしれません。

映像も非常に美しくて見惚れます。女性は皆キリリとして、チャイナドレスのシンプルさが躍動的な美しさを強調しています。男性も長袍の直線的な優雅さも、西洋的でスタイリッシュなスーツ姿もおシャレです。道具類や背景も、中国的な良さが堪能できる美しさでした。ただ、この時代の労働者はもっと貧しかったと思うのですが、映画からは際立った清潔感と秩序を感じるばかりでした。切羽詰まった感を出すためにもうちょっとリアリティがあってもよかったかもしれません。

1921 張哲瀚チャン・ジャーハン

映画でちょっと気になったのが、大陸に入ってくる外国の存在です。
コミンテルンからは指導にマーリンが派遣されてきました。しかし中国共産党への過度な介入を警戒し、毅然とした態度を取ることもあります。このことについて仲間内でも意見の食い違いから衝突が起きることもありました。
また、日本の共産系活動家の近藤がコミンテルンと接触するために上海に来ており、日本の特高警察から大川が派遣され、水面下で動きます。租界がひしめく上海で外国勢が暗躍する姿は、列強各国の縮図みたいです。ところで大川も近藤も、主人公たちとは直接関係ないですよね???

@wiki「近藤栄蔵」によりますと、コミンテルンのマーリンから資金を受け取った近藤には、「翌5月にはコミンテルンへの報告のため上海に派遣され、李東輝ら朝鮮人社会主義者を介して活動資金6,500円を受領したが、多額の金を手にしたことで気が大きくなり、帰国後下関で遊興中、官憲に逮捕された」という残念な後日談があるようです。←仲間の気持ち

全国代表大会にむけて動く彼らのひたむきな姿はどこか幕末・明治維新前後の志士達とかさなります(やり方は全然ちがいますが)。動乱の時代に人民が選んだやり方で産み育てた国が、今後より良き国になることを祈ります。

そうそう毛潤之を演じた王仁君は毛沢東にそっくりすぎて、今後はもう毛沢東以外の仕事ができないのではないかと余計な心配しましたが、たまたま見た《大軍師司馬懿之軍師聯盟》で曹植を演じていました。髪型を変えたら他の役もイケますね!チャン・ジャーハンとは《我為宮狂》でも共演してます。

1921 張哲瀚チャン・ジャーハン

チャン・ジャーハンについてです。

張哲瀚の出演しているシーンはほんの僅かです。個性的なキャラクターを表情豊かに演技し萧子升の人柄や考え方に奥行きを持たせて表現しています。体のちょっとした動きで現実感を増強してとても印象に残ります。そう、首の上の顔が他の俳優のものに変えられてもです

張哲瀚の演じる萧子升からは、自分の主張を曲げない頑なさとの自分への自信を感じます。毛潤之と言い合いになりなった時も周りから何を言われようと考えを変えることはありません。CMで有名な「为了理想,我愿意等他一千年」という台詞も、焚書シーン後に毛潤之に突っ込まれ、賭けたタバコ吸わせるからな!と言われますが、萧子升も「だからこそ俺の思想には価値があるんだ!」と言い返します。考え方は違うのに気が合うらしい萧子升と毛潤之の口喧嘩シーンは日常感が増す萌えポイントです。

ネットで検索してみると、実在の萧子升も毛沢東とは違う思想を持つ人でした。それでもお互いに自分の意見を押し付けることはなかったそうです。互いに相手を認め合っていたのでしょう。萧子升本人はこの後国民党で仕事をして台湾に渡り、ヨーロッパへ移っています。行動が自由ですね。奇人・奇才とも呼べそうです。
張哲瀚はどんな萧子升をイメージして演技に臨んだのでしょうね。

張哲瀚の萧子升はルックスも最高です。スクリーンでドアップ見たかった。181cmあるのに小柄に見えるのが不思議です。めくった袖から見える腕もいい! 3つ揃えスーツもモダンで似合ってる!!長髪オールバックがこんなにも可愛いものだとは知らなかったです。熱いけど、熱苦しくはない演技っていいですよね。元気100%でピチピチしてます。私の中では張哲瀚の萧子升は好きな役の上位にランクインしました。どの役も上位ランキングしてますけど)張哲瀚の萧子升のその後の人生も映画化してほしいです。 

映画公開後の813が起きたため、現在配信されている『1921』の萧子升は倪寒尽さんが代役として撮り直されました。見比べてみると張哲瀚のシーン全てを入れ替えたわけではなく、焚書後のシーンがカットされるなど、一部シーンが省略されました。部屋全体が写りこむような引いた撮影シーンでは、体は張哲瀚のものなのに、顔だけ倪寒尽と置き換わっているところがあります。俳優のお二人がどう思うか分かりませんが、ファンとしてはいろいろ微妙です。

張哲瀚の名誉が回復したら、張哲瀚のバージョンも見られるようになるといいですね。