囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

政治の心得㋬

2021年09月24日 | ●○●○雑観の森

 

【享保の改革を支えた名奉行のはなし の巻】

 

 

儒学者の荻生徂徠の病気が大変悪くなり、

どの医者も手に負えなくなったので、

望月三英が急ぎ招かれた。

彼は徳川幕府の御殿医であり、

讃岐丸亀侯の侍医でもある。

 


三英は徂徠を診察して

「先生の病気は大分重いので、

とても自分の手に負えそうもありません」

と素直に言うと、徂徠はうなずき

「今、都には数多くのの医師がいるが、

いよいよ危なくなった時、

死生を任すことのできる人は少ない。

今の時代は昔より劣って、

真に医学をする者もなくなり、

医術も下手になった。

だが、あなたは医学ばかりでなく、

文学にも通じているからわかると思うが、

死生は天命である。

それだから、あなたにお任せする」

 


そう言われて三英は

「先生は昔を懐かしんでおられるようである。

ことに明(みん)の時代は名医も多かったと思うが、

その明人のうちで先生は誰に死生を託そうと思われますか」

と尋ねると、徂徠は、しばらく考えてから

「薜立斎(へいりつさい)のような人物であったら」

と言った。

 

それを聞いた三英は、

思わず手を打って笑ったが、言葉を継ぎ

「先生は、まことに天下の豪傑で、

学問文才は誰よりも優れておられるが

医学についてはよくご存じないようだ。

三英は不才ではあるが、

立斎のごとき者には決して劣るとは考えません。

薜氏でよいとおっしゃるなら、

今の世でも、それに勝る人は少なくありません。

決して医者がいないと心配なさることはありません。

どうやら医に関しては先生のお考えは低うございます」

と笑いながら励ましたということである。


                    (出典:北窓琑談)

 


   *  *  *

 


「医は仁術なり」

と、古人はいう。

何より大切な人の命を救うには

博愛の精神によって成し得る。

今も昔も、根本は変わらない。

 


では、政(まつりごと)とは何か。

民を導いて正道につかせるとは

強制的な力を行使することか。

それとも――とにもかくにも

まずは、自らを治めよ、とは

街の声か、天の声か。

 

 

「終息まで、なお2、3年はかかる」

専門家の発言に、

何をいまさらと思ったか、

虚をつかれ愕然としたか。

今までそれを口にした者があったか

といえば、記憶にないのは何故か

 

 

丁寧な説明をしないこと

メッセージを出さないこと

ことばを大切にしないこと。

いまの政治に欠けているのは

情報の質量の過疎化と動脈硬化

専門家と政治家の連携など

幻想だったことを思い知り

残念に思うのみである。

 

 

 

 

 

 

 

「私は 自分が 何も知らない と知っている」

          ――前399年ごろ

 

ソクラテスは、風刺と批判の力をもって

アテナイ市民を目覚めさせるために

神々から自分は遣わされたのだ

と信じていた。

 

だが、神々を冒涜したうえ

青年たちを堕落させた罪で

彼は告発されてしまう

弟子のプラトンは師の裁判を傍聴し

最期の哲学問答を劇的に描いている。

 

市民500人からなる裁判員たちは

ソクラテスの知恵にウンザリしてしまい

目覚めることなく、彼に死刑を求めた。

 

プラトンが、民主主義的な政治体制を

理想としなかったことの伏線が

このあたりにあるのかもしれない。

 

 

ソクラテス最期の演説

 ――プラトン著「ソクラテスの弁明」

   この演説の後、死刑判決を受け入れ

   差し出された毒杯をあおった

 

もう行かなくてはなりません

それぞれの道へ

わたしは死ぬために

あなた方は生きるために

どちらが善き道なのか

ただ神のみがご存知です

 

 

 


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