デジタル通貨について

ユーロがデジタル通貨の導入を割と真面目に検討しているらしい。ユーロという通貨は、今年から採用されているクロアチアを含め20の国家で用いられています。1999年に始まった通貨統合の試みは、2008年のリーマン・ショック、2015年のギリシャ危機を乗り越えて、次のステージを模索している。通貨発行権を有する中央銀行は、決済機能を提供するほか、金融政策によって物価に対する相対的な通貨価値をコントロールし、自国の安定的な経済成長を司っています。私はユーロ導入当初、金融政策という重要な政策手段を各国政府が放棄することはないと考え、この試みはうまくいかないと思っていました。現代金融政策の枠組みを構築した英国は、今でも頑なに自国通貨ポンドを維持しています。ところが、以下のFTの記事を読むと、経済力の弱い国にとってユーロ通貨への参加は、自国に通貨価値の安定という得難い利益がもたらされていて、むしろ金融政策を放棄するデメリットを上回っているという状況のようです。

独自の変動通貨を持つという意味での通貨の「独立性」を維持することはこの数年、以前考えられてきたほど重要ではないことが判明している(し、そう理解されるべきだった)。独自の通貨を持てば、通貨の価値が下がった時には輸出が増えるため、マイナスのショックを相殺できる利点があるとされてきた。
しかし、英国が16年に国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた後にポンドが下落した際、世界は様々な国境を越えて長く複雑なサプライチェーン(供給網)を築いてきたため英国の輸出は増えることはなく、むしろ輸入価格の上昇を招き、国民は貧しくなるという点が浮き彫りになった。
一方、通貨統合の利点は今回の欧州のエネルギー価格高騰の危機によって明らかになった。例えば2009年にユーロを導入したスロバキアをみてほしい。ユーロを導入していない周囲の国々と同様、スロバキアも高いインフレ率と戦わなければならないが、ユーロ圏に加盟しているおかげで欧州中央銀行(ECB)の現在の政策金利2.5%という大幅に低い金利の恩恵を受けている。ユーロを導入していない隣国のチェコやポーランドの政策金利は現在、その3倍に近く、ハンガリーに至っては13%という高さだ。

[FT]存在感高まるユーロ、デジタル通貨でも先進性ー2023年1月14日 日本経済新聞

金融政策の放棄が障害にならないなら、決済という観点で単一通貨の強みが大きく生きてきます。これがデジタルになると、決済の利便性がますます高まり、銀行の淘汰(地方銀行の役割がますます怪しくなる)を通じて決済システムの安全性も増すという、消費者にとって多大なメリットが期待できます。技術的な課題は少なくないと思いますし、何より国家間の利害対立が紛争という形で表れる状況を否定しえない環境で、他国の金融政策に依存することの政治的な課題も無視できない状況ではありますが、デジタル通貨を真面目に考えるべき時代になったと再認識しました。

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