透析を受けている患者様に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)について

TAVI(タビ)とは、大動脈弁狭窄症に対してカテーテルを用いて、人工弁を植え込むいわゆる経カテーテル的大動脈弁の植え込み術です。201310月に保険適用とされ8年間行われてきました。従来の外科的人工弁置換術に比べて、心臓を止めずに(人工心肺を使わず)、胸を開かないため、体への負担が少なく高齢者でも治療が可能だといわれております。

これまでは透析治療を受けている方は適用外とされていました。その原因として透析患者さんに対するカテーテル治療の成績があまり良くなかったことと、石灰化が急速に進行するので生体弁そのものの持ちが悪かったことに起因します。一方で透析患者さんに対する外科手術による成績があまり良くなかったことから、一部の病院に限ってだけ透析患者様に対するTAVIが開始されています。

一般的に透析患者さん以外の大動脈弁置換の外科手術成績はリスクが2.7%程度あるのがアメリカおよび日本の平均的な成績です。これに比べて透析患者さんとなるとそのリスクは3倍から4倍高くなり、10%程度の手術死亡が見込まれる場合があります。

しかしながら、ニューハート・ワタナベ国際病院で行われた透析患者さんの弁置換手術を見てみると、透析を定期的にきちんと行い血液バランスをとりながら安全な手術を行えば透析患者さんであっても良好な成績が得られることがわかりました。

つまり透析患者さんであっても必ずしもTAVIが良いわけではないことがわかります。また透析患者さんは外科手術であっても生体弁の成績があまり良くないので機械弁にすることが良いのですが、カテーテルでは機械弁を入れることができません。

人生100年時代に、TAVIによりカテーテル治療で6年程度の寿命の生体弁を入れた場合、その後は外科手術を必要とします。そうなるのであれば最初から機械弁を入れると言う選択肢が、最も安全なものと当院は考えております。

リンク先:大動脈弁形成術とは?