孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

深刻な問題を抱える経済状況  欧州・アメリカ・中国、そして日本

2023-05-27 21:01:05 | 経済・通貨

(アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、日本の過去40年間の消費者物価上昇率の推移 【4月27日 三菱UFJ】欧米各国では2022年にインフレが進行しましたが、この流れが今も続いています。)

【イギリスなど欧州 特に食料品価格上昇が止まらない】
世界各国の経済状況、まずイギリスなど欧州経済を見ると、物価上昇による生活苦が進行しています。

****英国で支払い不能者が急増、生計費・物価高騰で=FCA調査****
英金融行動監視機構(FCA)が16日公表した調査報告によると、今年1月までの半年間に国内で料金支払いや債務返済を履行できなかった成人は560万人と、昨年5月の前回調査の420万人から急増した。生計費と物価の高騰が国民の懐を直撃したためだ。

英国の家庭は昨年9月以降、2桁の物価上昇率に見舞われ続けている。また政府当局は、来年3月までの2年間の生活水準が記録的な落ち込みになると予想している。

FCAはロシアがウクライナに侵攻して食料とエネルギーの価格が跳ね上がったことを受け、昨年5月にこうした調査を開始した。

今回の調査結果では支払いを続けるのに苦戦している成人が大幅に増えたことも分かった。FCAの消費者・競争担当エグゼクティブディレクター、シェルドン・ミルズ氏は、生計費増大の「リアルな影響」が浮き彫りになったと説明した。

一方、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の急激な利上げに伴って、昨年5月時点で住宅ローンを抱えていたという人の29%は1月までの半年で利払い負担が増えたと回答。賃貸住宅居住者の34%は家賃が上がったと答えた。

クイルターの住宅ローン専門家カレン・ノイエ氏は「生計費増大と金利上昇が重なり、家計はぎりぎりまで追い込まれ、場合によっては破綻している」と指摘した。

債務問題に取り組んでいる非営利団体のリチャード・レーン氏は、多くの人が数十年に1度という物価高に対処しきれなくなっており、無料相談サービスに対する引き合いは過去3年で最も強くなっていると述べた。【5月17日 ロイター】
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その物価上昇は、4月の消費者物価指数は一桁に収まったものの、食品など生活に身近な品目では高止まりが続いています。

****4月の英国消費者物価指数、8.7%上昇 8か月ぶりに10%を下回るも生活に身近な品目は高止まり続く****
イギリスの4月の消費者物価指数が、去年の同じ月と比べて8.7%上昇しました。インフレ率は8か月ぶりに10%を下回りましたが、食品など生活に身近な品目では高止まりが続いています。

イギリスの統計局が24日に発表した4月の消費者物価指数は、前年同月比で8.7%上昇と、前の月の10.1%を下回りました。

上昇率が10%を下回るのは去年8月以来、8か月ぶりですが、食品や飲料の価格は4月までの1年間で19.1%上昇しました。これは45年ぶりの高水準で、生活に身近なものの高止まりが続いています。
インフレを受けて、イギリスでは今週も若手の医師などが賃上げを求めるストライキを行っていて、市民生活に影響が出ています。【5月24日 日テレNEWS】
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状況は、他の欧州諸国も同様です。

****エネ危機過ぎた欧州、次は食品高騰ショック****
中銀は不意打ちを食らい、債務を抱えた政府には救済を求める圧力がかかる

エネルギー危機から抜け出したばかりの欧州各国が、今度は食料品価格の高騰に直面している。地域全体で食生活が変わり、消費者は生活を切り詰めることを余儀なくさせている。

こうした状況は、エネルギー価格の下落を背景にインフレ率が全般的に低下しているにもかかわらず生じている。過去数十年で最悪のエネルギー危機を乗り切るために、昨年、企業や家計に対して何十億ドルもの支援を行った各国政府にとって、食品価格の急上昇は新たな政策課題となっている。

24日に発表された最新データによると、英国の4月のインフレ率は、エネルギー価格の下落に伴い、欧州全体や米国と同様に大幅に低下した。しかし、食品価格は前年同月比19.3%上昇した。

食品価格の継続的な高騰に中央銀行当局者は不意を突かれた。昨年実施した緊急支援のコストに依然あえいでいる政府には、新たな救済に乗り出すよう圧力がかかっている。借り入れコストの上昇に悩まされている家計にも重荷だ。

フランスでは、ロシアによるウクライナ侵攻以降、家計部門の食料購入が10%以上減少し、エネルギー支出は4.8%減少した。

ドイツの3月の食品売上高は前月比1.1%減少した。前年同月比では10.3%減と、1994年の統計開始以来最大の落ち込みとなった。連邦農業情報センターによると、2022年の同国の食肉消費量は1989年の統計開始以来最も少なかった。ただ、これは植物由来の食事への移行が続いていることも一因となった可能性があるという。

食料品小売店は供給業者による値上げ分をすべて消費者に転嫁できるわけではないため、利益率が低下している。スーパーマーケットチェーン、エデカのマルクス・モザ最高経営責任者(CEO)はドイツメディアに対し、価格が急上昇していることを理由に、何社かの大手供給業者への商品の発注を止めたことを明らかにした。

英統計局が今月に入って実施した調査によると、下位20%の貧困層の世帯の6割近くが食料品の購入を減らしていることが分かった。

「これはアクセスの問題だ」。保険大手アリアンツのチーフエコノミストで、かつて国連世界食糧計画(WFP)に勤めていたルドビク・スブラン氏はこう述べる。「全体の食料生産量は落ち込んでいない」

食料が消費支出に占める割合はエネルギーよりはるかに高いため、価格の上昇幅が比較的小さくても、家計により大きな影響が及ぶ。英シンクタンクのレゾリューション財団は、2020年以降の食費負担の拡大分の累計が今夏までに280億ポンド(約4兆8300億円)に達し、エネルギー費負担の拡大幅(推計250億ポンド)を上回ると予想している。

「生活費の危機は終わっていない。新たな段階に入っただけだ」。同財団のトーステン・ベルCEOは最近の報告書でこう述べた。

インフレ率を押し上げているのは食料品だけではない。英国では、食品とエネルギーを除いたコアインフレ率が、3月の6.2%から4月には6.8%に上昇し、1992年以来の高水準に達した。4月のコアインフレ率は、ユーロ圏でも史上最高水準近くまで上昇した。

それでも、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のアンドリュー・ベイリー総裁は23日に英議会で、食品価格の高騰はインフレの「第4のショック」になったと語った。第1~第3のショックは、新型コロナウイルス流行下のサプライチェーン(供給網)の障害による供給ひっ迫、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の上昇、労働市場の予想外のひっ迫だったという。

欧州各国政府はエネルギー価格高騰の際に家計支援のため巨額の財政支出を行ったが、現在は借金をする余地が以前より狭まっている。2020年にコロナ禍が始まってから債務が急速に積み上がっているためだ。

イタリア、スペイン、ポルトガルなど一部諸国の政府は、消費者の負担軽減のため、食品の付加価値税(消費税に相当)の税率を引き下げた。一方、食品小売店に価格を抑制するよう圧力をかけている国もある。仏政府は3月、主要小売り各社との間で、可能な限り値上げを避けるとの合意をまとめ上げた。

小売業者は、アイルランドなど他の多くの欧州諸国でも監視対象になっている。英国では国会議員らが、「農場から食卓まで」網羅する食品サプライチェーン全体に対する調査を開始した。

ジェレミー・ハント英財務相はロンドンで開かれたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のCEOカウンシルサミットで、「昨日は食料生産者を首相官邸に呼んだ。また、スーパーマーケットや農家の人々と話をし、サプライチェーンのあらゆる要素に目を向け、コスト削減の一部をできるだけ早く消費者に還元するためにできることを検討している」と述べた。

英国で競争政策を担当する競争・市場庁(CMA)は先週、小売業者への監視を強める方針を明らかにした。

一部のエコノミストは、こうした監視の強化が具体的な結果につながると予想している。小売業者は自社のイメージを悪くしたくないため、サプライヤーに価格を下げるよう圧力をかけるのではないかとの見方からだ。(中略)

食品価格がこれほど長く、これほど急激に上昇している理由が完全に明らかになっているわけではない。国際商品市場(ここで農家に支払われる価格が決まる)において、食料価格は2022年4月以降下落が続いている。

だが、一次産品のコストは最終価格のほんの一部を占めるにすぎない。消費者は加工・包装・輸送・流通のコストも支払っており、生産者と消費者の間の価格差は異例なほど広がっている。

BOEのベイリー総裁の見立てでは、ロシアのウクライナ侵攻が始まった頃、食料生産者は先行きが不透明な時期に供給を確保しようと躍起になり、肥料やエネルギーなどの供給業者と割高な長期契約を結んだことが、BOEが食品価格に関する見通しを誤った理由の一つだという。

だが、小売業者への目が厳しくなっていることからもうかがえるように、利益率の拡大も一因ではないかとの見方も政策立案者の中にはある。ベイリー総裁は議会での発言で、食品供給業者の責任を問うことには慎重な姿勢を示した。「(彼らは)昨年初めに圧迫された利益率の回復を図っている」とベイリー氏は述べている。【5月25日 WSJ】
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【アメリカ 給料ギリギリの生活をしているZ世代の成人】
アメリカでも、一部富裕層をのぞけば「大部分の米国人が『現在の暮らしは50年前よりも悪くなっている』と感じている」といった生活苦が進行しています。

****米国は「格差社会」どころか「総貧困社会」に? 多くの国民は既に景気後退の痛みを感じている****
高級品を扱うビジネスは相変わらず好調だが

米国経済のハードランディング(景気の急激な失速)懸念が強まっている。
今年第1四半期のS&P500種株価指標構成企業の利益は前年比3.7%減少し、2四半期連続で業績が悪化した。第2四半期以降も業況が改善する見込みが立ってない。

全米自営業者連盟が5月9日に発表した4月の中小企業楽観度指数(1986年=100)も89.0となり、2013年1月以来、10年ぶりの低水準となっている。

企業活動だけをみると、米国経済は既に「リセッション(景気後退)」入りしたと言っても過言ではない状況だ(5月15日付ブルームバーグ)。

企業活動が低迷しているものの、今年第1四半期の米国の実質国内総生産(GDP)は前月比1.1%の増加となった。GDPの7割を占める個人消費が堅調だったからだ。

米国の堅調な消費を支えているのは富裕層だ。景気が減速気味になっている中、富裕層の購買力は衰えることなく、高級品を扱うビジネスは相変わらず好調だ。(中略)

だが、多くの米国人の消費行動はまったく違う。

「給料ギリギリの生活をしているZ世代の成人」は65.5%
今回も景気が減速し始めると、過去と同様、いやそれ以上に、少しでも安い商品を購入するようになっており、低価格を売りにした店舗は活況を呈している。その代表格は徹底した低価格戦略で知られる米小売り大手ウォルマートだ。今年2〜4月期決算は前年比8%の増収となっている。

多くの米国人が「生活防衛」に走る傾向が鮮明になっているが、必死の努力にもかかわらず、彼らを取り巻く状況は悪化するばかりだ。
 
ルームバーグが4月26日から5月8日にかけて調査した結果によれば、日々の生活費の捻出が困難となった米国の成人の数は8910万人に達した。その比率も38.5%と記録的な水準となっている。

特に深刻なのは若年層だ。
フィンテック企業レンデイングクラブが米フィンテック情報企業PYMNTSと提携して毎月実施している調査では、今年3月時点で「給料ギリギリの生活をしているZ世代の成人(26歳以下)」が65.5%に上ることが分かった。これを伝えたブルームバーグ(5月1日付)は、「Z世代はキャリアをスタートさせたばかりで賃金が相対的に低く、負債の割合が大きい傾向にある」と解説している。

新型コロナのパンデミックのピーク時に2.1兆ドルに達していた家計の貯蓄超過はその大半が消失してしまった。「足元の超過分(約5000億ドル)も年末までになくなってしまう」と予測されている(5月9日付ロイター)が、債務上限問題で与野党が対立していることから、家計に対するさらなる財政支援は期待できない。

前述のブルームバーグの調査では、2500万人以上の米国人がクレジットカード・ローンに依存していることも明らかになっている。

生活費の不足を補填するために不可欠となったクレジットカード・ローンだが、長引くインフレや金利上昇のせいで延滞率が急上昇している。(中略)

米地銀の相次ぐ破綻で金融機関は消費者融資に対しても慎重な姿勢を取り始めており、生活費を捻出できない米国人がさらに増加することは確実な情勢だ。

米国は「格差社会」どころか「国民総貧困社会」に?
「大部分の米国人が『現在の暮らしは50年前よりも悪くなっている』と感じている」との指摘がある(5月15日付ZeroHedge)ように、米国は「格差社会」どころか「国民総貧困社会」になってしまった感が強い。

そのせいだろうか、リセッション入りしていないのにもかかわらず、生活困窮者や福祉施設に食料を提供するフードバンクの需要が高まっており、その水準はパンデミック時と同様の水準となっている。ジョージア州アトランタ地域では、食料配給に頼っている人の4割がこれまで配給を受けた経験がなかったという(4月30日付ロイター)。

家賃が払えず、ホームレスになる米国人も日に日に増えている。
多くのテック企業を輩出したカリフォルニア州サンフランシスコ市の海岸沿いでは、全長2マイル(約3.2キロメートル)にわたってホームレスが寝泊まりするキャンピングカーの行列ができる有様だ(5月8日付ZeroHedge)。

同市内では「家賃の高騰などで都心部に人が減ったことで犯罪が増える」という悪循環が起きている。万引きが組織犯罪化していることに悲鳴を上げたショッピングモールの閉店も相次いでいる。このため、一部の地域はゴーストタウンになっており、ホームレスたちの生活環境は悪化の一途を辿っている。

5月14日付ニューヨーク・タイムズは「米国の大都市で路上生活に追い込まれた多くの人々が命を落としている。カリフォルニア州サンディエゴ市のある病院では、昨年だけで10500人のホームレス患者が搬送された。現場からはホームレスへの支援に積極的でない政府に対する不満が爆発している」と報じている。

このように、多くの米国人はリセッションの痛みを既に感じている。彼らが政府のウクライナへの軍事支援に「ノー」を突きつける日は近いのではないだろうか。【5月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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欧米からの軍事支援に頼るウクライナにとって、もっとも手ごわい敵はロシアではなく、欧米経済の悪化に伴う世論の変化かも。ウクライナ支援に限らず、国内経済が悪化すれば、世論は生活防衛的、内向きになります。

債務上限問題で与野党が対立、政府機能が麻痺するような状況には本来ないのですが・・・。

【中国 若者の失業率20.4%】
上記記事でアメリカZ世代の苦境が取り上げられていますが、経済体制が異なる中国でも若者の失業率が深刻です。
中国国家統計局は16日、4月の都市部の16〜24歳の失業率が20.4%だったと発表しました。記録が確認できる2018年以降で最悪となっています。

****中国の大卒者は就職難 雇用ミスマッチ****
景気回復にもかかわらず若年層の失業率が上昇

中国では若年層の失業率の急上昇に歯止めがかからず、政府にとって大きな頭痛の種となっている。この問題には雇用のミスマッチが関係しており、政府が打ち出す解決策が何年も効果を発揮しない可能性もある、と多くのエコノミストが話している。

16~24歳の若者の失業率は4月に20.4%と過去最高を更新。数カ月前から大幅に上昇し、新型コロナウイルス流行前の水準をはるかに上回っている。2019年の失業率は概して13%以下にとどまっていた。

中国では4月の都市部全般の失業率が5.2%と前年同月の6.1%を下回っており、これが若者の失業率の高さを一層際立たせている。

今夏には過去最高となる1160万人の大学生が卒業する見込みであることから、若者の雇用市場は一段と悪化すると一部のエコノミストはみている。

エコノミストによると、主な問題点は中国が高賃金・高技能職を十分創出できていないことにある。同国では高学歴の若者が増えており、その多くは前世代の人たちよりも仕事に高い期待を抱いている。

多くの若者は、妥協して賃金が低めの仕事に就くことよりも、さらなるチャンスが訪れる可能性に賭け、就職を先延ばしにすることを選んでいる。

クレディ・スイス・グループの中国担当チーフエコノミスト、デービッド・ワン氏は「中国の若者の失業率の高さは一過性のものではなく、構造的なものだ」と指摘。「若者が訓練を受けているスキルと既存の雇用が必要とするスキルがマッチしていない」と述べた。(後略)【5月25日 WSJ】
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【日本 給料が上がらず、国際比較ではどんどん下位に沈み込んでいる状況】
では、日本は・・・と言えば、給与がまったく上がらないことは周知のところ。国際比較ではどんどん下位に沈み込んでいる状況です。


韓国、台湾、シンガポール、香港、スロベニア、リトアニア、イスラエルといった国々に抜かれ、今の日本の給料に近い国々のグループを見てみると、ポーランド、エストニア、トルコ、ラトビア、チェコなどといった国々が並んでいる・・・・といった以前では考えられないような悲しい状況。【5月27日 東洋経済ONLINEより】

原因は、日本では十分なイノベーションを起こせず、労働生産性が上昇していないことにありますが、スペースもないのでまた別機会に。
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