孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  「外に出るのは男のすることだ」「女性がクリケットをプレーする必要はない」

2021-09-18 23:03:26 | アフガン・パキスタン
(女性問題省の建物の看板が、かつて女性抑圧の象徴だった、勧善懲悪省の看板に差し替えられた【9月18日 日テレNEWS24】)

【「外に出るのは男のすることだ」】
今日もアフガニスタン・タリバンの話。
悪い冗談、もしくは女性の権利保護を求める欧米からの圧力には屈しないというタリバンの意思表示でしょうか。

****女性問題省が勧善懲悪省に タリバン、抑圧懸念強まる****
アフガニスタンで暫定政権を樹立したイスラム主義組織タリバンは17日、首都カブールにある女性問題省の建物表示を勧善懲悪省に置き換えた。

タリバン旧政権時代、同省は宗教警察の役割を担い、恐怖政治の象徴だった。極端なイスラム原理主義に基づく人権抑圧の懸念が強まっている。

一方、教育省は17日、男子生徒に対する学校の授業を18日に再開すると発表した。女子生徒への言及はない。

高等教育省は女性が教育を受ける権利を保障すると強調したが、授業は男女別々にし、女性に髪を隠す「ヘジャブ」の着用を義務付ける方針を示していた。【9月18日 共同】
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女性の権利を保護する省庁だった女性問題省の看板が、旧政権時代に女性抑圧の象徴だった勧善懲悪省の看板に差し替えられる・・・タリバン支配を許すということがどういうことなのかを如実に示す出来事です。

“女性問題省の職員だった女性たちは、タリバンに閉め出されたとして「私たちは、この省を誰にも渡さない」などと抗議の声を上げていました。”【9月18日 日テレNEWS24】

多くの男性がタリバンの暴力の前に沈黙するなかで、女性の教育や就労の権利を訴えて女性達のデモが世界の注目を集めましたが、タリバン兵士がムチをふるうなど、厳しい現実があります。

****「私たちは声をあげ続ける」デモを続けたアフガン女性達の“その後”****
20年前に逆戻りしたような驚愕の光景
アフガニスタンの首都・カブールで女性の教育や就労の権利を訴えていた女性達のデモ。そこに武装勢力タリバンの戦闘員があらわれ、参加者の女性を次々と鞭で強くたたき付け、暴力的にデモを阻止する−そんなショッキングな映像が捉えられた。

2021年8月15日にタリバンがカブールを陥落させ、政権を掌握してから1カ月あまり。20年前のかつての政権で女性の権利を著しく制限した当時に逆戻りしたかのような光景が再び出現したのだ。

タリバン側は女性の高等教育は保障するものの、女子学生は「ヒジャブ」と呼ばれるスカーフの着用を義務づけると発表、学校や職場は男女別々にする動きも広がっている。街では女性の姿が大幅に減少し、国営テレビの女性キャスターは男性に代わった。

一方、かつてのタリバン統治下では決して見ることのなかったある光景に世界が注目した。女性達による抗議デモだ。

女性達の多くは顔を隠さず、タリバンの戦闘員達の目の前で声をあげ続けた。多くは高等教育を受けた女性達で、首都カブールに住み国内では経済的に恵まれている。貧困や就学率が長年課題となっているこの国で、彼女たちは恵まれた立場を失うリスクを冒し行動した。

タリバンはかつて極端なイスラム法の解釈から女性の教育や就業を禁じ、さらには残虐な刑を科した。
現在は旧政権時代とは違いイスラム法の範囲内で女性の権利を守ると主張しているが、国際水準で人権を守るとは考えにくくデモを行うリスクが極めて高いことは想像に難くない。

彼女達はなぜそれでも声をあげたのか。FNNはデモ主催者の一人である27歳のアテファ・モハマディさんに話を聞いた。モハマディさんは、タリバンによる抑圧により、今後デモを続けることが困難な状況であるとしながらも、「声をあげ続ける」と強調した。以下、その証言を詳報する。

“生きて帰れないかもしれない”と思った
アテファ・モハマディさん:デモをするたびタリバンは阻止しようとしてきます。拳銃を見せつけながら迫ってくるんです。それでも私たちは「世界に自分たちの声を届けよう」とデモを続けました。

ある日のデモには国内や海外から報道陣が来ていました。私たちは彼らの前を行進していたのですが、戦闘員は記者を逮捕しました。私たちが撮影した映像も削除させられました。

さらに戦闘員は私たちを取り囲み、威嚇射撃を繰り返しました。私はこのとき“生きて帰れないかもしれない”と思った。

その後、無理やり地下に連れて行かれ、地べたに座らされました。戦闘員は私に銃をつきつけ「動けば撃つ」と言い、逆さに持った銃で私の肩や背中、頭を殴ったんです。私は「女性たちもイスラム教徒。なぜ同胞に手を上げることができるのか」と言いました。声をあげるのは私たちの権利です。

アテファ・モハマディさん:戦闘員は自らを指でさしながら「なぜ女が家の外に出るんだ」「外に出るのは男のすることだ」と言いました。

私たちを指さして「誰が外に出るよう指示した?」とも。彼らは、私たちに自由があるとは考えていません。私たちはこの日、とてもデモを続けることはできませんでした。そ

れでもカブール以外の、例えば、タホール州、バダクション州、カピショーン州、バルワン州では最後までデモを続けています。

独裁による不当な人権侵害は許せない
アテファ・モハマディさん:アフガニスタンの人々には決断する力があります。アフガン女性のなかには、この20年間教育を受けるために奮闘した人々がいます。女性にはこれまで社会を作るという大きな役割があったから。

でもタリバンは女性の自由、教育や就労を否定しています。暫定政権の閣僚に女性は1人もいません。

私たちは世界に声を届けるために努力します。デモをすれば注目を集め弾圧される。デモ以外の選択肢は、様々な方法で自分たちの声を伝えることです。女性の権利が認められるまで、私たちは声をあげ続けます。独裁による不当な人権侵害は許せない。

モハマディさんは取材後「私たちはデモ以外の手段を考えなきゃいけない。メディアの取材に応じたり、国外の人たちとのコミュニケーションチャンネルを作ったり、デモができなくてもそういう方法で声を上げていきたい」とメッセージを寄せた。

「声を上げ続ける」女性達の動きはSNS上にも広がっている。
アフガニスタン・アメリカン大学の元教員バハル・ジャラリ氏は、真っ黒なドレスとベールを身にまとった女性の写真を引用ツイートし、「アフガニスタンの歴史の中で、このような服装をした女性はいませんでした。私がアフガンの伝統的なドレスを着た写真を投稿したのは、情報を提供し、教育を行い、タリバンが広めている誤った情報を払拭するためです」と投稿。【9月17日 FNNプライムオンライン】
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「なぜ女が家の外に出るんだ」「外に出るのは男のすることだ」・・・タリバンの考えをシンプルに示すものですが、抵抗する女性たちが直面する壁は、それが単にタリバンの考えであるというだけでなく、おそらくタリバン以外の多くの一般男性もこの点ではタリバンに本音では共感するものがあるのでは・・・という「現実」です。

上記記事最後に取り上げているバハル・ジャラリ氏のSNSについては下記のとおり。

****アフガン出身の女性たち、カラフルな民族衣装でタリバンに抗議****

アフガニスタン出身の女性たちがカラフルな民族衣装をまとった姿をSNSに投稿して、イスラム主義勢力タリバンに抗議している/From Twitter

アフガニスタンで実権を握ったイスラム主義勢力タリバンが女子学生らに黒スカーフの着用を義務付けたことに抗議して、世界各地にいるアフガン出身の女性らが色鮮やかな民族衣装をまとい、その画像を次々とツイッターに投稿している。

タリバンはシャリア(イスラム法)の厳格な解釈に基づき、大学などでイスラム教徒の女性が頭を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用を義務付けた。11日に拡散した写真には、首都カブール大学にある公立大学の講堂で、全身を黒い衣服で覆った女子学生の集団がタリバンの旗を振る場面が写っていた。

大学内の集会で黒い衣服を身につけてタリバンの旗を振る女子学生=11日、アフガニスタン首都カブール/AAMIR QURESHI/AFP/Getty Images

民族衣装姿の投稿を始めたのは、アフガニスタン・アメリカン大学の元教員、バハル・ジャラリさんとされる。ツイッター上で黒装束の女性の写真を引用し、「アフガンの歴史上、女性がこんな服装だったことはない」と主張。タリバンが広める誤った情報を打ち消すためとして、自身の民族衣装姿を披露した。(後略)【9月14日 CNN】
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大学集会の画像、黒一色で、いったい何が写っているかもわかりづらい不気味な画像です。

もっとも、上記のような「抵抗」を示せるのは国外に居住するアフガニスタン人であり、国内でタリバンの暴力に直面する女性たちには難しいことではあります。

【「女性がクリケットをプレーする必要はない」】
「なぜ女が家の外に出るんだ」「外に出るのは男のすることだ」と同様に、「女性がクリケットをプレーする必要はない」というのもタリバン思考です。

****タリバン暫定政権が女性権利制限 大学でスカーフ義務、クリケット禁止****
アフガニスタンで暫定政権を立ち上げたイスラム原理主義勢力タリバンが、女性の権利を制限する動きを強めている。

大学では髪を隠すスカーフ着用が義務化され、スポーツ参加も大幅に規制される見通しだ。

タリバン幹部は女性の権利保証を約束したが反故(ほご)にした形で、極端なイスラム法解釈を背景にした抑圧が再来する可能性が高い。

暫定政権のアブドル・バキ・ハッカニ高等教育相代行は12日、女性も大学に通えるとする一方、女子学生には頭を覆うスカーフ「ヒジャブ」着用が義務付けられ、男女共学は禁止されると明らかにした。ハッカニ氏は「国民はイスラム教徒であり、それを受け入れるだろう」と述べた。

教員も異性に対して教えることは基本的に認められない。ハッカニ氏は女性教員がいない場合、「男性教員が(姿を見せずに)カーテンの後ろから教えることもできる」と説明した。具体的な科目名は明らかにしていないが、イスラム法の内容にそぐわない一部の科目を高等教育のカリキュラムから削除する考えも示した。

また、タリバン文化担当のワシク幹部は8日、オーストラリアメディアとのインタビューで、アフガンで人気が高いクリケットについて「顔や体が隠されない状態になる可能性がある。イスラム教は女性がそのようになることを認めていない」として、競技参加を禁じる意向を示した。「女性がクリケットをプレーする必要はない」とも述べた。

タリバンは8月15日の首都カブール制圧後、「女性は働けるし、教育も受けられる。社会に必要な存在だ」と明言してきた。

だが、今月7日に発表された暫定政権の閣僚33人に女性は含まれておらず、暫定政権では旧タリバン政権(1996〜2001年)で女性の権利弾圧を主導した勧善懲悪省を復活させた。

国連のバチェレ人権高等弁務官は13日、「タリバンが女性の権利を守るという保証とは裏腹に、女性はどんどん公の場から排除されている」と懸念を表明した。【9月13日 産経】
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クリケットなどのスポーツ、多くの活動は、男性であれ、女性であれ、“やりたいからやる”のであって、“必要”の問題ではない・・・その基本的なところがタリバンには理解できないようです。

“必要”云々の発想で行くと、女性が必要とされるの家庭を守り、夫に仕え、子供を育てること・・・・という話になるのでしょう。(日本の保守的な男性も、一部女性を含めて、本音で共感される人も多いのでは)

****アフガンのサッカー女子ユース選手ら81人、パキスタンに脱出****
アフガニスタンのサッカー女子ユース代表チームが、国境を越えてパキスタンに入国した。16日にはさらに30人ほどの関係者が到着する予定だという。
チームのメンバーたちはこの1カ月、女性の権利を弾圧するタリバンを恐れ、身を隠してきた。

成人女子の代表チームは先月、カブールから空路で出国した。一方、女子ユース代表チームは、パスポートなどの書類がないため、移動できずにいると伝えられていた。
しかし、選手32人とその家族らは、慈善団体「Football for Peace(平和のためのサッカー)」がパキスタン側に働きかけた結果、査証(ビザ)の発給を受けたという。

パキスタンから他国に
パキスタン・サッカー連盟の関係者によると、一行は全員で81人。同国東部ラホール市にある同連盟本部に収容される見通しだという。他に34人が16日に到着予定だとした。
選手たちは、他国に亡命申請するまで30日間、厳重な警備の下でパキスタンにとどまるという。(中略)

選手たちは、1カ月前にタリバンが首都カブールを制圧した後、女子代表チームの元キャプテンのカリダ・ポパル氏から連絡を受けた。すべての写真をソーシャルメディアから削除し、道具を焼き捨てるよう指示された。新たな政権から身を守るためだと言われた。(中略)

タリバンが以前政権を握っていた1996〜2001年には、女性のスポーツ参加が禁止された。
今回、タリバンが再び権力を掌握してからは、スポーツや文化の分野の著名な女性らが、弾圧を恐れて国外に逃れる動きが続いている。人気歌手アリアナ・サイード氏と、映画監督サハラ・カリミ氏は先月、国外に避難した。【9月16日 BBC】
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【「男女が一緒に働けないことは明白だ」】
仕事やスポーツ以前の問題で、旧タリバン政権下では、女性は男性親族の同伴がなければ一人で外出することさえできませんでした。夫と死別した女性は、生活していくことさえ難しい時代でした。

****タリバン支配下のアフガン女性たち*****
アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧してから1か月たち、注目されているのが「女性の権利」だ。旧タリバン政権下でその権利を大きく制限されてきた女性たちの間では、手に入れた自由がまた制限されてしまうのではないかと不安が広がっている。アフガン女性たちに現状を聞いた。(中略)

■旧タリバン政権下で権利を制限されてきた女性たち
1996年から2001年まで続いた旧タリバン政権下では、女性の権利は大きく制限されていた。

例えば…
・頭の先からつま先まで全身を覆うブルカの着用義務  ・学校教育、就労の禁止  ・外出は男性親族の同伴が必要などの制約があった。

それが2001年、アメリカ同時多発テロをきっかけに、アメリカがアフガンを攻撃。旧タリバン政権が崩壊したことで、女性たちはそれまでの抑圧から解放された。

女性YouTuberたちが登場し、日常生活の様子を動画で配信。おしゃれをして街を歩き、その様子を積極的に発信するなど、タリバン政権下とは打って変わって女性たちが輝いているように見えた。

しかし、今回タリバンの支配が復活したことで、せっかく手に入れた自由がまた制限されてしまうのではないかという不安が女性たちの間で広がっている。(中略)

タリバンの復権以降、女性たちはどんな思いで過ごしているのか、アフガン女性2人に話を聞いた。

以前NGOで働いていて現在はパキスタンに避難している30代の女性――「タリバンから女性は働くことができないと言われ、新しい方針が決まるまでは家にいるよう言われた」「以前は、人と集まることも仕事もピクニックなども自由にできていたのに、今はそのすべてが奪われた」

日本に留学経験があり、現地の国際機関に勤めていた20代の女性――「出勤しても、オフィスは閉鎖され、タリバンの戦闘員に追い返され、いまだ出社できない状態」「外国人と仕事をしていたことが分かると危害を加えられる恐れがあることから、自宅の書類をすべて燃やした」「銀行にお金をおろしに行ったときには銃で武装したタリバン兵がいて、彼らの意に沿わない行動をしたら死につながってしまうだろう」

と不安の中で生活している。20年ぶりに復権したタリバンは国際社会の目を意識して、表向きは女性の権利を保障すると主張している。しかし、女性たちの話や今実際に起きていることを見ていると、女性の権利がどこまで守られるのかは不透明で、今後、国際社会が注視していく必要がある。【9月15日 日テレNEWS24】
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タリバンの幹部ワヒードラ・ハシミ氏は「シャリアは男女が一つ屋根の下で集まることは許していない」とし、「男女が一緒に働けないことは明白だ」と語ったとも。【9月14日 ロイターより】

中国の習近平国家主席は17日、いかなる場合においても他国の内政問題に干渉するようなことはあってはならないと強調していますが、基本的人権を踏みにじる統治に「それは違う」と声をあげるのは隣人としての当然の責務であると考えます。

問題は、どうやってタリバンに行動を変えさせるかです。単に「説教」しても聞く耳はもたないでしょう。

ひとつは凍結されている海外資産を人質にとった圧力ですが、もうひとつは、パキスタンなどタリバンに影響力を持つ国に対して(表立っては「自分たちはタリバンとは関係ない」と言うだけでしょうから)水面下で強い圧力をかけて、タリバンに対する影響力を行使させることでしょう。

****タリバンが女性の権利確約 国連高官「履行が重要」*****
アフガニスタンの人道支援に当たる国連人道問題調整室(OCHA)のグリフィス室長(事務次長)は14日、共同通信の単独インタビューに応じた。イスラム主義組織タリバン指導部と今月会談した際、タリバン側が女性の権利尊重や人道支援の安全を確約したと明らかにし、「実際に履行されるかどうかが重要」であり、国際社会が注視する必要があると述べた。
 
OCHAは人道支援面での国際的な調整を担っており、タリバン指導部が示した今回の見解は国際社会と一定の協調を進めていきたい意思の表れといえる。
 
会談は5日、人道危機が懸念されるアフガンの首都カブールで行われた。【9月15日 共同】
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