孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ  ワクチン接種証明、接種義務化をめぐる欧米各国・日本の状況

2021-09-19 23:24:10 | 疾病・保健衛生
(ブロードウェーの劇場に入場する前にワクチン接種カードなどを確認する様子=8月4日【9月14日 CNN】)

【ワクチン接種を前提にした「ウィズ・コロナ」の生活】
日本もようやくワクチン接種率が上がって、人口の半数を超えるレベルに。

****国民の50%超が2回接種完了 米国に並び、欧州猛追****
政府は13日、新型コロナウイルスワクチンの2回の接種を完了した人が人口の50.9%に達したとする集計結果を発表した。1回接種は63.0%で米国にほぼ並んだ。月末には2回接種完了が60%を超え、欧州並みになるとみている。

政府は希望者へのワクチン接種が完了する11月ごろをめどに行動制限の緩和を目指している。それまでに地域差を改善し、若者への接種率を上げることが、感染対策と経済を両立させる鍵となる。(後略)【9月13日 共同】
************************

ワクチン接種を前提にした「ウィズ・コロナ」の生活も見えてきますが、そのためには極力ワクチン接種率を高める、あるいは接種を義務化することも前提になりますので、各国で様々な取り組みが行われています。

****接種促進へ、欧米で強制措置 飲食や観戦、証明義務化****
新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を振るう中、ワクチン接種促進のため投与歴の証明や接種そのものを義務化する強制措置が世界で広がっている。

イタリアは接種や陰性の証明書保持を全労働者に義務付けることを決定。フランスは飲食店利用時に証明書提示が必要で、医療関係者は接種が必須。

米国は一定規模の企業に接種義務を課す方針だ。日本も証明のデジタル化などを進める。ただ「未接種者への差別を助長する」との懸念も根強く、英国は証明書導入を断念した。
 
イタリアの措置は10月からで、人口約6千万人のうち公務員や民間の2300万人が対象になり違反者は停職処分になる。【9月19日 共同】
***********************

【イタリア 欧州初の全労働者への接種義務化】
まず、「全労働者」にワクチン接種を義務化するイタリア。

****イタリア、労働者の接種義務化へ 10月15日から****
イタリア政府は16日、新型コロナウイルスのワクチン接種や陰性の証明書保持を全ての労働者に義務づけることを決めた。10月15日から。

ワクチン接種を加速させるための措置といい、違反者は停職処分になる。同様の義務化は欧州で初めてとしている。
 
人口約6千万人のうち、公務員や民間企業などの従業員、自営業者ら全ての労働者計約2300万人が対象となる。スペランツァ保健相は記者会見で「職場をより安全な場所にし、ワクチンキャンペーンを強化するのが目的だ」と述べた。
 
イタリアでは既に学校の教職員や大学生が接種や陰性証明書の保持を義務づけられている。【9月17日 共同】
***********************

****伊、全労働者にコロナワクチン接種証明の提示を義務付け 欧州初****
(中略)ロイターが入手した草案によると、有効な証明書を提示できなかった者は無給の停職処分となるが、解雇はされない。違反者には600─1500ユーロ(705─1175ドル)の罰金が科せられる。

他の欧州諸国でも医療従事者にワクチン接種を義務付けた例はあるが、全労働者にグリーンパスの提示を義務付けるのはイタリアが初めて。【9月17日 ロイター】
*******************

無給の停職処分と言われると、さすがに、かけこみ接種が急増しているとか。
“イタリアのワクチン予約が急増、全労働者への接種証明義務化で”【9月18日 ロイター】

なお、イタリアの9月18日時点でのワクチン接種完了者は65.5%、少なくとも1回接種した者は73.3%となっています。【Our World in Dataより】

【フランス 未接種の医療従事者3千人を停職処分】
フランスではワクチン接種または検査の陰性を証明する「ヘルスパス」を提示しなければ、飲食店に入店したり、長距列車に乗車することができません。また約270万人の医療従事者などが9月15日までにワクチンを接種しなかった場合、解雇または無給の停職処分となります。

このあたりの話、および反対する抗議運動については、9月13日ブログ“フランス 「自由の国」での衛生パス反対騒動 ウィズ・コロナの日々における「最適解」は?”でも取り上げました。

****フランスが賭けに出た「ワクチンパス」、義務付けの効果は****
米国のバイデン大統領が発表した新型コロナウイルスワクチンの義務付けに対し、国民の多くが効果に疑問を投げかけている。一方、フランスでは、マクロン大統領が打って出た賭けが功を奏しつつある。

フランスでは供給問題などに足を取られて接種開始が遅れたが、春には態勢が整い、5月までに人口の30%に当たる2000万人に1回目の接種を受けさせるという目標を達成した。

しかし7月になると接種率が頭打ちになって症例数が急増。マクロン大統領は、日常生活の大部分にワクチン接種を義務付けると発表した。

8月1日現在、同国ではワクチン接種または検査の陰性を証明する「ヘルスパス」を提示しなければ、飲食店に入店したり、長距列車に乗車することができない。約270万人の医療従事者などが9月15日までにワクチンを接種しなかった場合、解雇または無給の停職処分となる。

個人の自由を尊重し、政府を信頼しない文化が浸透している国フランス。それがワクチンに対する抵抗の形で顕在化するリスクは、マクロン大統領も計算済みだった。

2019年に実施されたウェルカム・グローバル・モニターの意識調査では、フランス人の3人に1人がワクチンの安全性に異議を唱え、調査対象の144カ国の中で最も多かった。

20年12月にフランスの世論調査機関らが実施した世論調査でも、フランス国民の約60%が、新型コロナのワクチン接種が受けられるようになったとしても、自分は接種しないと回答した。

議会に法案が提出されるとヘルスパスに反対する抗議デモが毎週展開されるようになり、7月31日にはフランス全土で20万人超が参加。ヘルスパスや自由の制限に反対する人、ワクチン接種をためらう人などが加わった。

一方でヘルスパスを支持する国民も多く、フランス保健省によると、この日は53万2000人が接種を受けた。

ワクチン接種の予約はマクロン大統領が7月12日に演説を行った直後から急増し、予約サイト経由で受け付けた予約は24時間で100万件に上った。

ワクチン接種率の増加や、コロナパスに関連した検査数の急増、デルタ変異株が猛威を振るう地域でのマスク着用義務付けなどが奏功してフランスは、欧州や米国を覆った感染拡大の第4波をほぼ免れることができた。

ヘルスパスが導入されてから1カ月たった時点で、保健機関の統計によれば、夏にかけて増えていた病院や集中治療室(ICU)の入院患者数は、全般的に減少した。このまま減少傾向が続くかどうかはまだ見極めている段階だが、専門家の多くは慎重ながらも楽観的な見方を示している。

フランスのワクチン接種率は世界の中でも高い水準にあり、アワ・ワールド・イン・データの統計によると、フランス国民の73%が少なくとも1回の接種を済ませている。

8月30日現在、ヘルスパス法の対象となる接客業などの従業員や利用客は、入場の際にヘルスパスの提示を求められる。フランスで180万人近い労働者がこの対象となる。(後略)【9月16日 CNN】
*************************

フランスの9月15日時点でのワクチン接種完了者は64.2%、少なくとも1回接種した者は74.1%となっています。【Our World in Dataより】

「自由」が尊重される国、ワクチンへの抵抗感が強い国だけに、「強気」の姿勢でリードしないと接種率が頭打ちになる・・・というところでしょうが、もともと少々の抵抗にはひるまない「強気」が特徴のマクロン大統領、今回も「剛腕」をふるっているようです。

****フランスの医療従事者3千人、ワクチン打たず停職処分****
フランスの医療従事者数3000人が、政府が義務付けた新型コロナウイルスのワクチン接種を受けなかったという理由で停職処分となった。オリビエ・ベラン保健相が16日、フランスのラジオ局RTLに明らかにした。

同国の医療従事者は政府が7月に発表した措置に従って、今月15日までに接種を受けることが義務付けられていた。

南部の都市ニースの大学病院はCNNの取材に対し、スタッフ320人が15日付で停職処分となり、さらに100人について状況確認を行っていると説明した。

この方針をめぐって医療従事者十数人が辞表を提出したが、それに伴う混乱は一切起きていないとベラン保健相は強調している。(中略)

停職処分となった医療従事者はサポートスタッフが大半を占めるとベラン保健相は説明。「停職処分の大多数は一時的な措置にすぎない」と述べ、「多くは義務付けが現実だと認識してワクチンを受ける気になった」としている。(中略)

保健機関の統計によると、新型コロナウイルスの7日間の症例は16日、10万人あたりの陽性者が7月18日以来初めて100人を下回った。【9月17日 CNN】
**********************

このような「停職処分」で医療に支障はでないのか?という点については下記のようにも。

****仏医療従事者3千人、ワクチン未接種で無給停職処分****
(中略)一方で、国内の医療従事者は270万人いることから、「医療の継続は保証される」と明言した。
 
ただし、各病院が明らかにしたデータに基づくと、実際の停職処分者数は3000人よりも多い可能性がある。AFPの集計では、停職処分を受けた職員の数は十数か所の病院のみで1500人近くに上っている。(中略)

それでも多くの医療従事者が、安全性や有効性をめぐる懸念を理由に依然接種に応じておらず、職員を処分せざるを得ない施設での業務に支障が出る恐れが生じている。(後略)【9月17日 AFP】
*********************

このあたりの「強引さ」がマクロン大統領の「持ち味」でもあり、「傲慢」「独善的」と批判を受ける所以でもあります。

【アメリカ NY市でテキサスからの旅行者が起こした「分断」を象徴する事件】
アメリカ・バイデン政権の100人超の従業員を抱える企業に対し、従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種か、毎週の感染検査を受けさせることを義務化する、また、すべての連邦職員にワクチン接種を義務付ける方針については、9月11日ブログ”アメリカ 感染再拡大で「分断」の最前線となる学校マスク着用、ワクチン接種義務化”で取り上げました。

アメリカの9月18日時点でのワクチン接種完了者は55.2%、少なくとも1回接種した者は64.4%となっています。【Our World in Dataより】

深刻な「分断」によってマスク着用・ワクチン接種が政治問題化しているアメリカでは、接種率が頭打ち状態になっており、欧州から遅れて“日本並み”にもなっていますので、バイデン大統領としては“焦り”もあるようです。

一方、ニューヨーク市では、9月13日から屋内での飲食などにワクチン接種証明書の提示が義務化されていますが、混乱も。

****ワクチン接種証明書を求めたNYのレストラン店員に、3人の旅行客が殴りかかる****
屋内での飲食などに、ワクチン接種証明書の提示が義務化されたニューヨーク市で9月17日、提示を求められた客が店員に暴力を振るう事件が起きた。

ニューヨーク市では9月13日から、屋内の飲食店やスポーツジム、映画館などに対して、利用客にワクチン接種の証明書の提示を求めることが義務づけられた。違反した場合は、1000〜5000ドル(約11万〜55万円)の罰金が科せられる。

被害に遭ったのは、マンハッタンのアッパーウエストサイドにあるイタリアンレストラン「カーマインズ」の店員で、テキサス州からニューヨーク市を訪れていた3人の旅行客に殴打された。

警察によると、店員は拳で何度も殴られて顔、胸や腕を怪我したほか、ネックレスが壊れた。
現地で撮影された動画には、逃れようとする店員に客がつかみかかり、殴りかかろうとする様子が映っている。

容疑者は3人は、暴行などの容疑で起訴された。(後略)【9月18日 HUFFPOST】
*********************

この殴りかかった「旅行者」というのが、新型コロナ対策・中絶問題・銃規制などでバイデン政権の方針との対立を強めている共和党知事のテキサス州からの旅行者だったというのが、「分断」の印象を強める出来事でした。

【イギリス 日本とは真逆の理由でワクチンパスポート提示義務化を見送る】
イギリス・ジョソン政権は、イベント会場などでワクチンパスポート提示を義務付ける方針でしたが、見送ることに。その理由が日本と好対照です。

****英・「提示義務」見送りの背景は 日本も検討「ワクチンパスポート」****
日本で導入が検討されているワクチンパスポートについて、イギリス政府はイベント会場などで提示を義務付ける方針だったが、見送ることを決めた。(中略)

イギリスでは、ワクチンを接種すれば、携帯アプリを通じて簡単な操作で、誰でもワクチンパスポートを提示することができる。

政府は当初、ナイトクラブや大規模イベント会場で、ワクチンパスポートの提示を9月中に義務化する方針だった。
しかし、16歳以上で2回の接種を終えた人の数が80%を超え、死亡者数が11万2,000人以上、感染者数も2,400万人以上減らすことができたとして、政府は現時点での義務化は見送ると14日に発表した。

7月に外出規制を撤廃、経済がようやく動き始めた中で、ワクチンパスポートは経済活動へのブレーキになるとの懸念から、人びとの行動の自由を優先させた形。

ただ、これまでに200以上のイベント会場で、主催者が自主的にワクチンパスの提示を求めるなど、政府の指示がなくても民間で活用される例も多い印象。

「コロナとの共生」を選択したジョンソン首相は、「状況が悪化すれば再び義務化を検討する」としている。
ワクチンパスポートを経済活動再開のアクセルとしたい日本とは好対照なイギリスでは、複雑なかじ取りが続く。【9月16日 FNNプライムオンライン】
************************

イギリスの9月17日時点でのワクチン接種完了者は66.6%、少なくとも1回接種した者は72.8%となっています。【Our World in Dataより】

「ウィズ・コロナ」のもと、個人の自己責任ですでに市民生活が戻り、経済も復調しているイギリスでは、「ワクチンパスポート」導入がその足を引っ張ることになるのを懸念して「象入見送り」

一方、「自粛社会」日本では、「ワクチンパスポート」導入によって、市民生活を取り戻し、経済を回復させるきっかけに・・・という発想。全く逆です。

「専門家」と称する人種も、TVなどのメディアも、「まだ危険」「ここで気を緩めたらダメ」「次の感染拡大に備えて」と悲観的なこと、ネガティブなことしか言わない「安心・安全教」の日本ならではの現象は、「日本の常識、世界の非常識」でもあります。

【日本 観光業界などでは、ワクチン接種証明を活用したサービスも拡大】
その日本では、希望者にワクチンが行き渡る11月以降でしょうか、接種や検査などを条件に飲食店やイベントの制限を緩める政府方針が検討されていますが、例によって「早すぎる」との批判がザクザク。

一方、民間レベルでは、(日本らしく、差別にならないようにとの配慮に悩みながらも)ワクチン接種証明を活用したサービスが広がりつつあります。

****接種済み、優遇サービス続々****
厳しい状況が続く観光業界では、ワクチン接種証明を活用したサービスが広がりつつある。
 
羽田発の航空便の国内旅行などを手がけるビッグホリデー(東京都)は7月から、旅行代金から1人あたり5千円を割り引く「ワクチン接種割引ツアー」の発売を始めた。
 
今月に入り、政府が段階的な行動制限の緩和方針を示したのを機に、予約は導入時の約1・5倍に増加。接種を終えた高齢者層の利用を想定したが、若い世代からの問い合わせも増えてきた。担当者は「今後、もっと旅行者が増えるという手応えを感じる」と話す。
 
「ワクチンを打った人だけのツアーがあれば安心できる」。こうした客の声を受け、ツアー旅行のクラブツーリズム(同)は、2回接種した人だけが参加できるツアーの販売を8月に始めた。
 
ツアーの出発はワクチンがより広く行き渡る10月末以降で、接種証明書のコピーなどで接種歴を確認する。接種済みでも感染の恐れはあるため、マスク着用など感染対策は通常のツアーと同様にする。「未接種者への差別にならないよう配慮した」(同社広報)といい、価格は通常のツアーと同じ設定にしたという。(中略)
 
リーガロイヤルホテル東京は、2回のワクチン接種を終えた利用客を対象に、一部の朝食付き宿泊プランでネット予約の価格を15%割り引く。
 
このプランの販売を始めた6月は予約がゼロだったが、次第に増え、8月には77件の予約があった。9月中旬で既に8月を上回る勢いで、担当者は「ワクチン促進の一助になればと思っている。若い方などまだ打てない人もいるので、来春まで実施する」と話す。【9月19日 朝日】
*************************

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アフガニスタン  「外に出... | トップ | フランス  豪の潜水艦開発... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

疾病・保健衛生」カテゴリの最新記事