関本剛先生
神戸市灘区の在宅ホスピス「関本クリニック」の院長、関本剛さんの訃報を知ったのは今月初旬、尼崎の長尾先生のブログからでした。
2019年10月ににステージ4の肺がんであることが発覚。緩和ケア医としての仕事を最期までこなしながら講演活動などもこなされ、医師として、患者として、父として、夫として息子として、45年の人生を見事に生き抜かれました。
(2021年1月23日 デイリー新潮の記事より
葬儀の際には、生前に関本先生が昨年10月にご自身で用意されていた葬儀の挨拶がモニターに映ったということです。参列者の涙を誘うと共に、自らの死に真摯に向き合い、残された人達への心配りまでされていたのには驚きを隠せませんでした。
関本先生は生前から、ホスピスの看取りをする医師でありがん患者であるというお立場から著書の出版、講演など多くの発信をしてこられていたのでご存じの方も多いと思いますが、幾つもの心に響く言葉を残されています。
「人は生きてきたように死んでいく」
「良き死は、逝く者からの最後の贈りものとなる」
その中でも、関本先生が最期まで繰り返されていた言葉がありますが、それは、今月、お母様が(ご高齢ですが現役のホスピス医)講演でも仰っていました。
「最悪のことはふだんは忘れてときどき考える生活でいい。患者が最も大切にする仕事や趣味を周囲が一緒になって支えて生きることが大事だ」
「最悪の事は時々考えるだけでいい」・・・これは、癌患者さんのみでもなく、私たち全てにおいても心がけるべきことであり、事実、私も関本先生を知ってからこの言葉によって日々励まされ支えられています。
またこういうことも書いておられました。
仏教詩人の坂村真民さんに、「鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ」という作品があります。
渡り鳥が大海を次の目的地まで飛び続けなければならないように、人間もがんになったからといって「溺れる者」になったわけではなく、人生という河を向こう岸まで泳ぎ切ってこそ己の命を全うできるし、泳ぎ切る力を持っているのが人間だと思います。
関本先生は医師としてコロナの扱いについても発言されておられます。一連のこの騒動にも正しい認識を持たれており、だからこそ長尾先生とも繋がっておられたのでしょう…
肺がんで余命2年と宣告された医師の告白 「コロナは5類に。報道には虚しさを感じる」 | デイリー新潮
お母様 関本雅子先生
幾つかネット記事を読ませて頂き、関本先生のこのお人柄、生き方には、お母様の存在と影響がとても大きかったようにお見受けしました。
兵庫県神戸市在住の関本雅子さん(71歳)は、緩和ケア・終末期医療で著名な医師である。長男の剛さん(44歳)も緩和ケア医の道を選んだことで雅子さんは勤務医生活に終止符を打ち、2001年、灘区にクリニックを開いた。軌道に乗り、院長職を剛さんに任せて「後方支援」に回った直後の19年夏。剛さんにステージ4のがんが見つかり「余命2年」と宣告された。それでも、コロナ下で往診を続ける決意とは (取材・文・撮影:粟野仁雄)
「婦人公論2021年8月20日」の上下の記事は、母と息子の在り方について大変考えさせられるものでした。
そして、最近のお母のお話です。
「手が動きにくく、しゃべりにくくなったので私が何回か、代わろうかと言ったんだけど、最後まで自分で診察を続けていました。彼の生活の一部に緩和医療の診療がありました。彼は人生の半ばで亡くなりましたが、充実したよい生き方をしてくれたと思います。命の長さが限られても存分に生きられるということを教えてもらったような気がします」
幼かった息子の幻影と、医師として立派に成長し、末期癌が発覚してからは人を助け、助けられることの素晴らしさを自ら悟り、そして周りの人々へも「人生、生きることの意味」への大きなヒントを示すなど、母の目からも尊敬すべき人間に成長した姿。
同じ診察室で、最期に近づくまで共に過ごし、その苦しみの中で人としての大きな成長と悟りに向かいながら天職を全うする息子の姿の一部始終を見とどけられたこと。
勿論大きな喪失感はありますが、それ以上に母冥利に尽きる尊い体験だったのではないでしょうか…
お母様のその人生にも深く感動させて頂いております。
六甲とのご縁
ところで、関本先生の事をこの記事にしたのは、クリニックが私がかつて住んでいた神戸市東灘区から近い六甲にあり、かつて訪れた「ある大事な場所」のすぐ下だということでご縁を感じたからなのです。
娘の中1、2018年2月の事故に不幸が始まり、その後絶望の真っただ中にいた時期、JR六甲駅下、クリニックのすぐ上の「六甲八幡神社」に娘の代理としてお祓いを受けるために受けに伺ったのです。
(ちょこっとブログにも書いた事があるのですが、この神社は最強の厄払いの神様がおられるのですが、神主さんが豪快な方で、この日は心に重くのしかかっていたうっ憤まで払っていただきました)
この日も関本先生は、診察室で、或いは訪問介護で一生懸命患者さんに向き合われていたことでしょう…
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