【ディスクレビュー】RASらしさとタイアップのバランスを考えさせるシングル RAISE A SUILEN 7thシングル『EXIST』

リリースから随分経ってしまったが、今回のディスクレビューはRAISE A SUILENの7thシングル『EXIST』だ。
今までのRASとはまた少し違うテイストを攻めた楽曲だが、個人的にはもう一声欲しかったといったところだろうか。詳しくは後ほど記載していこう。

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EXIST

和ロックにRASのEDM要素が組み合わさった楽曲で、これまでなかった新たなRAS一面を見せた楽曲だ。サウンドとしては非常に面白く、近しいところで言うとBABYMETALなどでこうしたサウンドは耳にしている。ヘヴィーさと和のテイストが融合することで、おどろおどろしさの中に美しさを垣間見る。

また、Raychellさんのボーカルはこうした和風テイストの曲によく映えている。少々演歌のこぶしにも近い歌い回しをする部分があるため、それが楽曲とマッチしているのだ。元々楽曲のパワーに負けない強い歌い方をする人ではあるが、こういった変化球にも見事に対応している。

RASの可能性を広げる楽曲ではあるのだが、個人的にはもっとRASテイストが強い方が良かったのではないかと感じる。少し和の要素がクドく感じてしまい、何やら無理に組み合わせたようにも聞こえるからだ。
ブシロード系列のタイアップ楽曲のためある程度は仕方ないと思うが、そのバンドのらしさを削ってまで作品に楽曲を寄せることは、あまり良いとは思えない。外部干渉を強く受けた結果、普通であれば作らないような曲になっているように聞こえてしまう気がするのだ。
もう少しRASらしさを強く感じられるようにして、和のテイストをもう少し控えめにする方が好印象だった。

EXIST

RAISE A SUILEN
アニメ
¥255

provided courtesy of iTunes

Embrace of light

久方ぶりのバラードナンバーであり、Raychellさんの歌唱力を存分に楽しめる楽曲だ。芯の通った力強さを感じながらも暖かみがあり、包み込むような優しさが同居した歌声だ。
それを演出する楽器は空間の広がりを感じさせるような演奏を見せている。1曲目『EXIST』との対比でそうした印象はより強く感じられる。

この曲にも和風なサウンドは使われているのだが、常にそうした音が聞こえてくる訳ではなく要所で差し込まれているので、RASサウンドの中でしつこく聞こえず、良い塩梅でお互いがミックスされている印象を受けた。

ただ、少し引っかかったのがストリングスが使われている点と、使われている電子音だ。
以前の楽曲でも同じようなことがあったのだが、Roseliaの曲と言われてもすんなり受け入れてしまうような音が多数使われているのだ。RASでしか表現できない楽曲と世界観を魅せてほしいのに、他のバンドでもいいような曲を出されるのはあまり良いこととは思えない。確かに近しいことをやっているバンド同士ではあるので重なる部分はあるのだが、両者の楽曲面での違いは明確にしてもらわなければ別バンドとしてRASが存在している意味がない。
その点でこの楽曲は非常に惜しい曲になってしまったという印象だ。

Embrace of light

RAISE A SUILEN
アニメ
¥255

provided courtesy of iTunes

OUTSIDER RODEO

前2曲とは一転、RASサウンドの現在到達点を示したのが『OUTSIDER RODEO』だ。メタル、エレクトロニコア要素満載な暴力的な魅力が詰まったゴリゴリのサウンドをかき鳴らし、轟音をまさしくロデオのように乗りこなしている。
剃刀のような鋭さと暴風雨のような苛烈さの中、小生意気さとキュートさを併せ持ったチュチュのラップパートが違和感なく混ざり合う。バンドリでこれが出来てしまうのはRASだけだ。

同タイプのRAS楽曲全般に言えることだが、やはりチュチュのボーカルが良い味を出している。ブレイクに挟まれるボーカルが歯切れよく、ただ単にブレイクするより数倍楽曲の印象を強くしている。

この手のジャンルが好きな人には堪らない音作りやリフに溢れた楽曲でありながらも、至るところでキメが散りばめられることでアニソンらしさも損なわない。音自体はまるでアニソンではないが構成はしっかりとアニソンらしく作られている。
イントロや間奏のギターリフ、2番Aメロのタッピング、ベースの音作りなどは僕の好みドツボであるし、2番Bメロ終わりなどに見られるギターユニゾンは実に鉄くさくて良い。前作のカップリング『JUST THE WAY I AM』同様、多くのロックファンに聞いてほしい1曲だ。

OUTSIDER RODEO

RAISE A SUILEN
アニメ
¥255

provided courtesy of iTunes

終わりに

総評としては、決して悪い訳ではないがRASの曲として聞いた時に少々物足りなさと的外れ感を感じざるを得なかった2曲と、まさしくこれを求めていたといった印象の1曲が収録されたシングルといった印象だった。タイアップ楽曲のため致し方ない部分はあるが、作品と本来の音楽性とのバランスが取りきれていなかったように思える。ポピパ以外のタイアップ楽曲はこの傾向がよく見られるため、今後も注意深く見守っていきたい。