ENEOS系石油製品販売の富士興産へ海外ファンドがTOB発表

2021年4月27日に富士興産(5009、東1)へシンガポールに籍を置くアスリード・キャピタルが公開買付けを行うと発表したとの報道が出ています。

本件TOBの概要は買付者のアスリード・キャピタルのホームページに載っている内容をかい摘んで説明します。ちなみに一次ソースとしてedinet を探したのですが公開買付届出書が見つかりませんでした。見つけ次第リンクを貼ります。

(4月28日の14:11に届出されました)

 

 TOB価格は1,250円。買付株数の下限は1,853,100株(発行済株数の40%)、上限なし。現在アスリードは既に16.8%を保有する筆頭株主です。応募株数次第では上場廃止になる可能性があり、買付者も非公開化を視野に入れているようです。期間は4月28日から6月14日まで。代理人は一般には敷居の高い三田証券ですが、副代理人としてマネックス証券でも応募できるそうです。ただ当の富士興産はこのTOBについて事前の賛同をしていないと表明しているため、今後の成り行き次第では敵対的TOBになる可能性があります。

 

富士興産からの適時開示

 

富士興産はどんな会社?

富士興産は1949年設立の石油精製から始まった会社で、元々から現在のENEOSと業務、資本関係の強い間柄にあります。ENEOSが精製した石油の副産物としてできる潤滑油やアスファルトなどを取り扱う卸売業を主な事業としており、ENEOSは今でも2位株主として富士興産の株式約12%を保有しています。

業績はまあ安定しているものの利益率はROE5%程度で売上も利益も殆ど横ばいと、何もコメントのしようのない感じです。2020年3月期でEPS68.39円、BPS1174.60円。財務は自己資本比率52.7%と結構高く、バランスシートには借金が見当たりません。現預金は40億円程度あり、売掛金60億円の流動資産に対して、めぼしい負債は買掛金などの60億円くらい。とても身軽な感じがする割には大して儲かってないな、と言う印象を受けます。実際コロナ禍以前は株価もせいぜい500〜700円くらいをウロウロしていました。

ところがやはりこの辺の株価水準であればPBRも0.5倍程度と、物言う株主に目をつけられちゃうんですね。

色々と有名な光通信創業者の長男重田光時氏が株主に登場したのと並行して、2020年12月にはアスリードにENEOSを抜いて筆頭株主に躍り出るまで株を買い進まれています。これまでにアスリード側から経営改善の申し入れが何度もあり協議をしていたとの事ですが、富士興産はENEOSからあまり親身になってはもらっていないように見えます。重田氏もアスリードもENEOSに完全子会社にしてもらって株を買い取って貰うのが一番手っ取り早いのでしょう。アスリードのコメントにも「自分で経営するつもりはないけど非公開化するべき」と言ってますので、ENEOSにそれを促す狙いがあるのだと思います。

 

アスリード・キャピタルとは?

買付者のアスリードは前述の通りシンガポールに籍を置く投資ファンドですが、運営は日本人が行なっている、いわゆる「茶目の外人」です。トップは門田泰人氏というUBS証券、ドイツ証券、米ローンスターなどを渡り歩いた方ですね。アスリードは富士興産以外にもスペースバリューやキャリアデザインセンターなどの大量保有報告書にも名を連ねています。

シンガポール籍の日系ファンドと言えばすぐに連想するのがエフィッシモこと村上ファンドですが、アスリードは村上ファンドとの親密さもよく取り沙汰されているようです。まあやり口がよく似てますからね。

 

今後の展開として富士興産がどのような対応に出るのか、ENEOSが引き取る意向を見せるのかを、まず注視したいと思います。