父が高額な電話料金を払う訳もなく、すぐに電話は止められました。


父は本格的にフィリピン人女性と結婚する方向で動いていたらしく、電話が使えないと困ると騒いでいましたが、結局そのままでした。






1度、父がその女性をうちに連れて来たので会ったことがあります。



「どう?大きい家じゃろ?庭も広いし、裏庭もあるで?夏にはバーベキューもできる」



自慢げに案内して回っているのを見て、嫌悪感しかありませんでした。

祖母と叔母はリビングの隅で、なんで連れてくるんだ、早く出ていけとぶつぶつ言っています。



この家は祖父母が建てたもので、自分が建てた訳でもないのに。

借金ばかり作ってうちの財産を食いつぶした癖に...!

考えれば考えるほど怒りが湧き、頭がカッと熱くなり、呼吸が出来ないほど。


わたしは夢中で2人を追い出しました。


祖母の灰皿を手に取りましたが、それをしたらわたしは終わってしまう。

辛うじて踏みとどまり、父が何か叫んでいましたが頭に血が上っていたので聞き取れず、必死でうるさい!出ていって!と玄関の外に突き飛ばし鍵を掛けました。


「ようもお前!親を蹴ってタダで済むと思うなよ!覚えてろよ!」


父が叫ぶのが聞こえました。


庭から父の車が出ていき、やっと玄関に立ち尽くしていた足が動きました。

初めて親に反抗したわたしは、すっきりした気持ちもありましたが、不安と後悔と、父が何かしてくるかもしれない恐怖とが綯い交ぜになって、頭の中はぐちゃぐちゃでした。


リビングに戻ると、叔母と祖母がよくやったね、ありがとう、頼りになるねと言ってくれて、わたしはこれで良かったのだと思うことでぐちゃぐちゃな感情を終わりにしました。


2人を守るのはわたしだ、わたしがしっかりしなくちゃ。

2人は弱いんだから。







その夜、帰ってきた父に外国人女性と結婚するなら出ていけと祖母が言いました。

父は

「言われんでも出ていくわ!ワシがおらんようなってどんだけ困るか思い知りゃあええわ!」


2階まで聞こえてきました。



父が出ていったからって、わたしたちが何に困ると言うのだろうか。



自室でぼんやり思いました。





その後程なくして父は隣の市の県営住宅に出て、外国人女性と再婚しました。











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