やり過ぎたFRBはすでに市場の信認を失っている

やり過ぎたFRBはすでに市場の信認を失っている

やはり悪い予感が当たりそうな気配になりつつある。どうも欧州が新型コロナ感染がどうにもならない状況になりつつあることが、最大の重石になるかもしれないね。とにかくドイツ、オランダ、ベルギー、オーストリア、ギリシャ・・・そして爆発的な感染拡大が始まったと政府要人が発言したフランス。政府が規制をしようとすると一部の国民が反対してデモ隊が衝突するという悪循環。これでは新型コロナの感染は止められないだろう。

そうした状況のなか、欧州市場の急落が始まって、ダウや日経平均のCFDが連動するという、先週末と全く同じ状況になるかもしれない。けれど、そうなったとしても米国市場の本筋は、欧州懸念ではなくインフレなのだと思う。

もう米国のインフレは止められなくなる可能性が高い。ここに至って株式市場や債券市場は、FRBを全く信じていない。インフレは一過性で、サプライチェーンのボトルネックが解消に向かえば、徐々にインフレも解消する、という言い回しは、パウエル議長でさえ、インフレの解消はいつ頃ですか?の問いに「いつかだ」と答えた時点で、市場の信用を失墜したと言ってもいい。

Advertisement

いま、次期FRB議長をパウエル続行か、ブレイナード理事かの瀬戸際にあるけれど、市場の信用を無くしたパウエル議長をバイデンが指名するとすれば、その時点で米国経済は危機に突入すると、個人的には考える。リセッションでなく危機と思うのは、あまりに楽観過ぎて高いところまで株式が買われ過ぎているから。

株式市場はいままで、何の躊躇いもなくFRBを信じて生きた。リスク資産に投資しても、FRBが金融政策でフォローしてくれるから、安心だという楽観。しかしインフレ(CPIが)が6%台に跳ねあがってもいまだに金融緩和を継続しているというFRB。当月僅かに8分の1だけ金融緩和の規模を縮小するだけというお粗末な対応について、完全に失策という意見が多く聞かれるようになったが、全く同感だ。

FRBは株式市場の下落を異常に恐れている。もちろんそこには理由があって、膨れ上がったデリバティブに影響が及ぶことを懸念してるわけで、だからこそ金融緩和以外の選択肢を失ってしまったと思われる。ウォール街は中国恒大の破綻に関して、影響は極めて限定的と言って無視する態度を取り続けているが、恒大に関するCDSをフィデリティやブラックロック、ドイツ銀行、が大量に引き受けているという事実は絶対に表面化させない。しかし、恒大だけのCDSでも約15兆円という巨大なものなのだ。

Advertisement

リーマンショック以来、株式市場はFRBが金融緩和を幾度となく増額し、金融規模を膨れ上がらせることで上値を追い続けてきた。そんな金融政策が15年もまかり通ってきて、なおかつそこで新型コロナという最大のリスクに直面した。しかし、金融当局は過去と同じ手法でひたすらに金融緩和を世界で強調して行うことで克服できると思っていたわけだが・・・。

いよいよそんな甘い期待が裏切られるときがきたと思う。いま、恐らく12月には株式市場は暴落すると思われるが、その時に金融当局は打つ手がない。この状況でまたしても金融緩和を持ち出せば、今度こそ、インフレは抑え込むことができなくなり、スタグフレーションという経験したことのない事態に陥る可能性が非常に高い。

もしも、バイデンがまともな大統領であれば、市場の信認を失ったパウエル議長を再任することはないはずだ。だが仮にブレイナード理事を選んでも、明らかに手遅れだろう。