どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ヒッチャー」…ルトガー・ハウアーの”荒野の狂った殺人鬼”が凄い

今月からリバイバル上映が開始されている「ヒッチャー」。

公式サイトみると荒木飛呂彦先生や声優の諏訪部順一さんがコメントを出してました。人気作ですね!!

ヒッチャー [DVD]

ヒッチャー [DVD]

  • 発売日: 2012/04/13
  • メディア: DVD
 

「ママはこんなことすんの絶対やめとけって言ってた」

親切心からヒッチハイカーを乗せたらとんでもない殺人鬼だった…!!

開始早々自ら人殺しだと静かに打ち明けるルトガー・ハウアーがぶっ飛びまくり。

次のシーンでは家族があっさり殺され、警察行けば安心かと思いきや皆殺し…淡々としてるのに展開がジェットコースターなのにビビります。

ハウアー氏から〝砂漠に現れた幽霊〟と評される殺人鬼ジョン・ライダー。

素性が全く明かされず目的も不明というところが不気味ですが、一方の主人公もどこの誰だか背景が特に語られるわけでもありません。

広大な田舎、どこまでも続く一本道というロケーションもこの世ならざる狂った精神世界のよう。

今時の映画だったら「ジョンは主人公の別人格でしたー」ともったいぶったオチつけたりしそうな気がしますが、「ヒッチャー」は余白があってその余白をそのままにして陳腐になってないところが稀有なのではないかと思います。

最初にみたときはストレートに「激突!」に似てるなあと思いました。

あちらは自信を失った男性が男らしさを取り戻すというテーマ性があって、カーチェイスが擬似的なそういう行為に思えなくもない??
…「ヒッチャー」も主人公が少年から男の顔つきに変わっていき、2人の追いかけっこにどこかエロスを感じる作品です。

ヒッチャー役最初の候補はテレンス・スタンプだったそうで…

あの俳優さんも雰囲気があって不気味だけど、ルトガー・ハウアーが醸し出す”寂しさ”がこの作品を唯一無二なものにしてる気がします。

当時18歳のC・トーマス・ハウエルとの年齢差、体格差も絶妙。「自分を殺してくれる人を待ってた」のがロマンチックに思えてきます…

f:id:dounagadachs:20210114095536j:plain

どこからともなく現れその凶行が全く予想もつかず、スリラー映画としても迫力満点!!

個人的にビビったシーンは…

1: 前の車に乗ってんだけど!!
目の前を走ってるファミリーカー、クマのぬいぐるみからジョンがヌッと姿を現しギョッ!!疾走感ある音楽もハマっててすんごい焦ります。

2: 指ポテトにオエーッ
ドライブインのレストランでハンバーガーをご馳走になるジム。ポテトを気怠げに口に入れてるとあれっ!指が!!オエーッ。
ジョンがこっそり忍び込んでて紛れ込ませたのかな…神出鬼没すぎて怖いし、こういうので精神削ってくるのがいやらしい…

3:いきなり警官ズドーン
警官に連行されるジム。走ってるパトカーの横にいきなりジョンが現れて警官の頭をピンポイントでズドーン!ホントに毎回どっから来るのよ。
あまりの理不尽さ、唐突さに叫びまくって泣きじゃくる主人公がそりゃこんな反応になるわーと気の毒すぎます。

4:引き裂かれるナッシュ
道中唯一拠り所だったナッシュがトラックに縛り付けられる…吹かすエンジン音が心臓に悪いことこの上ない。「2000人の狂人」みたいにバラバラになるとこまで映してる方がよっぽど怖くなかった…想像してしまう怖さにブルッとなります。


滅茶苦茶やってるようで「極度にみせてこない」のが上品。

ジムが警察に拘留されうなされて寝ているシーンでは、夢の中でジョンが車の窓ガラスをトントンと叩く音が警官を撃ち殺す銃声に…

細やかな演出で成り立っててとてもB級では片づけられない作品だなあと思います。


こんなに面白い「ヒッチャー」なのになぜかBlu-ray未発売。

日本だけでなく世界的にBlu-ray化されてないようで、権利関係が問題の作品なのでしょうか…今回の劇場公開は貴重な機会ですね。

東京は現在新宿でしかやってないみたいでこれから続々全国公開していくようですが館数は少なめ。コロナももうちょっと収まってたらな…と自宅鑑賞してしまいましたが映画館で観れる人は羨ましいです。

善人役のルトガー・ハウアーも好きだけど、悪役やったときの迫力は圧巻!

この世の片隅にこんな人がいるのだろうか…ものすごいハマり役でした。