南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました。An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.

An archive of medical articles summarized by a family physician from Nanto Municipal Hospital.富山県にある総合病院で働く病院家庭医です。勉強の記録を少しずつ書いていきます。

【献本御礼】セイントとチョプラの内科診療ガイド

【献本御礼】セイントとチョプラの内科診療ガイド

 

こんなツイートが,年末に流れてきました。

 

とても懐かしい。私が学生時代の頃にはセイントフランシスは病院見学に行くと,研修医の先生が読んでいたり机に置いてあったりして,病院見学に行く時にはこの本と『研修医当直御法度』を持参して当直や病棟の見学をしたものである。

 そしてセイントフランシスの第2版は,日本プライマリ・ケア連合学会でお世話になっている大橋博樹先生,喜瀬守人先生が翻訳されていたことに今気づく。学生時代に読んでいた本を訳した人と繋がっていてとても驚かされる。

 

そんな思い出深い本の第3版が和訳されたことは存じ上げていたが,どんな中身なのかとても気になっていた。今読むのと,医学生や研修医の頃とは,また違う感想を持つに違いない。

 

そんな折に,私のもとにメディカル・サイエンス・インターナショナル様から本を送っていただけたのである。感謝しかない。

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記念に第2版を探したのだが手元になかったので,これまた当直のお供だった『Saint-Frances Guide to Outpatient Medicine』と記念写真。

 

 

この本は病院実習や救急実習にたいへん役立つので,これまたおすすめである。

 タイトルは若干違うが,この本が対応しているのかもしれない。

そして驚くべきことに,この本は日本プライマリ・ケア連合学会でお世話になってい大西弘高先生が翻訳されている。身近に感じている方が,昔読んだことのある本を翻訳されていると,改めてその凄さを実感する。

 
本題に戻る。
この本は“The Saint- Chopra Guide to Inpatient Medicine" つまり,入院病棟診療に必要とされる膨大な量の臨床上の原理原則を,図表,ニューモニクス(英語の語呂合わせ),重要ポイントを盛り込み読者が覚えやすいよう工夫して編まれた定評ある入門ガイドである。監訳はかの有名な徳田安春先生で,セイント教授からのご依頼でこの翻訳をされたという。(本文より)これだけでも期待が高まる。対象は医学生,研修医向けであるが,『セイフラ』ファンだった内科系医師にもオススメである。
 
内容は総論,主訴別の鑑別診断,領域ごとの主要病態,主要手技などに分かれ,原理原則が簡潔に記載されている。ちなみに周術期管理に関する章を追加し,15年の時を経てますますパワーアップしている。
 
目次を見ればその網羅性がよく分かるであろう。
Section 1 医学的問題に対する一般的なアプローチ
第1 章 鑑別診断へのアプローチ
第2 章 医学的決断へのアプローチ
第3 章 終末期ケア
第4 章 医療関連合併症の予防
Section 2 心臓病学
第5 章 心電図判読
第6 章 失神
第7 章 不整脈
第8 章 心房細動
第9 章 胸痛
第10 章 狭心症
第11 章 急性冠症候群
第12 章 心不全
第13 章 ショック
Section 3 呼吸器疾患と集中治療医学
第14 章 急性呼吸困難
第15 章 喀血
第16 章 胸部X 線写真へのアプローチ
第17 章 低酸素血症
第18 章 呼吸機能検査
第19 章 閉塞性肺疾患
第20 章 間質性肺疾患
第21 章 肺炎
第22 章 肺高血圧症
第23 章 肺塞栓症
第24 章 胸水
第25 章 呼吸不全
第26 章 人工呼吸
Section 4 消化器疾患
第27 章 腹痛
第28 章 肝機能検査
第29 章 急性下痢症
第30 章 急性消化管出血
第31 章 脾腫
第32 章 腹水
第33 章 急性膵炎
第34 章 アルコール性肝障害
第35 章 肝不全
Section 5 腎疾患と酸塩基平衡障害
第36 章 腎臓病学の概要
第37 章 急性腎障害
第38 章 ネフローゼ症候群
第39 章 腎炎症候群
第40 章 尿細管疾患
第41 章 尿路感染症
第42 章 酸塩基平衡障害へのアプローチ
第43 章 低ナトリウム血症
第44 章 高ナトリウム血症
第45 章 低カリウム血症
第46 章 高カリウム血症
第47 章 高血圧症
Section 6 感染症
第48 章 発熱に対するアプローチ
第49 章 微生物学的アプローチ
第50 章 発熱と皮疹
第51 章 不明熱
第52 章 皮膚軟部組織感染症
第53 章 急性リウマチ熱
第54 章 感染性心内膜炎
第55 章 HIV 感染患者における合併症
第56 章 HIV 感染患者における呼吸器疾患
第57 章 HIV 感染患者における消化器疾患
第58 章 HIV 感染患者における神経疾患
Section 7 血液疾患/ 腫瘍
第59 章 汎血球減少症
第60 章 血小板減少症
第61 章 血球板増加症
第62 章 貧血
第63 章 赤血球増加症
第64 章 白血球増加症
第65 章 好酸球増加症
第66 章 出血障害
第67 章 凝固亢進状態
第68 章 リンパ節腫脹
第69 章 リンパ腫
第70 章 骨髄増殖性疾患と骨髄異形成症候群
第71 章 白血病
第72 章 形質細胞疾患
第73 章 転移性腫瘍
Section 8 リウマチ性疾患
第74 章 関節炎
第75 章 全身性自己免疫疾患
Section 9 内分泌疾患
第76 章 高カルシウム血症
第77 章 低カルシウム血症
第78 章 糖尿病性ケトアシドーシス
第79 章 甲状腺疾患
第80 章 副腎不全
Section 10 神経疾患
第81 章 意識障害
第82 章 末梢性ニューロパチー
第83 章 めまい(vertigo)
第84 章 吃逆
第85 章 痙攣
第86 章 脳卒中
第87 章 髄膜炎
第88 章 脊髄圧迫
Section 11 皮膚疾患
第89 章 発疹
第90 章 瘙痒症
第91 章 ばち指
Section 12 中毒
第92 章 アルコール中毒と離脱症候群
第93 章 中毒での緊急事態
Section 13 周術期管理
第94 章 非心臓手術における術前の心血管リスク評価
第95 章 非心臓手術における周術期での心血管リスクの低減
第96 章 周術期呼吸器リスクの評価と戦略
第97 章 周術期の投薬
付録:手技
 
この本のユニークなところは先程も記述したように診断基準やガイドラインの箇条書きがない一方で,世界中の研修医が使っている有名なニューモニクス(語呂合わせ)が多く紹介されていることである。私はどうにもこれを覚えるのが苦手なのだが,覚えるべき項目が明確になっているので,オリジナルの語呂合わせを作って大事な項目を覚えるのに役立てていた。知らなければならないこと,知っておくと便利なことがとにかく端的に述べられているため,たまにペラペラと眺めて診るだけで新たな発見や,頷けるポイントがあるだろう。
 
お値段も手頃であるため,医学生・研修医の皆様,是非お手にとっていただきたい。