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カテゴリ:ライトノベル
小説 「scene clipper」 Episode 4
彼女のあの「おいでおいで」は猫にするとマタタビのようなものかもしれない。 己の全神経を集中し対象者の容姿、行動、オーラなどを背景ごと捕捉し海馬のフォルダに収めようとする「scene clipper」の冷徹な目がトロトロに溶かされてしまった。
「くそ!」
ぜんぜん焦ってなんかないから、と言いたげに背筋をシュッと伸ばし、ポケットに手を入れる。
向かい側に渡ろうと左右を確認した時、目の端に彼女の白い歯が見えた。 また笑われて・・・なんか挽回する手はないのかよ俺? このままじゃとてもこちらのペースに巻き込めやしない。
「山本さん!」
「よお、水城(みずき)・・・?」 (水城!・・・ひょっとしたらこいつ今日は俺の助っ人?)
何故だかそんな予感がしたら・・・
「え、内藤さんのお姉さん?」 「だから、あんたはマリでいいって言ったろ」 「そんな、内藤さんのお姉さんを呼び捨てになんかできませんって」 「面倒くさいねあんたも、姉って言っても二つしか違わないんだからさあ」 「いやいや、ダメなもんはだめっす」 「はいはい、ところで知り合い?」
なにやらクィーンっぽいオーラを漂わせ始めた彼女が俺と水城を代わるがわる指さして訊ねた。
「まあ・・・」 「そうなんです、ちょっとした縁で知り合って、仲良くさせてもらってます」 「そう、あたしは水城君の友達で内藤マリって言います、よろしく」
と手を差しだした。
まだ整理のつかない気持ちを隠して軽く手を握り返した。
海馬のフォルダに保存(柔らかくて温かい、意外だった)
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