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カテゴリ:ライトノベル
小説 「scene clipper」 Episode 8 窓の向こうには似たようなマンションやビルが東京の主要道路の一つ環状七号線、通称「環七」を挟んでいくつも建っていて、新宿の街並みはビルの隙間からチラホラ見える程度だ。
新宿、あの街は俺の性分に合っている。
まあ、あの街が見えたところで、今日は足を運ぶ気にさえなれない。
一昨日のことが俺の心を支配したままなのだ。
持ち上げたグラスの中で琥珀色の液体が揺らいでいるのが見える。 氷の融解が進んでいるこの様が愛おしいほどに好きだ・・・だから何時もそのまま 自分のものにしてしまう、一気に飲み干してしまうのだ。
テーブルの上に置くと、氷たちは浮力を失っているからグラスの底にふぞろいのままで(それがまたいいのだ)横たわる、音を立てて。 その様も俺は気に入っている。
テーブルの上のバランタイン12年は残り1/3。
空けてしまえば眠れるか・・・。
氷を入れ替えてバランタインを注ぎ始めると、眠れない原因をつぶしてやろうと、やっと心がたどり着いた。
彼女にとっては辛いことかもしれないが、恋人と瓜二つの俺と初めて出会ったあの日から一昨日まで5回は会ってる。
バランタインと氷とグラスが導き出してくれた答えだ、やっとのことで・・。
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