お転婆で爽快な女の子のお話。
子どもの心の内を子どもの目線で描いた絵本です。
読み聞かせ目安 中・高学年 15分
あらすじ
ロッタはもうすぐ5歳になる女の子。
ヨナス兄ちゃんやマリヤ姉ちゃんと同じように、自転車に乗れます。ひみつにはね。
学校へだって行っています。ひみつにはね。
ロッタの眼は緑色。でもひみつには、兄ちゃんや姉ちゃんと同じ青色です。
5歳の誕生日のプレゼントに自転車がなかったら、ロッタはひみつで自転車をかっぱらうつもりです。目当ての自転車は、ベルイおばさんの物置にあります。
そして誕生日の朝。
ママとパパとヨナスとマリヤが、どっさり誕生日のプレゼントをくれました!
でも・・・自転車はありませんでした。
ロッタは予定通り、自転車をかっぱらいにいきます。
ベルイおばさんから、きれいな腕輪のプレゼントをもらったあと、おばさんが昼寝するのを待って物置へ。
自転車は大きくて、かっぱらうのはそれはそれは大変でしたが、なんとか自転車にまたがることができました。
けれども・・・、ロッタが乗るや否や自転車は、ものすごい勢いで坂道を滑り降りていってしまうではありませんか!
ロッタは止めようにも止められず、
「たすけて!」
「たすけてー!」
バラの茂みに投げ飛ばされてしまいます。
頭には大きなこぶが、ひざには擦り傷ができてしまいました。
ロッタは、町中に響き渡るほどの声で泣きわめきました。
ほんとに嫌な誕生日。家に帰ったロッタはそう思いながら、パパの帰りを待ちました。すると・・・帰ってきたパパが、ロッタにぴったりの小さな自転車をひいてくるではありませんか!
「わあーい!」
ロッタは大喜び。
兄ちゃんや姉ちゃんといっしょに、自転車を乗り回します。
けれども、兄ちゃんのように手放しで乗ってみると・・・ドスンと転んでしまいました。
「あたいだって、きっと できるんだ!にいちゃんと おなじに、てばなしでのれるんだーーひみつだけどね!」
読んでみて・・・
お転婆で元気いっぱいの女の子のお話です。
お兄ちゃんやお姉ちゃんと同じように、自転車に乗りたくてたまらないロッタ。
まだ、自分の自転車をもっていないし、自転車に乗ったこともありませんが、「ひみつには」乗ることができます。
ロッタには、「ひみつ」にできることがたくさんあります。
学校へ行くことも、目の色だってひみつには青色です。
お兄ちゃんやお姉ちゃんと、何でも同じようにしたい小さな子が、現実ではそうではないけれど「ひみつには」何でもできる。幼い子どもの心の内を、いかにも幼い子どもらしい言い方で、絶妙に表しています。
ロッタには、「ひみつ」の計画があります。
もしお誕生プレゼントに自転車がなかったら、「ひみつ」にベルイおばさんの自転車をかっぱらうのです!なんと大胆な「ひみつ」でしょうw。
ロッタはこの「ひみつ」を、いつもいっしょにいるくまのぬいぐるみバムセに話します。くまといっても、本当はママの縫ってくれたぶたのぬいぐるみ。ロッタはこの本当はぶたの、でもロッタにとってはくまのバムセに何でもお話します。バムセはいつでもどこでもロッタといっしょらしく、ずいぶんと汚れてくたびれていますが、ロッタにとっては大事な親友のようです。こんなところも、いかにも幼い女の子らしさがでていて、とてもかわいらしいところです。
いかにも子どもらしい発想を、いかにも子どもらしい口調で、無駄なくトントンと進んでいくテクストからは、ロッタのまっすぐな性格と、今その時何を考えているかが、生き生きと伝わってきます。
まっすぐな性格のロッタは、自転車をかっぱらいにいくときも正々堂々w。
ベルイおばさんが、昼寝している間にかっぱらおうと、寝ているか確認にいくのですが、おばさんに、
「ちょっと、おばさんーーきょうは だれの おたんじょうびか、あててみて」
と聞いてみたり、おばさんから誕生日のプレゼントにきれいな腕輪をもらって、有頂天になったり、屈託がありません。
プレゼントをもらって、おばさんに何度もお礼をいうのに、「ひみつ」の計画は実行され、結局痛い目にあうのですが、泣き方わめき方も、まあ子どもらしい。
びっくりして駆けつけたおばさんから、
「まあま、おきのどくに。どこか いたくしましたか?」
と聞かれて、
「あたまだよ!」
「ちが でたあ!」
と豪快に泣きわめきながらも、そうやって優しくしてくれるおばさんに、自転車を盗んだことがどう思われるか、だんだん心配になっていきます。
でもロッタの心配はよそに、ベルイおばさんはとても素敵な人で、ロッタのずるいところのない天真爛漫な言い訳(?)とお詫びの言葉を聞くと、ロッタを信用し気持ちよく許してくれます。きっと普段から、暖かい心の交流があるのでしょう。ひどいいたずらというか、かっぱらいwをしても、素直に謝り、それを受け入れる信頼関係が、愛情をもとに成り立っているのが伝わってきます。
家族だけでなく、隣近所の人からも、暖かい愛に包まれて育つのは、子どもにとってとてもいい環境だなと思います。
暖かい愛情に包まれているからこそ、いじけたところがなく爽快で素直な、ロッタのような子が育つんだなと思います。
テクストだけでなく、ヴィ―クランドの絵も、子どものいかにも子どもらしい瞬間を描いていて素敵です。色味がちょっと強めで、描き込み方も盛りだくさんな感はありますが、ベッドに寝転がってバムセと見つめ合ってお話するロッタや、ベルイおばさんからもらったきれいな腕輪にうっとりしているロッタの姿は、眼差しや体のくねらせ方などが、とても愛らしく子どもらしく、かわいく描かれています。
「ほんとに わるいたんじょうび」と思っていたロッタですが、最後はパパが自転車をプレゼントしてくれて、大満足するロッタ。まだまだお兄ちゃんのようには乗れませんが、満ち足りた勇姿は清々しく、爽快です。
子どもたちがこんな風に、暖かい愛情に包まれながら、嫌な思いをしても、ちょっとばかり痛い思いをしても、いじけずに元気いっぱい真っすぐに個性を伸ばして、健やかに育っていってくれたらいいなあと思いました。
今回ご紹介した絵本は『ロッタちゃんとじてんしゃ』
1976.4.1 偕成社 でした。
ロッタちゃんとじてんしゃ | ||||
|
ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。