森のこびとたちの楽しい暮らし
こびとの暮らしを覗いているような楽しさが味わえるかわいい絵本です。
読み聞かせ目安 中学年 15分
あらすじ
深い深い森の奥に、こびとの家があります。
そこにはこびとのお父さんとお母さん、4人の子どもたちが住んでいました。
森の暮らしは、楽しくて豊かです。
木の実や草の実、きのこはいっぱいあるし、楽しい友達もいっぱいいます。
きのこ模様の帽子を被ったこびとの子どもたちは、カエルと跳びっこをしたり、コウモリの背中に乗って飛んでみたり。
お父さんのヘビ退治のお手伝いだってやります。
年寄りトロルの住処のそばを通るときは、抜き足差し足・・・恐る恐る通ります。
秋になると、お母さんといっしょに、冬に備えてきのこや綿すげの実を集めます。
うっとりするような月夜には、美しい妖精たちを、飽きず眺めたり・・・。
森のフクロウさんの学校へも行きます。
冬はウサギのソリ遊び。
動物たちに餌をやったら、暖かい火の燃える部屋で、お父さんのお話を聞き・・・。
そして春!
森中に花が香り、蝶が飛び、小川がさらさら流れ出すと、こびとの子たちも有頂天!
鳥の巣には、赤ちゃんが生まれ、こびとのお母さんにも、赤ちゃんが生まれました。
森のこびとの子どもたちは、こうして来る日も来る日も、楽しく暮らしているのです。
読んでみて・・・
森のこびとたちの、楽しい暮らしが描かれた絵本です。
表紙には、森の木々の中、苔むした岩によじ登る、赤いきのこの帽子を被った、こびとの子どもたち。
表紙をめくると題字ページに、かわいいきのこの頭が4つ。草むらに並んでいます。
深い森の中の、大きな自然に囲まれた、豊かな生活の楽しさがいっぱいの絵本です。
丁寧に描き込まれた絵の数々。
ファンタジックなこびとの世界のお話ですが、細かいところまでリアルに描かれているので、読み始めからぐんぐん、こびとの世界に引き込まれていきます。
大きなきのこで雨宿りしたり、洞穴の中(岩の陰?)では、何やら木を削って作っているお父さん。糸を巻くお母さんと子ども。兵隊ごっこをしているような男の子たち。
こびとの暮らしが、具体的に細部まで、丁寧に描かれているので、何だか本当にこびとの世界があるような、こびとの暮らしをそっと覗いているような楽しさがあります。
絵が甘ったるくなく、写実的なのもいいところ。
リスはリスらしく。カエルはカエルらしく。ヘビもヘビらしく。
リアルに描かれているので、自然との向き合いもリアルに、本当のことのように感じられます。
お父さんが松かさの鎧を着て、ヘビ退治に向かう場面の緊張感!
倒れた木の陰で、固唾をのんで見守る子どもたちの、ドキドキ感が伝わります。
退治したヘビを運ぶお手伝いをしている子どもたちは、4人がかりでもすご~く重そうです。
お父さんに憧れる男の子たちは、自分たちもじきにヘビ退治をするんだと、アリで練習しますが、失敗して泣きながらお母さんに手当をしてもらうのも、子どもにさもありなんな感じで、こびとが何だか身近に感じられてきます。
子どもたちの表情も、泣いたり笑ったり、恐る恐る近寄ったり、びっくりしたり、実に豊かでかわいくて・・・。
淡い水彩の色合いも、繊細できれいです。
テクストでは表されていない細かい部分も、絵が語っていたりするので、細部を眺めてお話を広げ、空想する楽しみもあります。
大きな自然に囲まれた、季節折々の豊かなこびとの楽しい暮らし。
架空の世界であるのに、自然に囲まれた安心感や暖かさ、伸び伸びとした喜びに浸れる素敵な絵本です。
お話の終わりも素敵!
「こうして こびとたちは くるひも くるひも もりで たのしく くらしています。そして このさきは・・・・・・みなさんが じぶんで かんがえてごらんなさい そしたら、おしまいのない おはなしが できますよ!」
となっていて、こびとの楽しい暮らしが、自分のすぐそばでずっと続いていくような嬉しさ、想像する喜びを感じる結び方になっているのです。
ちょっと周りを覗いたら、木の根や岩かげを覗いたら、自分の近くにも、このお話のようなこびとがいそうな気分になれる、素敵な終わり方です。
心のなかに、ひっそりこびとの国を持って、大事に暖めたくなる。そんな気分になれる、楽しくてかわいい絵本だなと思いました。
豊かに伸び伸びと想像しながら味わっていきたい1冊です。
今回ご紹介した絵本は『もりのこびとたち』
エルサ・べスコフ作・絵 おおつかゆうぞう訳
1981.5.20 福音館書店 でした。
もりのこびとたち | ||||
|
ランキングに参加しています。ポチっとしていただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。