親の借金で人生をめちゃくちゃにされないために【知っておくべき10のこと】

親の借金で人生台無しにされないために【知っておくべき10のこと】

親が誰かの保証人になっていた、親が事業に失敗したなどという理由で、親の借金を支払えと言われたら誰でも驚きます。

そもそも、親の借金を子供が支払う義務はあるのでしょうか?

また、親が借金を抱えたまま亡くなったら子供は借金を相続するのでしょうか?

ここでは、子供が親の借金で困らないため、親の借金に対する子供の責任について 説明します。

1、親の借金は子供に返済義務があるか

親の借金は子供に返済義務があるか

親が健在であるとき

親がいくらの借金を背負っていても、子供が保証人や連帯保証人になっていない限り、子供に返済義務はありません。

例え家族で血縁関係があっても、同居していても、親に返済能力がなくても、法律上は子供には返済義務はないのです。

なお、子供には親の扶養義務があることから、これを盾に、「親が困っているのだから助けるのは当然」などともっともらしいことをいう業者がいたりしますが、借金の返済は扶養義務の範囲ではありませんから、支払う必要がありません。

親の借金に関しては、子供に一切法的な責任はないのです。

親が亡くなったとき

子供は親の借金も相続することが原則

子供は親の借金を支払う義務がないことが原則ですが、親が死亡して相続が発生した場合は別です。

相続は相続される人(被相続人)のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産すなわち債務も相続する人(相続人)が受け継ぐ制度なのです。

子供は、法律上当然に親を相続する法定相続人と定められています。したがって、親の借金は、親が生きている間は子供には支払い義務はありませんが、親が亡くなったときは相続によって子供が親の借金を支払う義務を引き継ぐことになります。

詳しくは4、親の借金を子供は相続しなければならないのかで説明します。

2、親の借金の肩代わりを求められたときの対処方法

親の借金の肩代わりを求められたときの対処方法

では、債権者に親の借金の肩代わりを求められときはどうすればよいのでしょうか。

前述のように親の借金について、子供に法的な責任は一切ありません。

ところが、債権者の中には、「親子なんだから家族が払うのが当然」とか「親の借金を見てみぬふりをするのは冷たい」などと、道義的な責任を追及するかのように肩代わりを求めてくる者もいます。

しかし、法律的に返済の義務のない者に返済を強要することは、脅迫罪や強要罪に問われかねない行為です。

また、貸金業法には、「債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することを要求すること。」は禁止行為とされています(貸金業法21条1項第7号)。

ですから、相手が貸金業者の場合は、監督官庁である金融庁に通告することができます。

また、前述のように脅迫罪や強要罪が成立する可能性もありますから、しつこい場合には警察に相談するのも一つの方法です。

また、弁護士等から警告を送ってもらうのもよいでしょう。

3、親の借金を子供が肩代わりして返済したらどうなるか

親の借金を子供が肩代わりして返済したらどうなるか

そうは言っても、親が債権者から督促されているのを見かねて、肩代わりをしようという人もいるかもしれません。

子供に法的な責任がないからといって、子供の側から肩代わりを申し出て、債権者に返済することができないわけではありません。

ただ、肩代わりをしたときに、親が後でその分を払ってくれれば良いのですが、借金を抱えているような場合に、そんな余裕があるとは限りません。

ですから、単に肩代わりをするのではなく、まず、債務整理等の方法によって解決ができないかどうかを検討する方がよいといえるでしょう。

なお、例えば親の自宅が借金の担保になっているような場合に、家が取られるのを防ぐために借金を肩代わりしたようなときは、借金返済の対価として家の名義を親から子に移してもらうのも一つの方法でしょう。

名義をそのままにしておくと、親が亡くなった後に相続する際、相続税の対象となる可能性があるからです。

また、子供が複数いる場合に、そのうちの一人が親の借金を肩代わりした場合(そして、その後、親からその分の返済は受けていない場合)は、遺産相続の場面で、寄与分を主張できる可能性があります。

もし仮に肩代わりをするのであれば、その分を少しでも回収できるように、また必要以上に税金等が発生しないように、専門家等に相談してから行うのがよいでしょう。

4、親の借金を子供は相続しなければならないのか

親の借金を子供は相続しなければならないのか

親の借金は法定相続分で相続される

親の借金は子供には返済義務はない、といっても、親が亡くなってしまうと、相続が発生し、借金も相続してしまいます。

そして、借金は法定相続分に従って相続することになっています。

例えば、親が1200万円の借金を負っていて、相続人として子供が3人いる場合(親の配偶者は既に亡くなっているとします)、誰がどれだけの遺産を相続するかにかかわらず、各自が400万円(1200万円×3分の1)の借金を相続してしまうのです。

ここで注意しなければならないのは、相続人の間で、「相続人Aが財産も借金も全て相続する」という遺産分割をしたとしても、債権者との間では何の効力もなく、相続人各自がその法定相続分に従って借金を相続してしまうという点です。

特に、親が事業を行っているような場合は事業のために借り入れをしていることも多いのですが、その事業を継ぐ者が財産のほとんどを相続する代わりに借金も全て相続する、という合意を相続人間ですることが少なくありません。

しかし、相続人間でそのような合意をしても、債権者は、全ての相続人に、法定相続分に従って分割した金額の請求ができるのです。

このような事態を避けるためには、「相続人Aが債務を全て相続する」ということについて、あらかじめ債権者と交渉して同意を得ておく必要があるといえます。

(2)親に借金があるときの相続対策

前述のとおり、親の借金は、債権者の同意がない限り、相続人間の合意にかかわらず、法定相続分に従って相続してしまいます。

そこで、借金を相続しないための方法が2つあります。それが相続放棄と限定承認です。

① 相続放棄

相続放棄は、その名のとおり、相続自体を放棄し、相続人でなくなることです。

相続放棄は家庭裁判所で手続きを行う必要があり、これが認められると、遺産(プラスの財産)も一切相続できないかわりに、借金(マイナスの財産)も一切相続しない、ということになります。

遺産よりも借金が明らかに多い時や、そもそも遺産が無いような場合は、相続放棄を選択するのが良いといえるでしょう。

② 限定承認

親に一定の財産があって借金もある場合、財産の方が多いのであれば相続したいでしょうし、借金の方が多い場合は相続放棄したいと思うのが普通だと思います。

ただ、相続が開始した段階ではいくら借金があるかわからず、遺産よりも借金が多いかどうかの判断がすぐにはできない場合に、家庭裁判所に限定承認の手続きを申述することで、相続する遺産(プラスの財産)の範囲内でのみ借金(マイナスの財産)も相続するという方法を選ぶことができます。

例えば、遺産が500万円あって、借金の額がわからない場合に、限定承認の申述をするとします。

調査の結果借金が200万円しかなければ、200万円の借金もあわせて相続することになり、調査の結果借金が700万円あることが判明したときは、借金は500万円しか相続しないという結果になります。

5、親の借金を相続放棄する際の注意点

親の借金を相続放棄する際の注意点

前述のように、遺産(プラスの財産)よりも借金(マイナスの財産)が多いときは相続放棄をすることで、借金を相続しないことができます。

ただ、相続放棄にはいくつかの注意点があります。

まず、相続放棄は、原則として、被相続人が死亡してから3か月以内に、家庭裁判所で手続きを行わなければならないという点です。

なお、例外的に、被相続人が死亡して3か月経過した後に初めて借金の存在を知った場合には相続放棄ができる場合があるので、もし3か月経過した後に相続放棄を検討する場合は、弁護士等の専門家に相談するのがよいでしょう。

また、相続放棄は、相続人から外れるという手続きですから、被相続人の財産を相続することが一切できなくなる点にも注意が必要です。

逆に、被相続人が亡くなった後に、被相続人の財産を少しでも相続してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があります。

例えば、親の死後に親の銀行口座からお金をおろして使ったり、亡き親名義の不動産の名義を子供に移したりしたときは、相続放棄は認められません。

また、親の死後に親の借金を返済するという行為も、「相続を承認した」とみなされて相続放棄できなくなることがあるので注意が必要です。

なお、相続放棄をすると、借金も相続しない代わりに、遺産も相続できないことになりますが、生命保険金は相続放棄しても受け取れる場合が多いので、約款等で確認するか保険会社に確認するのを忘れないようにしましょう。

6、親の借金を調べる方法

親の借金を調べる方法

親の借金は発覚しにくい

親の借金は、親が「子供に迷惑はかけられない」と考えている場合が多く、返済に苦しんでいてもなかなか子供に相談したり、打ち明けたりしないという傾向にあると思います。

そして、当初の借金よりも件数が増えたり、金利の高い業者から借りたり、遅延損害金が発生したりと、解決が困難な状態に陥ってはじめて発覚するということも少なくありません。

そうならないように、子供としては、早い段階で親の借金の存在を把握しておいた方が良いと思います。

親の借金の調査方法

親の借金を調べるには、信用情報機関から情報を取り寄せることが一番確実な方法です。

銀行からの借り入れであれば、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターで調べることができます。

また、消費者金融やクレジットカードを利用した借り入れであれば、CICやJICCという団体に情報の開示請求を行うことで調べることが可能です。

なお、親が不動産を所有している場合は、不動産に抵当権がついていないかを調べることも大事です。

また、その不動産が住宅ローンの担保となっている場合は、団体信用生命保険(団信)に加入しているかどうかも大事なチェックポイントです。

団信に加入していれば、仮に親が死亡した場合、保険から借金の残高が支払われるので、相続人が債務を相続することがないからです。

保証には注意

信用情報機関からの情報でわかるのは、親が直接借り入れている借金のみです。

仮に親が誰かの保証人(連帯保証人)になっている場合の保証の内容までは調査することができません。

ですから、この点は生前に親から誰かの保証人(連帯保証人)になっていないかどうかを聞いておく必要があります。

また、それを聞く前に親が亡くなってしまった場合で、親が誰かの保証人になっている可能性がある場合は、相続放棄をするかどうかの検討する3か月の期間を伸ばす許可を裁判所に申請してその間に調査する方法や、限定承認を選択して、仮にあとから保証債務が発覚しても遺産を超えるような借金は相続しないようにしておく必要があります。

7、親の借金の連帯保証人になっているときの対処方法

親の借金の連帯保証人になっているときの対処方法

子供が親の借金の保証人(連帯保証人)になっているときは、相続が発生するかどうかにかかわらず、親が借金を支払えなくなったら、これを支払う義務があります。

ですから、子供が親の借金の保証人(連帯保証人)になっている場合は、親がちゃんと返済できているかどうかを、常に把握しておくことが大事です。

もし返済が遅れたり、返済が困難になったりしている場合は、早い段階で債務整理等の対策を講じることを検討する必要があります。

8、会社経営の親に借金があるときの対処方法

会社経営の親に借金があるときの対処方法

親が会社を経営している場合や個人事業主である場合は、資産もそれなりにあるかわりに、借金の額も多いことが少なくありません。

そして、前述のように、仮に子供たちのうちの一人が事業を継いだとしたとしても、借金は、事業を承継しない他の子供も含めた全ての子供たちが相続してしまうことになる可能性があります。

ですから、親の生前に、金融機関と交渉し、親が亡くなった後は、事業を継がない子供たちの債務は免除する旨の同意をもらっておくことが大切です。

9、離婚した親に借金があるときの対処方法

離婚した親に借金があるときの対処方法

親が離婚しているときに、離婚後に生活を共にしていない親が、知らないところで多額の借金を背負っており、親の死後に請求等が来て初めて借金の存在を知らされるということもあるようです。

特に、金融機関の中には、親が亡くなった直後には相続人に請求せず、相続放棄ができなくなるので、3か月以降に請求をするというところもあります。

ですから、生活を共にしていなかった親が亡くなったときには、借金がないかどうかをしっかり調べる必要があります。

郵便等で督促状がきていないかとか、銀行口座から返済のための引き落としが無いかどうか等を確認し、借金の存在が窺われる場合は、前述の信用情報機関等に情報の開示を求めて、総額をしっかり把握することが大切です。

10、親の借金に関する相談先

親の借金に関する相談先

親に借金があるときは、生前に解決しておくのがベストです。

仮に、親が借金の返済に困っているようなときは、弁護士等の専門家に相談して、債務整理を検討することが大切です。

確かに、子供には親の借金を支払う義務はありませんが、親が亡くなってしまうと、相続という形で降りかかってくる可能性があるのですから、人ごとだと思わないことが大切です。

まとめ

まとめ

借金問題は、早い段階で相談した方が早く解決できる場合が多いと言えます。

真面目な方ほど、借りたお金は返さなければならないという気持ちから、何とかしようとしてかえって状況が悪化してしまう傾向にあります。

特に、親の借金は、子供に迷惑をかけたくないという気持ちから、どうしようもない状態になるまで発覚しないことが多いのです。

ですから、子供としては、そのような親の気持ちを汲んだうえで、本当に子供に迷惑をかけないためには、早い段階での対処が必要であることを親子でしっかり認識し、借金問題がある場合は、早い段階で弁護士等の専門家に相談することが大切です。

そうすることで、単に、任意整理や過払い金返還請求を検討したり、個人再生や自己破産等の法的整理を選択したりするだけでなく、もし相続が発生したときに、放棄をするのか、相続するのかという先のことも踏まえた対応策を考えることができるからです。

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