温泉水からの挑戦状③
皆さんこんにちは!いろはねです!
最近は暖かくなったり、寒くなったり気温差が激しく、
体調を崩される方も多いのではないでしょうか…?
私もダウンしてしまった日がありました。
また、花粉も飛び始めましたので油断できませんよね…。
季節の変わり目は気候に体調が左右されやすいですが、皆様もどうかご自愛くださいませ。
それでは本題へ参りましょう。
前回はまさに温泉水からの挑戦状…
化粧品開発におけるpHや塩の影響についてお話をしました。
その続きとしまして、今回は、どのようにしてその試練に立ち向かったのかをまとめていきたいと思います。
まず、前回の内容を簡単にまとめますと…
①温泉水を使ったフェイスマスクを作りたい。
②一般的なフェイスマスクには、カルボマーと呼ばれる中和反応によりジェル状に変化する成分が配合されている。
③温泉水には、アルカリ性や酸性の泉質があり、カルボマーの中和反応に影響を与えてしまう。
④温泉水には、塩分が豊富に含まれていることがあり、ジェル状になったカルボマーはその塩分に反応し、シャバシャバになってしまう。
⑤温泉水配合のフェイスマスクにはカルボマーが使えない…。
※カルボマーには様々な種類があり、塩に強いタイプもあるのですが、それを使用しても温泉水のパワーに勝てず断念したという次第です。
ということでカルボマーが使えなくなった今、他の増粘剤を用いてとろみを付与するしかありません。
つまり、温泉水のpHに影響されず、塩にも強い増粘剤を探す必要がありました。
そこでまず最初に登場するのが…「セルロース系のポリマー」です。
特に「ヒドロキシエチルセルロース(通称:HEC)」と呼ばれる成分は、
植物の細胞膜の主成分である「セルロース」から作られ、そこに酸化エチレン(エチレンオキシド)を結合して水溶性にした、イオン性を持たないノニオン性多糖類です。
そのため、塩や金属イオンなどの影響を受けにくく、温泉水に対抗できるのではないかということで、選出されました。
これは希望が持てますね!
まずはこれを温泉水フェイスマスクに配合してみました。
結果は、ダメでした…。
原料資料より、〇%配合で粘度はこのくらいというデータがありましたので、フェイスマスクには〇%配合し、粘度はだいたいこのくらいになるはずだ!と予測をし、実験を行いました。
しかし、粘度は予測していた数値よりも低くなり、ヒドロキシエチルセルロースも温泉水の影響を受けてしまうということがわかりました。
つ、強すぎる…温泉水…
ここであきらめてはいけません!他にもまだ希望はあります。
それが「天然系のポリマー」です。
天然系ポリマーと言えば…
〇キサンタンガム:でんぷんや糖類を微生物発酵させて得られる
〇タマリンドガム:インドや東南アジアに生育するタマリンドの種子を分離精製して得られる
〇グアーガム:マメ科のグァーという植物の種子の胚乳部から得られる
などですね。
これらはカルボマーのように化学反応は必要なく、とろみを付与することができます。
この時点でpHの問題はクリアできそうですよね。
後は塩に強いかどうかですが…これは一から基礎実験が必要です。
これらの天然ポリマーを一つ一つ温泉水に配合し、粘度に影響が出るかどうか実験を行いました。
このように肝となる成分同士のみをシンプルに組み合わせて様子を観察するのが
基礎実験の大切なポイントですよね。
これ以下はノウハウになってしまうので、詳しいことは割愛させていただきますが…
この基礎実験を行った結果、温泉水にも影響されず、しっかりと粘度を保つことのできた天然ポリマーがありました!
早速それを配合し、フェイスマスクの試作を行います。
一般的なカルボマーではなく、天然ポリマーを配合するということですから、配合量や使用感の調節にも苦戦しました。
天然ポリマーは食品にも使用されていますので、とろみ以前に、ゼリーのようなブルブルとした粘度になってしまったり、配合量が多すぎてポリマーカスが発生してしまったり、ぬるぬる感が強くなってしまったり…
そんな課題もコツコツクリアしながら、フェイスマスクの開発は進んでいきました。
まさにドタバタ奮闘記です(笑)
あとは、とろみなど安定性の維持ができるかどうか経過観察をしつつ、
試作品としてお客様に提出します。
数々の実験を経た結果、見事温泉水からの挑戦状に打ち勝つことができました!
こういう地道な実験が、結果につながる瞬間は化粧品開発における醍醐味の一つだと思います!
温泉水コスメって、響きが良く、効果もありそうですし、
ある程度流通していてもおかしくない商材なのですが、有名なのは化粧水ミストなどの水ベース商品がほとんどですよね。
一般的にカルボマーが配合されているクリームや乳液、フェイスマスク、ジェル製品はあまり見たことがありません。
その謎が今回色々と実験を行ってみて解けた気がします。
そしてこのような色々な壁が立ちはだかれば、その分私の経験値にも繋がります。
温泉水からの挑戦状はなかなかハードでしたが、この挑戦によって新たな発見ができたのでは!?とワクワクもした、いろはね研究員なのでした。
いろはね研究員の師匠こと美里康人先生の専門的でためになるブログと、そのアシスタントゆっきーさんのブログもぜひご覧ください。↓
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