徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

京都の近代日本画展を鑑賞してから、岡山フィルの定期演奏会へ

久方ぶりの岡山方面遠征へ

 この週末は岡山方面に繰り出すこととした。目的は久しぶりの岡山フィルの定期演奏会だが、そのついでに岡山方面の美術館に立ち寄ることも考えている。

 午前中に家を出ると山陽道を笠岡まで突っ走る。最初に立ち寄るのはかなり久しぶりの笠岡の美術館である。ここで京都画壇の画家の展覧会をやっているというのでそれが目的。

竹喬美術館に来るのは久しぶりだ

 

 

「開館40周年記念 栖鳳と京都の近代日本画」笠岡市立竹喬美術館で7/10まで

栖鳳の作品が看板になっている

 竹内栖鳳は竹喬の師匠に当たるが、その栖鳳の作品を初めとして、京都の近代日本画の名品を集めて展示するとのこと。

 まず最初に登場するのは竹内栖鳳の作品だが、幻想的に西洋の古城を描いた「羅馬古城図」に、如何にも獣の栖鳳らしく暈かしや滲みを生かして水鳥を描いた「秋興」などは印象深いところ。また幸野楳嶺の「関公暁月聴蟲図」なんてのも如何にもの作品。

 他に印象に残ったところでは山本春挙の「山村密雪図」の極めて緻密な表現。これに大正デカダンスの空気をかすかに感じさせる木村斯光の「清姫」辺りか。この境地をもっとおどろおどろしくししたら甲斐庄楠音辺りになりそうである。

 展示室を移って、いきなり目につくのは戸田北遙の大作「群蟲図」。あからさまに若冲の「動植綵絵」を意識していることを感じさせる。

 また吹田草牧の濃厚な「日向土々呂」はインパクトがあるが、同じ画家が大正から昭和に変遷すると「梅雨霽」のようにあっさりとした典型的な日本がタッチに変異しているのは非常に興味深いところ。また非常に洋画的な空気のある梅原藤坡の「円山公園」なども印象に残る。

 さらに時代が下ると個性の強い画家が増えるが、そんな中で澤田石民の「豚(習作)」などは不快に見える寸前のリアルな描写が目を惹く。この同じ画家が10年ほどを降った「木瓜に鳥」では伝統的な日本画様式の図案的な作品を描いているというのがこれまた面白い。

美術館の中庭の風景

 マイナーな展覧会であるが、なかなかに面白い作品を見ることが出来た。わざわざ出張ってきた甲斐を感じさせて満足である。

 

 

 竹喬美術館を後にすると、岡山方面を目指す。高速はさして混雑していないが、やはり岡山に降りてくると混雑はひどい。以前から私が言っている岡山ダンジョンは相変わらず健在である。

 岡山シンフォニーホールの近くまでやって来ると、目を付けていた最寄りの駐車場に。しかし目的の駐車場は既に満車となっている。しかも周辺の駐車場に目を配ってもことごとく満車表示。少し車を流してみたが空いている駐車場は皆無である。

 一体何があったんだと頭が疑問符で一杯になる。やけに子供連れの行楽客のような連中が多いから、後楽園で何かイベントでもあったかと思ったが、花見時でも紅葉シーズンでもない今時分に思いつくイベントはない。

 その内に岡山県立美術館の前を通りかかるが、そこで理由が判明する。県立美術館に親子連れが大挙して入場している。県立美術館では本日は「ドラえもん展」の最終日。どうやらそれに駆け込み入場している家族連れが多いようだ。元より私はドラえもんには興味は皆無なので、最初からアウトオブ眼中だったのだが、世間的にはまだまだドラえもん人気は根強いようだ。

 とにかく震源が県立美術館と分かったことから、大通りよりも北の駐車場はほぼ満車と判断し、大通りの南側に降りることにする。予想通りこの辺りの駐車場には普通に空きがある。そこで12時間900円の駐車場に車を止める。

 駐車場の位置は林原美術館から徒歩数分というところ。実は岡山到着が予定よりも遅れていたので、私は林原美術館はカットと思っていたのだが、ここまで来たのだからついでに立ち寄ることにする。

林原美術館の櫓門

 

 

「GOLD-永遠の輝きを探しに-」林原美術館で6/19まで

林原美術館は石垣の上

 昔から金はその輝きによって人を引きつけることから、富や権力の象徴ともなってきた。だからこそ、それを示すべき絢爛豪華な金細工などの工芸品が発達した。またその一方で錆びない金は不滅の象徴として信仰的畏怖も払われてきた。よって金で記した経典なども存在する。

 そのような様々な側面を持つ金を用いた工芸品その他を集めて展示したのが、今回の展覧会。出展作は蒔絵細工の工芸品から鎧甲に刀剣に、さらには金糸を用いた打ち掛けなど多種多様である。

 驚くのは本来は戦の武器という実用的で無骨な武具にまで装飾の類いが施されてきたこと。これこそはまさに権威の象徴だったのだろう。

 黄金の国ジパングというのは東方見聞録で描かれた日本のことだが、工芸品から生活用品まであらゆるものが金装飾されているのは、まさに黄金の国さながらの風景ではある。日本と金との関わり合いを感じさせる点では面白い。

敷地内に何やら櫓のようなものが見えるが

外から見るとこうなっている

 

 

 林原美術館を後にすると周辺の散策。この辺りはかつての岡山城の城内だった地域で、未だに地形の起伏や随所に残る石垣が往時の姿をとどめている。そもそも林原美術館自体が明らかに曲輪の中にある。

随所にこの手の遺構が残る

ここにあった石山門は天守と共に空襲で焼失した

 

 

昼食を摂ることに

 昼食を摂る店を求めて商店街をフラフラ。しかし閉まっている店も少なくないし、行列が出来ている店も多い。そうこうしているうちに段々と探すのが面倒くさくなってくる。そこでみつけた「じゃんがらラーメン」に入店、「つけ麺(900円)」を注文。

じゃんがらラーメン

 出てきたラーメンを見た途端に「濃そうだな」と感じる。確かに魚介系のかなり濃厚なつけ汁である。また平打ち玉子麺はかなりシッカリとした味の強い麺。懸念したほどの塩っぱさはなかったが、全体的に濃厚なラーメンであり、これが好みの分かれるところ。

かなり濃厚なつけ麺

 商店街をホールに向かってプラプラ歩いていると、パン屋「キムラヤ」を見かけたので、抹茶フェアとかの抹茶パンを購入。抹茶サンライスの中に抹茶クリームを入れた物で抹茶の苦味も感じられる風味があってなかなか美味。

キムラヤの抹茶サンライズ

抹茶クリーム入り


 ところで全国的にパン屋と言えば、やたらにキムラヤが多いのだが、やはりこれはあんパンを発明したことで知られる木村安兵衛にちなんだものなのだろうか。全国各地のキムラヤにはその弟子筋なんかのところもあるだろうと思われる。ちなみに私の故郷である神戸の長田にも木村屋パン店があったが、経営者は木村氏ではなくて川崎氏だった。

岡山シンフォニーホール

 

 

 ホールに到着した頃には開場時刻となっていた。私の購入したのは3階の貧民席。このホールは貧民はとにかく長い階段を登らされる構造になっているというバリアフリーの対極を行くというチャレンジングな設計のホールである。座席に到着する頃には大概疲れ果てることに。

それにしても高い

 

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団 第72回定期演奏会 ~蘇る、興奮の時~

12-10-8-8-6編成だった

指揮/秋山和慶
ピアノ/松本和将

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番
ムソルグスキー/禿山の一夜(リムスキー=コルサコフ版)
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

 松本をソリストに迎えて、ラフマニノフの有名な2番ではなく、若干マイナーな3番を演奏。なおこの曲は演奏するにはかなりの難曲であるらしいが、松本はその難曲を難なく弾きこなしてしまうのはお見事。2番などと比べると全体的に旋律的でなくて捉えどころのない曲なのだが、それを軽快かつ堂々と弾ききった。

 なお演奏中に観客の誰かが補聴器を発振させるというトラブルが発生し、第一楽章終了後にしばし演奏が中断するというトラブルが発生。松本としては集中力が削がれるところであろうが、よくぞ気分を持ち直して演奏しきったものだというところ。なお今回は全体的に観客のマナーが悪く、演奏中に雑音も多いし、松本のアンコール後にもまだ曲が続いているのに拍手を始めるバカが一人。しかも回りが誰も追従してこないのに、意地になったかのように拍手を続けていた。こういうバカは出禁にでもしないとホールのレベルが低下する危険性がある。

 後半は有名な「禿山の一夜」と「火の鳥」。なかなかに華麗にして派手な曲であるが、岡山フィルの金管陣は頑張ってはいるのだが、いささか音色が軽すぎてやや喧しい傾向がある。これがもう少しドッシリとした音色を出せるようになれば全体の印象ももっと変わるのであるが。禿山の一夜などは、どことなくまだまだ腰高な感がある。

 秋山は例によってオケにブイブイと自由にやらせている雰囲気。殊更に統制をかけるような様子は見られなかった。おかげでまあノリは良い演奏ではあるのだが、細部ではややばらけ気味に聞こえた部分も散見された。